尿pH(ピーエイチ)は、尿中に含まれる水素イオン濃度のことで、尿が酸性かアルカリ性か、そしてそれがどの程度なのかを示します。検査結果には基準値が設けられ、基準値よりも低い場合を酸性、基準値よりも高い場合をアルカリ性としています。
尿pHは、食事などで一時的にどちらかに傾くことがあります。しかし、継続的に傾いている場合には、酸性で糖尿病や高尿酸血症、痛風、アルカリ性で膀胱炎といった尿路感染症などの病気が疑われます。
私たちが日常的に食べている食品には、酸性食品とアルカリ性食品があります。酸性食品は肉類・魚類・卵・砂糖・穀類など、アルカリ性食品は野菜・果物・海藻・きのこ・大豆などです。酸やアルカリが体の中に入ると肺や腎臓でバランスを保ち、たとえば酸が多いと酸を減らすようはたらきます。このはたらきを酸塩基平衡といいます。通常、腎臓でつくられた尿は弱酸性ですが、何らかの異常によって酸塩基平衡が崩れると、尿が酸性またはアルカリ性に傾いてしまうのです。
尿pHを測定することで酸塩基平衡の状態を調べることができ、上で挙げた病気の早期発見に役立ちます。ただし、病気以外でも発熱や脱水、過呼吸、激しい運動、酸性・アルカリ性食品の過剰摂取、薬などによって一時的に変動する場合もあるため、陽性だからといって必ずしも病気とは限りません。
腎臓や膀胱といった尿に関わる部位の異常が疑われる場合に、尿検査によって尿pHが測定されます。また、一般的には人間ドックの項目にも含まれています。
ただし、尿pHだけをみて原因を特定したり、病気の有無を調べたりすることはできません。また、診断時だけでなく、尿pHに関連する病気の治療中に経過をみる目的で測ることも多くあります。
尿pHの値は、食事や運動などの生活習慣、薬によって影響を受けます。しかし、医師はこれらを考慮しながら値をみるため、検査前に特に制限すべきことはありません。ただし、服用中の薬があれば、その旨を伝えるようにしましょう。
また、尿検査では尿pH以外にもさまざまな項目が測定されることが一般的です。項目によってはビタミン剤やビタミンCを含む風邪薬、ドリンク剤などが測定値に影響を及ぼします。検査前の飲食は原則として自由ですが、これらのものを摂取しないように気をつけましょう。
尿検査で使用する尿は自分で採取しますが、尿は出始めと終わりを省く途中の尿(中間尿)のみを採取する必要があります。
採尿方法を間違えると再検査となる可能性があるため、特に指示がなければ尿の出始めと終わりは捨て、途中の尿のみを採取するようにしましょう。
また、検査前にトイレに行ってしまうと検査に必要な量を採取できない場合がありますので注意しましょう。
尿を専用の採尿カップや容器に入れて提出するだけです。したがって、時間はかからず痛みも伴いません。
尿pHの基準値は5.0~7.5が一般的です。この範囲内なら正常、下回る場合は酸性尿、上回る場合はアルカリ尿となります。ただし、測定方法や検査機関によって基準値が異なる場合があります。
尿pHのみで病態を予測することはできません。また、測定値は食事など、さまざまな要因によって変動します。したがって、基準値の範囲外にある場合には再検査、または精密検査が行われることが一般的です。
多くの場合、尿検査と血液検査が同時に実施されるため、再検査の場合も両方実施することになります。精密検査では、丸1日分の尿を採取して詳しく調べる蓄尿検査や、超音波検査などの画像検査に進むことが多く、血液検査や尿検査の結果、症状などをもとに決定されます。
また、すでに病名が分かっている人では、その病気の治療中に経過観察を目的として尿pHが測定されることもあります。診断時には再検査や精密検査といった追加の対応が行われますが、治療中に尿pHの数値が範囲外であっても、以前のデータと比べて改善傾向にあるような場合には、追加の対応が行われないこともあります。
尿pHが範囲外にある場合、何らかの病気を発症している可能性も考えられます。医師から再検査・精密検査をすすめられた場合には、忘れずに受けるようにしましょう。再検査・精密検査の結果によっては治療が検討され、異常がみつからなくても、食生活をはじめ生活習慣の改善がすすめられることがあります。
酸性・アルカリ尿が続くと結石を起こしやすくなるため、治療を受ける場合だけでなく、生活習慣の改善がすすめられた場合も医師の指示通りに行動しましょう。
なお、一般的に酸性尿は色が濃く、アルカリ尿は色が淡くなります。また、体の異常によって尿量・排尿回数の増減、泡立ち、濁りなど、尿はさまざまに変化します。尿の変化をみることで体の異常を察知できる場合が多いので、自分自身でチェックを行う習慣を持つことも大切です。
本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。