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ガンマナイフの適応疾患について――良性腫瘍や難治性の三叉神経痛の治療にも用いられる

ガンマナイフの適応疾患について――良性腫瘍や難治性の三叉神経痛の治療にも用いられる
叶 秀幸 先生

獨協医科大学病院 総合がん診療センター/脳神経外科 教授

叶 秀幸 先生

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ガンマナイフは転移性脳腫瘍(てんいせいのうしゅよう)をはじめとする悪性腫瘍の治療に用いられることが多いものの、良性腫瘍や薬が効かないような三叉神経痛の治療にも用いられ、QOL(生活の質)の維持・改善への効果が期待されています。今回は米国ピッツバーグ大学で長年にわたりガンマナイフの治療および臨床研究に従事され、現在は獨協医科大学病院 脳神経外科において教授を務められる叶 秀幸(かのう ひでゆき)先生にガンマナイフの適応疾患や各疾患に対するガンマナイフ治療の目的などについてお話を伺いました。

ガンマナイフの適応疾患は多岐にわたり、転移性脳腫瘍だけではなく、神経膠腫(しんけいこうしゅ)聴神経腫瘍三叉神経痛(さんさしんけいつう)脳動静脈奇形などの治療にも用いられます。ガンマナイフの適応となる主な病気の特徴について解説します。

もともと別の臓器で発生したがんの細胞が血流に乗って脳に到達することで発生する腫瘍です。転移性脳腫瘍が発生した場合、腫瘍によって脳が圧迫されたり、腫瘍周辺の組織が腫れたりするため、頭痛や麻痺、ふらつきなどの症状が現れます。転移性脳腫瘍の原発巣(最初に発生した病変)としては肺がん乳がんが多いとされていますが、多くの悪性腫瘍が脳へ転移する可能性があります。

神経膠腫(グリオーマ)は脳から発生する腫瘍で、悪性脳腫瘍に分類されます。脳に染み込むように腫瘍が広がるのが特徴です。転移性脳腫瘍と同様、脳が圧迫されたり腫れたりすることによって、頭痛や吐き気、ふらつきなどの症状が現れます。

聴覚をつかさどる神経の周囲に発生する良性の腫瘍です。主な症状としては聴力の低下や耳鳴りなどが挙げられます。また、腫瘍が大きくなり脳を圧迫するようになると、ふらつきなども生じます。良性腫瘍は細胞分裂のスピードが遅く、急激に大きくなることは少ないものの、中には成長の早い腫瘍もあるため注意が必要です。

三叉神経(顔の感覚を脳に伝える神経)が周囲の動脈によって圧迫されることで発症します。発作のないときは無症状ですが、ひとたび発作が起こると顔に激痛が走ります。特に血管が硬くなる動脈硬化が原因で発症することが多いとされています。

なお、三叉神経痛は特殊な検査をしないと分からない場合もあり、診断がつくまでに時間を要することが多々あります。

脳の血管が形成される際に毛細血管が作られず、動脈と静脈が直接つながってしまう生まれつきの病気です。動脈と静脈がつながった部分は血管の塊を形成し、少しずつ大きくなることもあります。脳動静脈奇形の血管は正常な血管よりも壁が薄く、破れる危険性を伴います。血管が破れた場合、脳出血くも膜下出血などを引き起こします。

PIXTA
写真:PIXTA

ガンマナイフの適応となる病気は多岐にわたりますが、病気によってガンマナイフを用いる目的は異なります。ここからは、各適応疾患におけるガンマナイフ治療の目的について詳しく解説します。

頭痛や麻痺、ふらつきなどの症状による患者さんのQOL(生活の質)の低下を改善するため、また脳のダメージによって生命の維持が危険にさらされるような状態を回避するためにガンマナイフ治療を実施します。3cm以下の小さい腫瘍の治療に用いられるほか、3cm以上の腫瘍であっても手術の前後に治療の補助として実施することもあります。

手術で摘出ができない部分に腫瘍が広がっている場合に、ガンマナイフ治療をはじめとする放射線治療が行われます。基本的にはガンマナイフ以外の放射線治療が用いられますが、腫瘍が再発した場合や脳の深部に腫瘍がある場合はガンマナイフ治療を検討します。

脳の圧迫が進行することを阻止するため、腫瘍の縮小あるいは成長を止める目的で行われます。腫瘍が脳を圧迫しているような場合は基本的に手術がすすめられ、ガンマナイフは腫瘍の大きさが3cm以下の場合や全身状態が理由で手術ができない場合に用いられます。小さい腫瘍の場合、ガンマナイフ治療・経過観察のどちらを提案するかは脳神経外科を専門とする医師であっても判断が難しく、経過観察となることも多々あります。

一方で、近年の研究では、治療をする年齢が高くなればなるほど聴力を温存できる確率が低くなり、反対に若いうちにガンマナイフ治療をすることで聴力を温存できる可能性が示唆されています。これからさらに研究が進めば、今後は圧迫が起こっていなくても早い段階でガンマナイフ治療を行うことが積極的に考えられるようになるかもしれません。

圧迫が生じている神経に放射線(ガンマ線)を照射することで、痛みが伝わらないようにします。基本的に薬物治療が第一選択とされていますが、薬が効かない場合や手術をすることがリスクとなる場合はガンマナイフを用いて治療を行います。圧迫の原因となる血管に対する治療ではないため再発する可能性があるものの、手術と比べて体への負担を減らした治療が可能です。

なお、難治性の三叉神経痛に対するガンマナイフ治療は2015年に保険適用となりましたが、まだ医師の間でも広く知られていない面があります。「薬を飲んでいるのに改善しない」という場合は、一度ガンマナイフ治療を行っている病院への受診をおすすめします。

血管の破裂や出血を抑える目的で実施されます。手術やカテーテルを用いた血管内治療、あるいはその両方を組み合わせて治療が行われてきましたが、病巣が小さい場合や手術摘出が困難と判断される場合はガンマナイフ治療が選択されます。手術が非常に困難とされる大きな脳動静脈奇形においても、近年血管奇形の一部をガンマナイフで治療し、約3か月後に残った部分に対してガンマナイフで治療をすることにより、治療可能となる例が出てくるようになりました。

治療する病気を問わず、基本的に2泊3日の入院になります。また、ガンマナイフは保険が適用される治療です(てんかんパーキンソン病など機能性疾患を除く)。腫瘍の大きさなどで金額が変わることはなく、3割負担の場合の自己負担額は約20万円です。

日本では1990年に初めてガンマナイフが導入され、現在では研究が進んだことにより適応疾患も徐々に拡大しています。一方で、その適応が臨床現場で広く知られていないケースもあります。ご自身の病気が適応になるかどうか知りたい方、あるいは治療選択に迷われる方は、日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医に一度ご相談ください。

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