院長インタビュー

医療と介護を基礎とする廿日市のまちづくりを支えるJA広島総合病院

医療と介護を基礎とする廿日市のまちづくりを支えるJA広島総合病院
藤本 吉範 先生

JA広島総合病院 病院長

藤本 吉範 先生

この記事の最終更新は2018年01月04日です。

JA広島総合病院は、高度で良質な医療を提供する広島県西部最大の基幹病院です。さらに広島県西部地域唯一の急性期病院として、24時間救急患者さんを受け入れています。「廿日市(はつかいち)メディカルタウン」の完成をめざし、2016年から広島県廿日市市や佐伯地区医師会などと協力して、医療と介護を基礎とするまちづくりを進めています。

 

サンフレッチェ広島や広島東洋カープのチームドクターでもあり、2002年日韓共催FIFAワールドカップではサッカー日本代表チームのメディカル・スーパーバイザーを務めた経験をお持ちであり、同院の病院長を務める藤本 吉範先生にお話を伺いました。

 

当院は、広島県にある厚生農業協同組合連合会の3つの病院のうちの1つです。廿日市市・大竹市及び広島市佐伯区の約28万人の地域住民のみなさまに、急性期医療を含む高度な医療を提供しています。

 

1945年8月6日、広島県に原爆が投下され、佐伯郡地御前村(現在の廿日市市)にあった海軍の旭兵器製作所に、広島市内で被爆した多くの方たちが重度の火傷を負いながら避難してきました。その被爆者の方々を救済する医療施設として設立した「農業会佐伯病院」が、当院のはじまりです。

1947年に開院した農業会佐伯病院は、4つの診療科と60床の病床、医師を含む職員は20名程度の小規模な病院でした。

 

現在では、25の診療科と病床数561床、医師135名及び看護職員660名を含む1,050名の職員が勤務する広島西二次保健医療圏最大の基幹病院となりました。廿日市市の地元企業のなかで4番目に多い職員数を誇り、地域を元気にする地元組織として地方創生の一端を担っています。

 

2010年までは、当院が位置する広島西二次保健医療圏には救命救急センターがなく、重症患者さんの多くが広島市内の救命救急センターに搬送されていました。しかし、搬送に時間がかかってしまうことから、地域のみなさまから切望されていた救命救急センターを、2011年に開設しました。

 

当院の救命救急センターでは、広島西二次保健医療圏における、心肺停止、重症脳血管障害、急性心筋梗塞及び心不全多発外傷などの三次救急医療も行っています。一次救急を担う廿日市市休日・夜間急患診療所と機能分担し、当院では人工呼吸や血液浄化(持続血液濾過透析など)を中心に24時間体制ならではの治療を行い、患者さんの救命に尽力しております。また、高度救急医療の拠点として、救急車とのホットラインを実施しています。

 

2016年の救急患者さんは約7,000名、救急車搬送台数は約3,600台を超えました。広島県内の医療機関では3番目に多い数です。

今後も永続的な救急医療を維持しつつ、より多くの患者さんを受け入れられるよう、病院をあげて努力してまいります。

当院の整形外科は、脊椎脊髄外科の手術を中心に診療を行っています。同科における手術件数は年間約1,700件であり、そのうちの約65%が脊椎の手術です。2016年において腰部脊柱管狭窄症の症例数が221例、骨粗しょう症性椎体骨折の症例数が143例という数字は、どちらも全国トップクラスです。脊椎脊髄疾患に対しては、脊椎脊髄病専門医が手術用顕微鏡を用いて、低侵襲で合併症の少ない安全な手術を行っています。

近年、骨粗しょう症による背骨の痛みを訴える、ご高齢の患者さんが非常に増えています。痛みが強くて生活できないと困っていらっしゃる患者さんに、当院では「経皮的後弯強制術」という手術を実施しています。背骨の骨折部をできる限り復元して骨セメントを注入する極めて低侵襲な手術方法です。この方法は即効性があり、長年痛みで苦しんでいた患者さんが、手術の翌日には改善がみられるほどです。

 

当院では、経皮的後弯矯正術(BKP)を施術できる医師を育てるためのBKPトレーニングを実施しています。全国からやってくる整形外科や脳神経外科の医師たちにBKPトレーニングを実施し、この手術を実施できる医療機関が全国的に増えていくことをめざしています。

