インタビュー

子どもが頭をぶつけたときチェックするべきポイントは?症状と注意点

子どもが頭をぶつけたときチェックするべきポイントは?症状と注意点
橋本 祐至 先生

うさぴょんこどもクリニック 院長、千葉市立海浜病院 小児科 非常勤医師

橋本 祐至 先生

この記事の最終更新は2017年10月29日です。

子どもは、バランス感覚が未発達なため転びやすく、頭部外傷をきたしやすい点に注意が必要とされています。子どもの軽い頭部外傷による受診は非常に多く、救急の現場でも需要があるといいます。

本記事では、千葉市立海浜病院小児科部長の橋本祐至先生に、子どもの頭部外傷の症状と注意点について詳しくお話を伺いました。

  • 幼児期以下の子どもは転びやすく、頭部の外傷を起こしやすい
  • 子どもは年齢によってはうまく説明できない場合、症状をうまく伝えられない場合がある
  • 意識状態が悪い、一過性でも意識消失やけいれんを起こした、顔色が悪い、嘔吐する、ぐったりとしてすぐに寝てしまうなどの症状があれば受診を

頭部外傷とは、交通事故、転落、転倒、虐待などで頭に外から力が加わることによって頭の皮膚、頭蓋骨、脳を損傷することです。年齢によって症状や注意点が大きく変わることはありません。

乳児の場合は、目を離したときに頭をぶつけることがあり、保護者がそのときの様子を確認できていないことがあります。しかし、軽症の頭部外傷では、検査や治療がいらない場合がほとんどです。状況にもよりますが、全例において病院を受診する必要はなく、自宅でしっかり子どもの様子や頭部の所見をみて、本当に受診するべきかをチェックし、対処しましょう。

まず子どもが頭をぶつけたときに、どのような状況で頭をぶつけたか、転落の場合はどの程度の高さであったかなどを知る必要があります。ぶつけたときにすぐに泣いたかどうか、それともしばらくボーッとして意識がない時間があったかどうかという情報も判断をするために大切です。

心配ですぐに病院に連れていきたくなる保護者の気持ちは十分わかりますが、1〜2時間様子をみてみないと症状が出てこないことがあります。元気であればしばらく自宅で様子をみて、普段と違うようであれば病院を受診するようにしてください。

普段と違う症状とは、意識状態が悪い場合、一過性でも意識消失やけいれんを起こした場合、顔色が悪い、嘔吐する、ぐったりとしてすぐに寝てしまうなどです。

「たんこぶ」とは、頭皮と頭蓋骨の間に生じた皮下出血による腫れです。

頭をぶつけたことで破綻した皮下の毛細血管は、冷やすと血管収縮が起こり、出血しにくくなります。また、冷やすことで痛みを感じにくくなるため、痛みを和らげることができます。

患部は、お風呂やシャワーに入って、ぬるめのお湯で洗って大丈夫です。しかし、頭をぶつけてから6時間程度経過してからにしましょう。

スポーツや事故などで、頭をぶつけて起こった1回目の脳振盪後、脳機能が十分回復していない状態で、何となく大丈夫そうだからとまた動いて2回目の頭部外傷をきたしてしまうと、例え2回目の衝撃が軽いものであったとしても、はるかに重篤な状態になることがあります。これをセカンドインパクト症候群といいます。

程度にもよりますが、1度頭部外傷をきたした後、1週間以内に、試合や体育などで運動をしなければならないことがある場合、本人がやるといっても大事をとって休ませることも必要です。子どもに限ったことではありませんが、セカンドインパクト症候群には注意が必要です。

乳児では、頭のてっぺんに骨がないひし形の部分があります。これを大泉門(だいせんもん)といい、1歳半ごろまでに徐々に閉じていきます。閉じるまでは触ると容易にわかります。大泉門が開いている間は、大泉門の盛り上がりの有無は脳圧を反映する1つの情報となります。正常な状態では、横になったとき、泣いたとき、力んだときに圧が高くなり、少し盛り上がることがあります。起きているときは少しへこんでいるのが正常です。

頭部外傷後に脳のなかに異常があると、脳圧が高くなります。脳圧が高い場合は子どもを抱っこしていても大泉門が盛り上がり、触ると少し固く感じます。このような場合は、子どもを病院へ連れて行ってください。

