高校生のとき、将来は人と関わる仕事をしたいと思い、医学部に入りました。
医師としてどんなことをしたいのか明確にイメージしていたわけではありませんが、いろいろな悩みを抱える中高校生の相談に乗るような仕事ができたらいいかな、と漠然と考えていた記憶があります。
大学の学生実習で、先輩医師がみな楽しそうに入院中の子どもたちと関わっている姿を見て、ここならハードな仕事でも頑張れると思い、小児科医の道を選びました。医師になって最初の十数年は、千葉県内の医療機関で子どもの身体疾患の診療にあたり、医師としてのやりがいも多く、充実した毎日でした。
子どもの心の成長や育児そのものに興味を持つようになったのは、自分が親になったことがきっかけです。子どもを育てている親の心情というのは、決してポジティブなものばかりではなく、我が子に対してネガティブな思いも湧き出してくることを、親の立場になって実感しました。乳幼児の育児の大変さを痛感したことで、親御さんへのまなざしが変化したように感じます。子どもが病気になることは、もちろん家族にとって大変なことですが、それと同様にときにはそれ以上に、日々続く子育てのなかでの親の不安や悩み、葛藤は大きなものであり、それを支援することは小児科医として大切なことと感じるようになっていきました。
生活の場所が千葉から東京に移り勤務した病院で、今の上司である
発達障害診療や子どもの心の診療、育児支援を始めると、最初の数年は自分が何をしているのか、本当に役に立っているのか、意味があることなのかと、暗中模索な時期が続きました。一般的な小児の身体疾患は、1週間もあればよくなっているのか悪くなっているのか一目瞭然ですが、子どもの育ち、心の成長というものは、短期間に変化が見えるわけはありません。治療の効果判定がすぐにはできないのです。身体疾患の診療とはまったく違った時間の流れやまなざしが必要だと気づくまでに数年かかりました。
子ども一人ひとりと波長を合わせ、話に耳を傾け、時間を積み重ねていくと、小中学生の言動に共感したり、驚いたり、感心したり、はっとさせられたり、私自身にさまざまな感情が湧き上がってきます。そして、その子がふと一つの山を越え、成長したなと感じるときがあります。この瞬間が、医師としてなんとも嬉しく診療のエネルギーとなります。多くの子どもたちの成長を身近に実感させてもらえることは、とてもありがたいことです。
子どもは成長し自立していく過程で、自分のよいところと悪いところ、得意なことと苦手なこと、強さと弱さをそれぞれ認識しながら、自分らしさを確立していきます。自分のプラスの面をしっかり認識して自己肯定感が安定していることで、マイナス面をポジティブに受け止めることが可能となり、マイナス面で失敗しないような対処法を考えることができるようになります。自分の強みと弱みをバランスよく認識し、自己肯定感を健やかに育んでいくことをサポートしていきたいと思います。
子どもが健康に育つには、まずは親御さんの心が安定していること、自信を持って子育てしていくことが大切です。「自分の育て方は間違っているのではないか」「うちの子はうまく育っていないのではないか」と思いながらの子育ては、親にとってとてもつらいものです。そして、その不安や心配は子どもに伝わります。
もちろん、どのような親も子育て中に不安や心配がつきものですが、心のどこかで「うちの子は大丈夫」「親としての自分は大丈夫」といった子どもや自分自身への信頼を持てるかどうかです。子どもが悩みやつらさを抱え、生活に支障をきたしているときは、子どもを支える家族にとっても危機的状況です。そういったとき、親も混乱し、本来持っている親としての力、“親力”が発揮できなくなることがあります。そういったときに、そのご家庭それぞれの子育て力、親力を取り戻し、子どもが安心して悩んだり試行錯誤したりできる家庭環境を維持できるよう、協力していきたいと思っています。
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