心臓ドックとは、動脈硬化などの血管の異常や虚血性心疾患が起こるリスクを調べる検査です。虚血性心疾患とは、狭心症、心筋梗塞(しんきんこうそく)などの心臓病をまとめて呼んだものです。

虚血性心疾患は、動脈硬化などが原因で、心臓の周りを通っている冠動脈が狭くなったり、詰まったりして起こります。突然死の恐れもある病気です。

  • 動脈硬化が心配な人
  • 心臓病の家族歴がある人
  • 高血圧・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病がある人
  • 過度なアルコール摂取をしている人
  • ときどき動悸・息切れ・胸痛がある人
  • 肥満気味の人
  • 喫煙している人
  • ストレスの多い生活をしている人

心臓ドックで行われる主な検査は、以下のとおりです。検査では、主に動脈硬化が進んでいないか、狭心症や不整脈はないか、心臓が弱っていないかなどを調べます。

心臓ドックにかかる時間は検査の内容によって異なりますが、3時間から4時間程度が目安です。費用も30,000円程度から80,000円以上と医療機関ごとに異なります。

負荷心電図検査

階段を昇り降りしたり、ベルトの上を歩くトレッドミルテストを行ったりして、心臓に負担を与えてから心電図を記録します。運動時における狭心症や不整脈を診断します。

脈波測定検査

仰向けになり、両腕・両足首の血圧を同時に測定します。血管の硬さ、詰まり具合を調べ、動脈硬化の有無や程度を調べます。

心臓超音波検査

体の左側を下に横になり、胸に探触子を当てて検査します。心臓の形状(大きさ・形)、動き、弁膜の状態、血液の流れを観察し、心臓肥大や先天性の異常、心筋梗塞、弁膜症などの有無と心臓のポンプ機能を評価します。

頸動脈超音波検査

仰向けの状態で首に探触子を当て、頸動脈(けいどうみゃく)の厚さや詰まり具合を調べます。動脈硬化の診断と程度が分かります。

心臓MRI検査

磁石でできた筒型の装置に入り、電波を使って心臓の構造や動き、冠動脈の狭窄(きょうさく)や弁を通る血液の異常の有無を調べます。狭心症や心筋梗塞、急性心筋炎などの診断が可能です。

心臓(冠動脈)CT検査

MRIと同じく筒型の装置に入り、X線を使って体の断面を撮影します。冠動脈に沿って曲がった断面や輪切り状の断面の画像を見ることもでき、冠動脈の詰まりの程度がしっかり確認できることが特徴です。

血液検査

血中の“脳性(B型 )ナトリウム利尿ペプチド(BNP)”というホルモンの量を調べます。BNPは心臓に負担がかかると、増加するといわれています。そのため、心不全などの診断に有効です。

動脈硬化の予防のためにはコレステロールを下げることも重要なため、コレステロール数値(特にLDLコレステロール)を調べることも大切です。

妊娠中および妊娠の可能性がある人は、心臓ドックを受けることができないことがあります。

心臓MRI検査では、強力な磁石を用いるため、ペースメーカーや人工関節などの金属が体内に入っている人は検査を受けることができない場合があります。また、心臓MRI検査では造影剤を投与することもあります。過去に造影剤で副作用のあった人や喘息(ぜんそく)を持つ患者さん、造影剤アレルギーがある人は注意が必要なため、事前に医師に申告してください。

心臓(冠動脈)CTではほぼ必ず造影剤を使うため、特に造影剤にアレルギーがある人は受けられない場合があります。

検査内容によっては、検査前日・当日の朝から飲食ができないことがあります。

検査時は備え付けの検査着に着替える場合が多いですが、MRI検査の際は金属の付いた下着などは着用を避けるようにしましょう。また、金属製の小物やアクセサリー類を持ち込まないように注意しましょう。

また、アイシャドウやマスカラ、縁取りや濃い着色のあるコンタクトレンズにも金属成分が含まれる場合があるため、当日は濃いメイクやカラーコンタクトの使用は控えましょう。

心臓ドックの結果は、後日文書で通知されるのが一般的です。また、医療機関によっては、検査当日に医師から一部の検査結果に対して説明を受ける場合もあります。

各検査の結果の見方は、以下のとおりです。

負荷心電図検査

心電図に現れる変化をグラフの形に記録して、狭心症や不整脈がないか結果を見ます。狭心症の場合は、STという心電図の波形が正常の場合と比べて異常がないかを確認します。

脈波測定検査

ABI(足関節上腕血圧比)と呼ばれる血管の詰まり具合を示す数値と、CAVI(心臓足首血管指数)と呼ばれる血管の硬さを示す数値から動脈硬化の進行具合が分かります。ABIは1.00≦ABI≦1.29が正常範囲であり、CAVIはCAVI<8.0が正常範囲です。

心臓超音波検査

検査画像を見て、心臓のサイズが大きくなっていたり、心臓の形がボールのように丸くなっていたりする場合は、心臓が弱っている可能性があるとされます。

頸動脈超音波検査

IMT(内膜中膜複合体肥厚度)と呼ばれる頸動脈の内膜と中膜の厚さを示した数値で動脈硬化の進行具合が分かります。IMTはIMT≦1.0mmが正常範囲です。

心臓MRI検査

検査画像を見て、心臓や弁の状態を評価することで、狭心症や心筋梗塞の心配がないか判断します。

心臓(冠動脈)CT検査

冠動脈の狭窄の程度が分かります。特に無症状の狭心症などの発見に有効です。

血液検査

血液の中にあるBNPの量が18.4pg/mL以下であれば、正常範囲とされています。その検査の結果、BNP量が18.4pg/mL以上だった場合も、およそBNP≦40pg/mL以下であれば、すぐに治療が必要となる心不全の可能性は低いとされています。

LDLコレステロールの基準値は140mg/dL以下です。ただし、糖尿病や家族性コレステロール血症を持っているなど、リスクが高い患者さんでは、検査結果が100~120mg/dL程度でも数値を70mg/dL以下まで下げることを目指す場合があります。また、動脈硬化を進行させないようにはたらくHDLコレステロールの同時測定も大切です。

心臓ドックの結果、動脈硬化の傾向がみられた場合は、狭心症や心筋梗塞につながらないよう生活習慣の改善が必要です。禁煙、食事内容の改善、適正体重の維持に努める必要があります。さらに、LDLコレステロール値を下げるスタチンなどの薬が処方されることもあります。

すでに狭心症や心筋梗塞が疑われる場合は、心臓カテーテル検査を行います。心臓に管を入れて、心臓の機能や血管の状態を詳しく調べます。

心臓ドックで異常がなかった場合でも、医師から今後の生活習慣について指導があった場合は従いましょう。

会社や地方自治体で行われている健康診断を受診して、動脈硬化が進んでいないか定期的に確認するように心がけましょう。

本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。