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卵管通気検査とは、空気や炭酸ガスを用いて卵管が通っているかを調べる検査です。卵管とは子宮の左右両側にある長さ10cm程度の管で、ここで精子と卵子が出会い受精卵となって細胞分裂しながら子宮内に移動し、子宮内膜に着床することで妊娠が成立します。しかし、卵管が詰まっている場合(閉塞)や一部細くなっている場合(狭窄)には、精子と卵子がうまく出会えないため妊娠しにくくなることがあります。
卵管の閉塞・狭窄は、子宮内膜症や虫垂炎、骨盤腹膜炎、性感染症(クラミジアなど)などにともなう炎症による卵管の癒着が原因のひとつとされています。しかし、このような病気を発症していても明らかな自覚症状をともなうとは限りません。病気に気づかないうちに自然治癒することもあり、結果として卵管の閉塞・狭窄が知らないうちに起こっていることもあります。
この検査では、子宮口からバルーンカテーテルやカニューレといった細い管を子宮内に挿入します。その細い管を通して空気または炭酸ガスを注入し、卵管から腹腔内に流れる空気・ガスの音を聴診器で聴いたり、装置を用いて数値化したりすることで、卵管が通っているかを確認します。卵管の疎通性を調べる検査は、ほかにも卵管通水検査や卵管造影検査などがありますが、これらの中で卵管通気検査は簡易的なもので、詰まりの程度や場所、左右差など詳細は分かりません。しかし、体への負担が少なく、短時間で行えるなどのメリットがあります。一方、子宮内に挿入したバルーンカテーテルやカニューレから生理食塩水を注入するのが卵管通水検査です。また、同様にX線透視下で造影剤を流して行うのが卵管造影検査であり、造影剤を使うことで左右の卵管の通過性を具体的に確認することが出来ます。
不妊症の方で卵管の閉塞・狭窄が疑われる場合に卵管通気検査や卵管通水検査、卵管造影検査が行われます。また、検査することで卵管の詰まりがとれて妊娠がしやすくなるという説が一部にあります。そのため治療目的として行われることもあります。また、この検査だけで病名がはっきり決まるという性質のものではありません。
検査前の食事や運動など生活に影響される検査ではありませんので、特に注意すべきことはありません。
上記の場合は検査が受けられません。
また、検査日が生理中の場合は経血が腹腔内に逆流する恐れがあるので、生理日も検査ができません。通常、月経終了後の数日間の排卵前の時期に行います。
下着を脱いで検査を行います。そのためパンツスタイルではなく、スカートやワンピースなどを着用しておくと検査がスムーズです。また、検査にともなって微量の出血が起こる場合があるので、生理用ナプキンを持参しましょう。
検査は比較的短時間で終了します。検査に伴って腹部やみぞおちに痛みがともなうこともあり、痛みの感じ方には個人差がありますが、特に卵管が詰まっていると強い痛みを感じる場合が多いようです。肩に痛みが生じることもあります。医療機関によっては痛み止めや麻酔で痛みを軽減する方法をとることがあるので、検査時の痛みが不安な場合には事前に担当する医師に確認してみるのがよいでしょう。出血がみられる場合もありますが、これも一時的なもので、数日中に止まることがほとんどです。
卵管通気検査では、卵管から腹腔内に流れる空気・炭酸ガスの音を医師が聴診器で聴いたり、装置を用いて数値やグラフとして記録したりします。
グラフは通気曲線(キモグラフ)と呼ばれ、描写される波形に応じて正常型、痙縮型、癒着型、狭窄型、閉鎖型の5つに分類されます。たとえば狭窄型に該当する波形であれば、卵管が狭くなっているということが分かります。詳細な結果については検査後に医師から説明がなされるので、よく聞いておきましょう。
卵管通気検査で卵管の詰まりが確認されても、左右どちらが詰まっているかなど詳しく診断することはできません。そのため詳細を調べたほうがよいと判断された場合、もしくは結果が不明瞭な場合には、卵管造影検査など追加の検査が行われることがあります。不妊症の原因が他にある可能性がある場合には、画像診断などの検査が行われることも考えられます。
検査の結果から卵管の狭窄・閉塞が確認された場合には、卵管鏡下卵管形成術などの手術が検討されます。卵管鏡下卵管形成術は、カメラを内蔵したカテーテルを腟から挿入し、卵管の内部を観察しながらバルーン(風船)を膨らませて卵管の詰まりを広げる手術です。このような手術によって自然妊娠を目指す以外にも、特に両方の卵管が完全に閉塞している例では体外受精という選択肢もあります。
卵管通気検査を行った後は、追加の検査が実施されたり、検査による治療効果を期待して経過観察が行われたりします。追加の検査は後日行う場合もあり、経過観察においても確認のために再受診が必要となるので、忘れずに受診するようにしましょう。
検査の結果によっては手術や体外受精などが検討されますが、どのように妊娠を目指していくかは患者さんの状態だけでなく、患者さん・ご家族の希望を考慮して決定します。選択肢については医師からしっかりと説明を受け、ご家族とよく相談したうえで適した選択をすることが大切です。
本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。