普段から、ときどき子どもの大泉門を触ってみて通常の状態を知っておくとよいでしょう。

乳児では、クーハンの持ち手が切れた、チャイルドシートに乗り降りするときに誤って落とした、抱っこひもで胸に抱っこした状態で親が転倒、父親の抱っこ不慣れ、などが多いです。

幼児になると、子どもを自転車の補助席に乗せた状態でバランスを崩して倒れる、補助席に乗せたまま自転車を立てておき少し目を離した際に倒れる、自転車や遊具(キックボード、スケートボード、ジェイボードなど)使用中の転倒、遊具の不適切な使用方法による転倒(ヘルメット未着用含む)、ふざけていて転倒・転落、などがあります。遊具で遊ぶときはヘルメットをしっかり着用させましょう。

子どもは頭部外傷を起こしても、年齢によっては自分で受傷機転(いつ、どこで、どのように負傷したのか)をうまく説明できなかったり、症状をうまく伝えられなかったりします。

また、幼児期以下の子どもは大人に比べて体に占める頭の比率が大きいため、重心が上にありバランス感覚が未発達です。そのため転びやすく、頭部の外傷を起こしやすい時期といえます。

同じ頭部外傷でも、大人の場合は出血が硬膜(脳脊髄を包んでいる硬い膜) の外に起こり(硬膜外出血)、年齢が幼い子どもは硬膜の内側に出血が起こることが多いです(硬膜下出血)。2歳までは圧倒的に硬膜下出血が多くみられます。

特に7歳未満の子どもは頭蓋骨と直下の硬膜の癒着が強く、その隙間に出血が起こりにくいため、急性硬膜外出血が起きにくく、急性硬膜下出血のほうが多くなります。また、1歳までは先に頭蓋骨が大きく成長し、なかの脳は頭蓋骨よりも遅れて成長します。そのため1歳未満の子どもの頭蓋内には、脳が揺れるくらいのスペースがあります。頭部外傷時に脳が揺れると、脳の表面から脳内に入る血管が損傷し、硬膜下に出血が起こるとされています。ですから1歳までは特に硬膜下出血の方が起こりやすいのです。

残念ながら乳幼児における急性硬膜下出血の原因は、虐待が最も多いとされています。親に虐待されても訴えることができない年齢の子どももいるので、子どもたちが言えないことを私たち医療従事者が読み取らなければなりません。画像検査で硬膜下出血を確認した場合は、常に虐待ではないかということを念頭に置いて、頭部だけにとらわれず、傷やアザなどがないか全身の診察を普段から心掛けています。

くも膜下 イラスト

2~3歳以下の子どもは頭蓋骨と直下の硬膜の癒着が強いため、頭蓋骨骨折と同時に直下の硬膜も同時に裂傷を伴うことがあります。この場合、裂傷した部位から髄液(クモ膜の内側であるクモ膜下腔にある液体成分)を含んだクモ膜や脳の一部が頭蓋骨の外側に脱出してしまいます。この脱出した部位の骨折縁に限局的に頭蓋内圧の拍動が作用し、骨の2次的な栄養障害を起こして、骨折縁の破壊が促進され、時間とともに骨折縁は外方に飜転し骨折幅が拡大してしまいます。これを進行性頭蓋骨骨折(growing skull fracture)といいます。この病態を認めた時は、二次的な脳損傷が進行している状態と考えなければいけません。乳幼児に多い病態です。

子どもは頭蓋骨が柔らかいため、大人に起こるような陥没骨折(頭蓋骨が連続性を保たず内側に陥没した骨折)は起きにくく、頭蓋骨が連続性を保ったままの陥凹骨折(ピンポンボール型骨折:骨が屈曲し、ピンポン球を潰したような状態)が多いとされています。また、頭蓋骨がまだ柔らかいために、頭蓋骨骨折がはっきりしなくても、その下の内部に出血や損傷を起こすことがあります。

子どもの頭部外傷において骨折や出血を認めた際に、家庭背景が複雑な場合や、両親から聴取する受傷機転と外傷の程度が食い違う場合は、頭部以外の部位の外傷や骨折を疑う必要があります。

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