概要
アカントアメーバ角膜炎とは、アカントアメーバと呼ばれる原虫に感染することで発症する角膜感染症です。アカントアメーバは、池や川、水道水などの中に広く生息しています。アカントアメーバ角膜炎を発症すると、非常に強い目の痛みが生じ、視力低下から最悪の場合は失明に至ることもあります。
アカントアメーバ角膜炎は、ソフトコンタクトレンズの扱い方が悪いことを原因として発症することがほとんどです。使い捨てのものを数日間使用する、専用の洗浄液を使用せずに水道水で洗う、などの行為を続けると、コンタクトレンズがアカントアメーバに汚染されます。汚染されたコンタクトレンズを装着することでアカントアメーバが角膜へと移り、角膜炎が発症します。治療では、角膜を削り取ることで物理的に病原体を取り除くことになります。治療による後遺症も無視できるものではないため、有効な治療方法として確立しているとはいい難いです。そのため予防が大切であり、コンタクトレンズの適切な使用方法を守ることが大切です。
原因
アカントアメーバは水の中に生息する原虫であり、川や池、水道数の中に広く生息しています。これは衛生環境の整った日本でも例外ではありません。アカントアメーバ角膜炎の発症には、ほとんどの場合、ソフトコンタクトレンズの不適切使用が関連しています。ソフトコンタクトレンズには、使用日数が限られているもののもありますし、洗浄に際しても専用の洗浄液を使用することが指定されているものもあります。
これらを守らずに不適切な方法で使用すると、水道水などの環境中に広く生息するアカントアメーバがソフトコンタクトレンズに付着することになります。コンタクトレンズは目に直接的に装着する医療器具であるため、レンズが病原体で汚染されていると物理的に角膜へと病原体が移り込むことになってしまいます。その結果、アカントアメーバ角膜炎が発症します。
角膜は光を眼球内に取り入れるために重要な器官であり、透明性が保たれていることが重要です。しかし、アカントアメーバ角膜炎を発症すると病原体が入り込むことで角膜に傷が入ります。また、角膜の平滑さが失われることで光の屈折が損なわれ、さまざまな視覚障害を引き起こすことになります。
症状
アカントアメーバ角膜炎に感染しても、しばらくは自覚症状が現れません。そのため多くの患者さんは病状が進行してから来院されます。自覚症状としては、まず眼にゴロゴロとした異物感を感じ、続いて強い眼痛が現れるようになります。その後、結膜充血(白目の充血)が起こり、感染した場所によっては視力低下も現れます。視力低下は、特に瞳孔領の付近に病変が進行したときに生じやすくなります。
アカントアメーバ角膜炎の症状は激烈になることもあります。なかには、角膜潰瘍から角膜穿孔(穴があく)に至り、眼球摘出をせざるを得ない状況になることもあります。
検査・診断
アカントアメーバ角膜炎では、細隙灯顕微鏡検査による角膜評価が必須です。しかしながら、細隙灯顕微鏡検査でわかるのは、「角膜に傷がついている」という所まででありそれがアカントアメーバによるものであると確定できるわけではありません。
角膜に感染症を引き起こすものは、アカントアメーバ以外にもヘルペスや細菌、真菌などさまざまであり、原因の鑑別を行うために検体を用いて病原体を直接的に分離する検査が必要になります。しかし、分離検査には煩雑な手順を踏む必要があり、実際には診断がつく前から治療方針を決定することが求められます。
その際に重要となるのが、コンタクトレンズの使用状況の確認です。アカントアメーバ角膜炎は、コンタクトレンズの不適切使用が原因となることがほとんどであるため、詳細な問診を行うことが診断の助けとなります。
治療
アカントアメーバに対して効果のある治療薬は存在しません。そのため、アカントアメーバを取り除くために、物理的に角膜を削ります。しかしこの治療法では、角膜に対しての影響もあり、角膜混濁や乱視などの視力障害を残すことが多いです。
近年ではネット販売などを通して気軽にコンタクトレンズを購入することができ、定期的な眼科受診を受けていない方も多いことが予想されています。コンタクトレンズの正しい使用方法を守りながら、角膜障害が生じていないかどうか確認するために定期的に眼科を受診することが重要です。
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