原因
人が有鉤条虫の虫卵を摂取すると、小腸内において孵化し、幼虫である嚢虫が小腸から血流に乗って体内にばらまかれます。ばらまかれた先が皮下や筋肉であればしこりができるだけですが、運悪く脳や眼であった場合、神経症状や失明などを伴う嚢虫症を引き起こします。この場合、嚢虫はやがて死んでしまい、有鉤条虫は成虫になりません。
嚢虫は、たどりついた臓器の組織の中では、さまざまな方法で免疫から逃れることが知られています。しかし、やがて免疫によって嚢虫が攻撃されると周囲に炎症が起き、このときに症状がでることが多いとされます。嚢虫が死ぬと、石灰化した肉芽腫として残るか、吸収されて消えてしまいます。
人の体内で有鉤条虫が成虫になるのは、汚染された豚肉を充分に加熱せずに食べることで感染した場合です。豚の筋肉内の嚢虫が人の小腸で成虫になると成虫は年単位で生存し、長いと最長7mにもなることもあります。このとき豚肉の嚢虫では人は嚢虫症をきたしません。
体節の1つに5~10万の虫卵が含まれ、体節がちぎれると便と一緒に排泄されます。体外で体節が壊れ、虫卵がばらかまれて、虫卵で汚染された水、食べ物などを摂取することで、人や豚に感染します。自分で排泄した有鉤条虫の体節の虫卵から再び感染することを自家感染といいます。このとき同居者などにも感染するリスクがあり、虫卵を摂取すると嚢虫症になることがあります。
宗教上、豚肉を一切、食べない方が嚢虫症を発症した報告があり、流行地域出身の使用人が成虫に寄生していて、排泄された虫卵に料理が汚染されて感染したと考えられています。嚢虫症は、虫卵からの感染で起き、豚肉の嚢虫からは直接には生じません。
豚が虫卵を摂取した場合、小腸で幼虫となって嚢虫が血流に乗って、豚の筋肉に嚢虫症をきたします。この豚肉を人が充分に加熱しないで食べると、小腸で成虫になって、虫卵を含む体節を排泄するようになります。
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