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先天性胆道拡張症のロボット支援腹腔鏡手術を安全に行うための取り組み――より多くの方が安心して治療を受けられる環境を目指す

先天性胆道拡張症のロボット支援腹腔鏡手術を安全に行うための取り組み――より多くの方が安心して治療を受けられる環境を目指す
内田 広夫 先生

名古屋大学大学院医学系研究科 小児外科学教授

内田 広夫 先生

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名古屋大学大学院医学系研究科 小児外科学では、先天性胆道拡張症などに対する腹腔鏡手術のOff the Job Training(実際の手術現場以外で行う教育訓練)を実施して、全国の小児外科医が小児内視鏡手術の技術を習得できるよう支援を行っています。同院教授の内田 広夫(うちだ ひろお)先生に若手小児外科医育成の詳細や、注目のトピックスについてお話いただきました。

先天性胆道拡張症の手術後にはさまざまな合併症が起こる可能性があります。術後早期に起こるものとしては縫合不全や膵炎(すいえん)が挙げられ、これらは手術後の入院中に起こることですので、比較的迅速に対応できます。また、術後しばらくたってから起こる晩期合併症には、胆管炎肝内結石胆管がん、膵内結石、膵炎、膵内遺残胆管がんなどが挙げられます。これらは、術後十数年以上経過してから起こることも珍しくありません。

ロボットは決して“魔法の道具”ではありません。使い慣れてこそロボットは力を発揮するので、手術をしっかりと行うためにはOff the jobでしっかりと腹腔鏡手術のトレーニングを積んだうえで、ロボットを使った術式に慣れる必要があるのです。

PIXTA
写真:PIXTA

術中は術者以外のスタッフの知識と連携も重要で、手術室にいる全員が術野の状況に注意を払う必要があります。術者はコンソールに入っていると術野全体が見えず、思わぬアクシデントが起こることもあるため、助手や周囲のスタッフが十分に注意する必要があるでしょう。特に患者さんが小さい子どもの場合、アームが腰の骨や大腿(だいたい)と接触することがあるため、よりいっそう注意しなければなりません。

ロボット操作の技術を持った医師がスムーズに手術を実施するため、当院では医療機器メーカーが実施する通常の認定試験はもちろん、大学独自の資格試験を行っています。さまざまな操作を時間内にこなすことを要求される試験を実施し、それに合格して初めて執刀できるというしくみになっており、医師は独自資格合格のために練習を積んでいます。

昨今、新生児の出生数が減少し小児人口は減ってきています。先天性胆道拡張症は生まれつきの病気のため、出生数が減少すれば患者さんの数も減り、経験できる手術数も限られてきます。一部の医師しか手術経験がないことから患者さんに不利益が生じないように、我々は手術の経験や情報を互いに共有し、多くの小児外科医に腹腔鏡手術の習得をしてもらいたいと考えています。

具体的な取り組みの1つとして当科では、全国の小児外科医を育成するために、シミュレーターを用いた『小児内視鏡手術 Off the Job Trainingセミナー』を実施しています。独自の生体質感モデルを用いたシミュレーターで実践的講習を受けることで、腹腔鏡手術手技の習得が目指せるのです。また、当科には小児外科領域のロボット手術のプロクター(指導者)が3人在籍しており、指導体制が整っています(2023年10月時点)。

今後も手術の実践経験が積める施設であるために、当院は腹腔鏡手術についていろいろな情報を発信し、患者さんたちに安心して治療を受けられる環境をつくるために努力していきます。患者さんにもいろいろな情報を収集していただき、治療に積極的に関わっていただければと思います。

先天性胆道拡張症に関連する悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の発生機序はこれまで明らかになっていなかったのですが、近年少しずつ解明され始めています。これが解明されると、より妥当な治療の探究や非拡張型に対する手術方針の再検討などといった治療法の進歩が期待できるでしょう。

先天性胆道拡張症手術とひとくちに言っても、成人患者と小児患者の手術では方針が異なる部分があります。実際に、膵臓の中の胆管をある程度残しても合併症リスクが少ない状態を保てるのかなど、明らかになっていない部分も残されています。そのため手術時間の短縮や患者さんの負担を考慮して、どのような手術の進め方が適切なのかをさらに追究しなければならないと考えています。

手術に用いるロボットにも新しい機種が登場しています。最近では1本のアームから3本の鉗子と1本のカメラが出てくる機械が登場し、そちらを使えばより術創を減らして手術を実施することができるようになると考えられています。新しいロボットが普及・導入されれば、手で操作する腹腔鏡とロボットとの完全ハイブリッド型手術などさらに治療の発展が望めるので、より安全性と確実性を追求できるロボットを取り入れることも重要になってくると考えています。

2023年10月現在では、日本小児外科学会認定 小児外科専門医もしくは日本消化器外科学会認定 消化器外科専門医の資格を有している医師しかロボット支援総胆管拡張症手術ができないように規制されています。一方で、この術式は腹腔鏡と比べてラーニングカーブが短く、より短期集中で技術を習得できることが知られています。そのため、いずれは若い先生も実施可能な手術になるでしょう。これからは多くの手術がロボット支援腹腔鏡手術に移行していくと予想されます。今のうちから多くの手術に参加し、機器の扱いに慣れながら練習をし、いつでも執刀できるように備えることが大切です。

先天性胆道拡張症の腹腔鏡手術、ロボット支援腹腔鏡手術をこれまで積極的に行ってきた施設として、我々は患者さんの力になりたいと思っています。また、当院に相談したら必ず手術を受けなければならなくなるということはありませんので、手術の適応なども含めてこの病気に関して気軽にご相談いただければと思います。

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  • 名古屋大学大学院医学系研究科 小児外科学教授

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