ご高齢の方に多くみられる、「何をしていても腰が痛い」という症状は、日本だけではなく、世界的に増えています。痛みの原因はまだはっきりとわかっておりません。一般的な治療法としては、金属のボルトなどで曲がった骨を固定するという手術が実施されていますが、大掛かりな手術であるため、術後の感染症や合併症などリスクが高まります。


当院では、曲がってしまった腰椎にみられる骨髄浮腫が痛みの原因ではないかと考え、その骨髄浮腫を取り除く「PIPI」という手術法を開発しました。患者さんの椎間板が減って浮腫が起きているところに骨セメントを入れ、ずれている骨をきれいに整える方法です。7年間も腰の痛みに悩まされていた患者さんにPIPIを実施すると、術後2日目で痛みがほとんど取れ、腰を押さえることなく歩けるようになりました。

 

当院では、2004年からこの治療法を実施しており、2016年に世界的に有名な「Spine」という脊椎疾患を対象とする学術雑誌に治療の成果を発表しました。2017年9月にノルウェーの学会でも発表し、この治療法の有効性を世界的に広める取り組みをしております。
 

当院は、がん診療連携拠点病院として、年間約1,300名のがん患者さんの治療を行っています。まず、がんを正確に診断し、がん患者さんやご家族のみなさまが十分にご納得いただけるまでご説明し、そのうえで、完治をめざした最先端の治療方針から、生活の質(QOL)を重視した緩和ケアまで、境目なくご提供しています。

 

外来化学療法治療室では、がん患者さんがこれまでの生活をできるだけ維持しながら有効な治療が受けられるよう、専門スタッフが治療を行っています。放射線治療は、2001年より前立腺がんに対し、中国・四国地方ではじめて強度変調放射線治療、2009年より肺がん・肝臓がんに対し体幹部定位放射線治療を開始しています。

強度変調放射線治療及び体幹部定位放射線治療は、放射線を病巣部にのみ集中させ、周囲の正常組織に極力当たらないようにするピンポイント照射の治療法です。当院はできるだけ患者さんの体に優しい治療に力を入れています。

 

2009年より緩和ケア科を開設し、がん患者さんの身体的・精神的苦痛について、患者さんやご家族の希望に沿いながら、診察や相談に応じています。また、おしゃべりサロン、膵がん胆道がん教室など、患者さんやご家族を総合的に支える取り組みも積極的に実施しています。

 

このような高度で幅広い集学的治療の実践とともに、患者さんの生活の質(QOL)を最大限に考慮した治療を心がけています。

 

当院は、地元医師会である佐伯地区医師会、大竹市医師会、広島市佐伯区医師会の先生方との病診連携を行っています。医師会とのオープンカンファレンスや、開放型病床や看取り支援なども積極的に行っています。地域の医療機関からの紹介率は約85%、当院からの逆紹介率は約82%と高い数値を示しており、病診連携がしっかりできています。

 

現在、広島県が推し進める慢性心不全の再発予防・生活の質(QOL)の改善を目的とした「心臓いきいき推進事業」の基幹病院として、当院は慢性心不全の治療、疾患理解、リハビリテーション、及び携わるスタッフへの研修会を実施しています。

 

これからも、地域医療支援病院として、地元医師会の先生方との病診連携・病病連携をさらに充実させていきたいと思っています。

 

2014年に、廿日市市・広島厚生連と当院とのあいだで、「廿日市市地域医療拠点等整備に関する基本協定」を結びました。当院を中心として「医療と福祉を中心としたまちづくり」を行うプロジェクトです。

 

まず、当院の建物のうち、築50年を超える耐震性のない建物を建て替えて、病院機能の充実を図ります。次に、一次救急や健診センターを充実させ、保育所や老人居住施設との連携も考えています。具体的には、2018年内の着工をめざしています。廿日市市や佐伯地区医師会のみなさまと協力し、日本に誇れる廿日市メディカルタウンの創設をめざします。

当院は、患者さんを尊重し、患者さんを中心とした最善のチーム医療を行います。医師をはじめ、看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、臨床工学技士、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士、歯科衛生士、社会福祉士、事務職員など、これらすべての病院職員が職種を問わず、お互いに尊敬する気持ちで、患者さんを「自分自身のもっとも大切な人」と思い治療にあたっています。

 

「疾患をみるのではなく、疾患をもつ人をみる」、これを診療の基本姿勢とし、当院は、職員一同、患者さんやご家族に喜んでいただける、良質な医療を提供する病院であり続けるよう努力してまいります。

 

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