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インタビュー

泌尿器科における腹腔鏡手術

泌尿器科における腹腔鏡手術
松田 公志 先生

関西医科大学附属病院 病院長、泌尿器科学講座 教授/評議員・理事

松田 公志 先生

この記事の最終更新は2016年03月18日です。

国内の泌尿器科領域における腹腔鏡手術のパイオニアとして走り続けてきた関西医科大学腎泌尿器外科学講座教授の松田公志先生。早くから腹腔鏡手術にこだわってきた思いと普及までのご苦労についてお話を伺いました。

日本で腹腔鏡による手術が導入されたのは1990年のことです。私は1990年2月、京都大学医学部附属病院で初めて腹腔鏡を使った精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう:精巣の静脈に腹部から血液が逆流して、瘤状にふくれる症状 ※参考記事:精索静脈瘤とはどんな病気?男性不妊症患者の約40%が精索静脈瘤という事実)の手術を行いました。1991年に関西医科大学に移ってきてからは腎臓・副腎の腹腔鏡手術を手がけました。その後2000年には前立腺の全摘術を行うようになり、泌尿器科分野におけるほとんどすべての手術が腹腔鏡を使って行えるようになりました。

1990年に精索静脈瘤手術を行った当時は、まだ手術のための練習道具が何もなく、教えてくれる人も誰もいませんでした。仕方なく段ボールに穴を開けて、そこから内視鏡と鉗子(かんし)を入れて練習をしたものです。1991年に手がけた腎臓の手術は精索静脈瘤の手術と違って大きな手術でしたのでかなり慎重になりました。

前例がほとんどない手術でしたので、常に開拓者のような気持ちで取り組んできました。そして症例を重ねるごとに良好な治療成績が出るようになり、さまざまな腹腔鏡手術が保険診療としても認められるようになっていきました。

腹腔鏡手術が広まる以前の手術は、どんな手術でもむしろ「大きく切ること」が当たり前でした。しかし腹腔鏡手術を知り、より小さな傷で同じ治療成績をあげられるなら、患者さんにとって体の負担が小さい手術の方が良いに違いないと思い、比較的技術が易しい手術から始め、徐々に難しい手術に挑んでいきました。

お腹を大きく切っていた頃は、退院しても仕事に復帰するまで2~3週間は休まざるを得ませんでしたが、腹腔鏡の小さな傷だと退院後、すぐに仕事に復帰できますし、1カ月以内でほぼ元通りの体調に戻ります。

腹腔鏡手術の導入当初は太い孔を何本もあけて手術を行っていたのですが、現在は「単孔式」といって小さい孔を1ヵ所だけあけて手術する方法が広がっています。例えば、腎臓と尿管の繋ぎ目が狭くなっているためその部分を切除してつなぎなおす、「腎盂(じんう)形成術」でも単孔式の手術が行われています。

腹腔鏡手術の教科書がない中では、どの位置に孔をあけて患部にアプローチすべきか、それぞれの外科医が最良と考える方法で腹腔鏡手術を行っていました。その後1996年ごろから、日本泌尿器内視鏡学会で一つひとつの術式について議論しながら、最も安全に効率よくできる手術方法を標準化し、教科書としてまとめました。

腹腔鏡手術では、これまでいくつか大きな事故が起きてきました。ですから、学会では私が中心になって「泌尿器腹腔鏡技術認定制度」を設け、一定の経験を積んだ外科医が提出した「実際に執刀した手術のビデオ」を見て審査し、技術を認定する制度を設けました。当初は「学会がそのような判断をするべきではない」との反対もありましたが、事故を防止するためにも、結果的に良かったと思っています。

このような制度を設けているのは世界中を探しても日本だけです。認定された医師の手術成績を調べてまとめたことがありますが、世界の名だたる医療施設のデータと遜色ない結果が出ました。むしろ合併症や輸血を強いられる率は低いことも明らかになっています。

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