血清抗p53抗体は腫瘍マーカーのひとつです。腫瘍マーカーとは、がんの存在を示す目印になるもので、がんの種類によって用いられる腫瘍マーカーが異なります。
血清抗p53抗体はさまざまながんを検出しますが、なかでも食道がんや大腸がん、乳がんの診断に用いられ、がんの治療効果の判定や術後の経過判定にも使用されています。
腫瘍マーカーにはさまざまな種類が存在し、その多くはがん細胞が作り出す物質を指標としていますが、これらはがん細胞がある程度大きくならないと検出できません。また、がん以外の病気でも陽性になることが多くあります。
その一方、血清抗p53抗体はがんの発生を抑制している遺伝子に対する抗体を測定するもので、がんの発生から比較的早期の段階で血液中に抗p53抗体が現れることより、ほかの腫瘍マーカーでは検出できない早期のがんも検出できる場合があります。ほかの病気で陽性になることも少ないため、がんの早期診断において有用性が認められています。
しかし、数値が高いからといって確実にがんの存在を示すわけではありません。がんの診断や治療評価の補助であることを理解し、血清抗p53抗体の数値のみで判断することのないようにしましょう。
血清抗p53抗体は、主に食道がんや大腸がん、乳がんが疑われる場合に測定されることがあります。また、人間ドックのオプション検査項目に含まれている場合もあります。
ただし、血清抗p53抗体などの腫瘍マーカーだけでがんの診断を下すことはできません。診断を確定するためには画像検査や生検などの精密検査が必要です。
また、がんの治療を受けている方に対して治療効果を評価する目的や、術後の経過観察目的などでも血清抗p53抗体が測定されることがあります。
検査前に注意すべきことは特にありません。
血清抗p53抗体は、採取した血液を用いて測定します。採血は主に腕の静脈から行いますが、袖周りのきつい服装の場合は採血の妨げになる可能性があるほか、採血後に血液が漏れやすくなってしまいます。そのため、検査当時は半袖や袖周りにゆとりのある服装がよいでしょう。
健康診断などで行う一般的な血液検査の採血と同様、スムーズにすすめば数分程度で終わります。針を刺すときにチクっとした痛みを感じる場合がありますが、痛みも一般的な血液検査と同程度と考えてよいでしょう。
血清抗p53抗体の基準値は、1.30U/mL以下が一般的です。この数値よりも高い場合、食道がんや大腸がん、乳がんなどが存在する可能性が示唆されます。
ただし、検査方法や検査機関によって基準値が異なる場合があるため、結果については医師に直接確認するようにしましょう。
血清抗p53抗体が高値を示した場合は何らかのがんが疑われ、詳しく調べるために精密検査が行われることが一般的です。精密検査の内容はがんの種類によって異なりますが、画像検査と生検(病理検査)が中心となります。
画像検査においては、食道がんや大腸がんが疑われる場合は内視鏡検査、乳がんが疑われる場合はマンモグラフィや超音波検査がよく行われ、必要に応じてCTやMRIなどが実施される場合もあります。
血清抗p53抗体は、がんの治療を行っている方に対して治療効果を評価するために測定されることもある検査項目です。しかし、血清抗p53抗体だけで治療効果を評価することはできません。ほかの腫瘍マーカーや画像検査など、さまざまな検査結果をもとに総合的に判断されるため、治療中に測定した血清抗p53抗体の数値が高くても、経過が良好と判断される場合もあります。この場合においては現行の治療が継続され、特別な対処がなされないことも考えられます。
血清抗p53抗体は、がんの初期診断に有用な腫瘍マーカーですが、これだけでがんの有無やその種類を特定することはできません。診断を確定するには精密検査を行う必要があるため、医師から精密検査をすすめられた場合には忘れずに受けるようにしましょう。精密検査の結果、がんの存在が否定された場合でも、定期的にがん検診を受けることが大切です。
がんの治療を受けている方においても、血清抗p53抗体の数値の上下だけで病状を判断することはせず、医師からの説明をよく聞き、よく相談したうえで継続的に必要な検査や治療を受けるようにしましょう。
本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。