えんしょうせいちょうしっかん

炎症性腸疾患

同義語
IBD
最終更新日:
2020年11月11日
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2020/11/11
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概要

炎症性腸疾患とは、腸の粘膜に炎症を引き起こす病気の総称です。ただし、感染性胃腸炎などの病気は含まず、一般的には潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)クローン病のことを意味します。

いずれの病気もはっきりとした発症メカニズムは解明されていません。しかし、発症すると腸の粘膜に強い炎症が生じることで下痢、腹痛、血便などの症状が現れ、重症な場合には発熱や倦怠感、体重減少などの全身症状を引き起こします。また腸だけでなく、関節や目、口、皮膚などにも症状を引き起こすことがあります。

炎症性腸疾患は、このようなさまざまな症状がよくなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です。腸の粘膜の炎症を繰り返すことで腸の内部が狭くなったり、がんが発生したりするケースもあるとされています。

原因

炎症性腸疾患の明確な発症メカニズムは現時点では解明されていません(2020年11月時点)。

しかしながら、炎症性腸疾患のうち、潰瘍性大腸炎は免疫機能の異常や食生活の乱れが原因であるとも考えられており、遺伝との関連も指摘されています。また、クローン病は腸内に流れ込んだ飲食物の成分や腸内細菌などによって免疫のはたらきが過剰になること、何らかの感染症、腸に血液を送る細かい血管の異常などさまざまな説が挙げられていますが、潰瘍性大腸炎と同じく遺伝との関連が指摘されています。

症状

炎症性腸疾患は、下痢、腹痛、血便などの腸に関連する症状と、関節炎皮疹(ひしん)結膜炎口内炎など腸には関連しない症状を引き起こしますが、種類や重症度によって症状の現れ方は大きく異なります。

潰瘍性大腸炎は主に大腸のみに炎症が生じる病気ですが、クローン病は大腸だけでなく口から肛門(こうもん)まで消化管のどの部位にも炎症を引き起こす可能性があります。症状は発症する部位によっても異なりますが、クローン病では約半数がろうを合併するとされています。

いずれも軽症なケースでは長引く下痢や腹痛のみしか症状が現れないことがありますが、重症なケースでは、発熱や倦怠感などの全身症状のほか、頻回な下痢による体重減少や低栄養などが見られることも少なくありません。また、腸の炎症が繰り返されることで腸の内部が狭くなったり、がんを引き起こしたりすることもあります。

炎症性腸疾患の大きな特徴は、これらのさまざまな症状がよくなったり悪くなったりを繰り返すことです。つまり、発症すると一度は治療で回復しても再発する可能性が高いのです。

検査・診断

炎症性腸疾患が疑われるときは次のような検査が行われます。

血液検査

体内の炎症や貧血の程度を評価するために血液検査が行われます。また、大腸がんなどとの鑑別の手がかりとして、“CEA”などの腫瘍(しゅよう)マーカー(がんになると体内で多く産生されるようになる物質)の数値を調べることも少なくありません。

画像検査

炎症性腸疾患が疑われる症状がある場合は、消化管内のほかの病気と鑑別するためにX線検査(レントゲン検査)、CT、MRIなどによる画像検査が行われるのが一般的です。

内視鏡検査

炎症性腸疾患は大腸などの消化管の粘膜に炎症や潰瘍などの病変を引き起こすため、疑われる場合は大腸内視鏡検査を用いて内部の粘膜の状態を詳しく調べる検査が行われます。しかし、大腸内視鏡検査では小腸や十二指腸などを観察することができないため、大腸に病変がない場合はカプセル内視鏡で全ての消化管の状態を調べる検査が行われることもあります。

注腸造影検査

近年では炎症性腸疾患が疑われる場合は内視鏡検査が行われますが、狭窄(きょうさく)(内部が狭くなること)を含めた小腸・大腸の全体像を調べるために造影検査を行うことがあります。小腸造影検査では、経口的に造影剤を投与する方法と、造影チューブを十二指腸に留置し造影剤を注入しながら観察する2つの方法があります。注腸造影検査では肛門から造影剤を注入しながら観察を行います。

治療

炎症性腸疾患には基本的に薬物療法が行われます。使用する薬剤は病気の種類や重症度などによって異なり、過剰な免疫のはたらきを抑制するステロイドや免疫抑制剤、消化管の炎症を抑える5-アミノサリチル酸製剤などが挙げられます。近年では、炎症に関わる分子を直接標的とした生物学的製剤や炎症のシグナル(伝達)を抑える低分子化合物なども使用されるようになってきました。

また、薬物療法で十分な効果がない場合は、血液中からはたらきの強い白血球を除去して免疫のはたらきを抑制する“血球成分除去療法”が行われます。さらに消化管の狭窄を起こしたり、炎症が粘膜の深層にまで達して消化管に穴が開いたりした場合は手術によってそれらの病変を切除する治療が行われます。また、外科手術回避を目的とした、クローン病の消化管狭窄病変に対する内視鏡的拡張術が行われています。

一方、炎症性腸疾患は、症状が強い期間は消化管の安静を図る必要があるため、食事を取ることができないケースがあります。このような場合には、点滴や経腸栄養(鼻などから腸まで管を通し、そこから流動食などを投入する治療)による栄養管理が必要です。

予防

炎症性腸疾患は明確な発症メカニズムが解明されていないため、確立した予防法はないのが現状です。しかし、炎症性腸疾患は食の欧米化などによる食生活の変化、腸内細菌の異常などが関与しているとの説もあります。そのため、発症を予防するにはバランスのよい規則正しい食生活を送ることが大切です。

また、炎症性腸疾患はストレスによって症状が悪化しやすくなることが分かっています。日ごろから十分な休息や睡眠を確保し、できるだけストレスをためない生活を心がけましょう。

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