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アスベスト(石綿)の問題――​​引き起こされる病気とは?

アスベスト(石綿)の問題――​​引き起こされる病気とは?
上原 隆志 先生

横須賀市立うわまち病院  呼吸器内科部長心得

上原 隆志 先生

目次
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過去に日本中で建材製品などに使用されてきた“アスベスト(石綿)”は、吸入することで、命に関わる健康障害を引き起こす恐れがあります。すでに、日本では新規の使用が禁止されていますが、過去にアスベストを吸入したことにより、いまだに多くの方がアスベストによる健康障害に対して治療を受けています。

今回は、横須賀市立うわまち病院 呼吸器内科部長心得である上原 隆志先生に、アスベストによる問題についてお話を伺いました。

アスベストとは、天然の細長い鉱物繊維の総称のことで、全6種類*に分かれます。別名、石綿(せきめん/いしわた)とも呼ばれます。

アスベストは安価でありながら、断熱性や防音性、耐久性に優れるうえに、極めて細い糸状の繊維であることから加工しやすいという特徴があります。そのため、1970年代頃の高度経済成長期には、建材を中心にさまざまな場面で多用されるようになりました。しかし、アスベストを吸入することで、悪性中皮腫**肺がんといった病気が引き起こされる恐れがあることが知られるようになってから、日本ではアスベストの使用が制限されるようになりました。

*クリソタイル(白石綿)・クロシドライト(青石綿)・アモサイト(茶石綿)・アンソフィライト・トレモライト・アクチノライトの6種類がある

**悪性中皮腫:胸腔や心膜などの表面を覆っている中皮という膜様組織に生じるがん

アスベストへのばく()(さらされること)の機会は、アスベストを扱う仕事をされている方に多くありました。具体的には、アスベストの採取や処理による直接的なばく露や、造船業や溶接作業、電気配線工など、アスベスト製品を取り扱う作業による間接的なばく露です。

現在は、アスベストを新たに使用することは禁止されていますが、1955年~1975年ごろにかけて建設されたビルなどには高含有量のアスベストが吹き付けられています。そうしたアスベストが使用されている建設物内で作業を行うときには、ばく露する危険性があります。

以前、アスベストを使用した製品を製造していた工場の周辺住民に、悪性中皮腫や肺がんなどが多発していることがニュースで報道されたことがきっかけとなり、アスベストによる健康被害が広く注目されるようになりました。

それまでアスベストによる健康障害は、主に職業性のものと考えられており、アスベストによって健康障害を引き起こした方が頼みの綱とするのは、じん肺*や労災保険制度しかありませんでした。しかし、この出来事によってアスベストの健康障害が社会問題として捉えられるようになり、2006年にはより包括的な救済制度として、石綿健康被害救済法が制定されました。これは、アスベストによる病気に罹患された一般住民や一人親方など、労災保険等の対象にならない方々を救済する目的で作られた法律です。労働安全衛生、大気汚染防止、廃棄物処理など、より強固な健康管理の取り組みを充実させています。現在、アスベストの輸入・製造・使用は禁止されています。

*じん肺法:鉱物性粉塵を吸入することによって生じた塵肺およびこれと肺結核の合併した疾病に関し、適正な予防や健康管理、そのほか必要な措置を講じることにより、労働者の健康の保持や福祉の増進に寄与することを目的として制定された法律

アスベストは極めて小さな繊維からなっているため、口から吸入されると肺の奥にある細気管支(さいきかんし)にまで到達します。すると、マクロファージという細胞が、アスベストを異物として貪食(どんしょく)し、排除しようとしますが、排除しきれなかったアスベストが長期間肺にとどまると、炎症を引き起こすと考えられています。

ただし、アスベストが健康障害を引き起こす詳しいメカニズムは、明らかとなっていないことも多いのが現状です。

アスベストによって引き起こされる代表的な病気として、まず“悪性中皮腫”や“肺がん”が挙げられます(悪性中皮腫については、次ページで詳しく解説します)。また、肺が線維化する(硬くなること)“石綿肺”を引き起こすこともあります。

そのほか、胸膜*に炎症が起こることで胸腔**に水が溜まる“良性石綿胸水***”や、胸膜が線維化して肥厚する(厚くなること)“びまん性胸膜肥厚”を発症することもあります。

*胸膜:肺を包んでいる膜。臓側胸膜と壁側胸膜の二重構造になっている。

**胸腔:臓側胸膜と壁側胸膜の間の空間

***良性石綿胸水については「良性石綿胸水とは? アスベスト(石綿)によって胸水がたまる病気」を、びまん性胸膜肥厚については「アスベスト(石綿)を原因とする、びまん性胸膜肥厚の原因や症状とは?」の記事をご覧ください。

これらの病気は、アスベストを吸入後すぐに発症するわけではありません。病気によって異なりますが、初めてアスベストを吸入してから、数年から数十年後に発症するといわれています。長い場合だと、40〜50年後に発症するケースもあります。

当院では、アスベストに関わる健康障害を専門的に扱う外来を設置しています。当外来では、アスベストへのばく露歴があり、石綿健康管理手帳*の交付を受けている方を対象に、定期的な健康診断を実施しています。また、アスベストによってすでに何らかの病気を発症している方に対する治療も行っています。

現在、アスベストが新たに使用されることはありませんが、アスベストによる健康障害について不安に感じている方は、まだまだ多くいらっしゃると思います。当外来では、そのような方々の不安を払拭できるような診療を心がけています。

*石綿健康管理手帳:過去にアスベスト業務に従事していた離職者の健康管理を行うために、国から発行される手帳。

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