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シスタチンCは早期の腎機能障害のマーカー(目印)として用いられます。血液中に含まれるタンパク質の一種で、体内の酵素のはたらきによって引き起こされる細胞や組織のダメージを抑制する作用を持ちます。
シスタチンCは体内のあらゆる細胞で生成されますが、腎臓に流れ着くとほぼ全てのシスタチンCは分解されて尿と共に体外へ排出されます。このため、腎機能の低下が生じるとシスタチンCの分解・排泄が正常に行われなくなり、血液中のシスタチンC濃度は上昇します。
この性質を利用し、シスタチンCは腎不全や糸球体腎炎、腎硬化症などの腎機能低下を引き起こす病気の鑑別診断やフォローアップ、スクリーニングを目的に測定される検査項目のひとつとなっています。また、ほかにも腎臓への血流量が減少する循環不全などでも高値になることがあります。
腎機能を示す指標としては、尿素窒素や血清クレアチニンなどさまざまな検査項目があります。
しかし、シスタチンC値は筋肉量や年齢に影響を受けずに正確に腎機能の状態を示すことが可能であるため、新たに腎機能を調べる検査として2005年に保険適応が認められました。
シスタチンCは上で述べたような腎機能低下を引き起こす病気が疑われる際に行われる検査です。むくみや尿量の減少など腎機能低下が疑われる症状がある場合に検査を行うのが一般的です。
また、血清クレアチニン値など一般的な健康診断で行われる腎機能を評価するための検査項目で異常が見られた際に、年齢や筋肉量などの影響を考慮しなくてよいシスタチンCを調べることで、実際の腎機能の状態を評価することも少なくありません。
さらに、シスタチンCの血中濃度は腎機能の状態が悪化するほど上昇するため、腎機能低下を引き起こす病気の治療効果判定や病状の経過観察を行う目的で定期的に検査されることもあります。
シスタチンCは血液検査によって測定されます。検査結果は検査前の食事や運動などの影響を受けないため、検査にあたって特に注意すべきことはありません。
しかし、検査では採血を行いますので、検査当日は前腕部が露出しやすく、腕の締め付けが少ない服装を選ぶようにしましょう。
シスタチンCは単独で調べられることは少なく、ほとんどは腎機能を示すほかの血液検査や尿検査と共に行います。
尿検査を行う場合には、採尿する必要がありますので検査直前はトイレに行くのを控えましょう。
シスタチンC値を測定するには、血液採取を行う必要があります。
しかし、一般的な静脈血採血と同様の手法で行われますので、検査自体は採血さえ滞りなく終了すれば止血時間も含めて5分程度で終えることができます。
また、採血時には若干の痛みが伴いますが、多くは自制内かつ一瞬の痛みであり、検査後まで痛みが続くことはないため過度な心配は必要ありません。
シスタチンCの基準値は、男性:0.63~0.95 女性:0.56~0.87(mg/L)です。
ただし、基準値の範囲は検査を実施した医療機関や医師の見解によって異なることがあります。
また、病気の有無を推測するにはシスタチンC値の検査結果のみではなく、臨床的な症状やほかの検査結果も含めて判断する必要があるため、必ず担当医に判断を委ねるようにしましょう。
シスタチンC値の異常は、腎機能の低下を示唆します。
しかし、その検査結果のみで病気を特定することはできないため、精密検査が必要です。目立った自覚症状がない場合でも必ず医師の指示通りに精密検査を受け、早期治療につなげましょう。
精密検査の内容は、一般的には腎機能をより厳密に調べるための血液検査・尿検査、腎臓の形態や、病変の有無を確認するための腹部超音波検査、CT、MRI検査、腎臓の組織を採取して顕微鏡で観察することで病気を確定する腎生検などが必要に応じて行われます。
また、治療効果や病状の評価のために定期的に検査を行っているケースでは、前回の検査値よりも明らかな異常が見られた場合、治療方法の変更や治療の開始・再開などを検討する必要があります。
シスタチンC値の異常が見られた場合には、専門の医師の指示通り適切な検査を受けて病気を確定させ、治療を進めていくことが大切です。
また、腎機能の低下を引き起こしている場合には、その重症度によって食事や運動など日常生活に制限がある場合もありますので、治療と共に生活上の注意点を遵守するようにしましょう。
そして、治療中であってもむくみや倦怠感など腎機能の悪化が疑われるような症状が現れた場合には、できるだけ早く病院を受診して検査・治療を受けることも大切です。
本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。