時流を読んで、患者さんにとっての幸せな生活を叶えるのが使命

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時流を読んで、患者さんにとっての幸せな生活を叶えるのが使命

透析クリニックの運営を通して在宅医療のあるべき姿を模索し続ける、柴垣 圭吾先生のストーリー

医療法人社団明洋会 柴垣医院 理事長 柴垣医院戸越・柴垣医院自由が丘・柴垣医院久が原
柴垣 圭吾 先生

医師として、患者として、両者の思いを教えてくれた父の存在

私の父・柴垣(しばがき ) 昌功(まさかつ)は、腎臓内科医でした。透析の歴史を勉強した人なら知っているであろう、透析の開発に寄与したDr.スクリブナー、Dr.コルフという先生方に師事しています。そんな父が透析クリニックである柴垣医院を自由が丘で開業したのは、1975年のことになります。以来、その一施設を本当に真面目に運営してきました。息子の私が言うのもなんですが、真面目を絵に描いたような医師なのです。そんな後ろ姿を見てきたので、私自身が医師になるという点にはまったく迷いがありませんでした。

私がまだ研修医の頃「なんで親父は二施設目を出さないの?」と聞いたことがあります。すると父は「一施設でも患者さんをきちんと診ていくのが大変なのに、そんなことは考えられない。それよりもお前は、しっかり勉強しろ」と。とにかく一生懸命に、真摯に患者さんと向き合っていたのだろうなと思います。その後、私自身も腎臓内科医を選択し、透析の道に進んでいますから、父の影響というのは大きいですね。

その父を、2017年に胃がんおよび老衰で見送っています。父が入退院を繰り返していた頃、飲むことができない、食べられないために、脱水症状に陥ったことがありました。私が「入院しよう」と伝えると、父は泣いて嫌がったのです。「家にいたい」と。私は同じく医師である弟と共に「あなた、自分も医者なんだから分かるでしょう。この状態なら入院するしかない」と説得しました。すると「お前らには患者の気持ちが分からない」と言って、さめざめと泣くのです。そのときに、医師であっても、こんなに入院が嫌なのだなと痛感しました。同時に、これまで私が見てきた入院透析が必要になった患者さんも、本当につらいお気持ちだったのだろうなと、本当の意味で理解しました。そして、入院を嫌がる透析患者さんを最期までご自宅でサポートできる体制を作りたい、そう思わせてくれました。父は最後までその後ろ姿で、私に多くのことを教えてくれたのだなと尊敬しています。

弟の柴垣 有吾(しばがき ゆうご)(聖マリアンナ医科大学 腎臓内科 主任教授)も腎臓内科の道に進んでいますから、弟と私でこれからも尽力し、腎臓病の患者さんを診ていきたいですね。

人工透析の患者さんを診続けて、気づいたこと

父の跡を受け継いで2003年に柴垣医院の院長になりました。それまでも腎臓病の患者さんを多く診てきましたが、透析クリニックである柴垣医院では、それまでとは違う光景を目にすることになります。通院で透析を受けていたものの、加齢などの事情によって通院が難しくなり、入院下での透析治療に切り替えるという光景です。この場合、透析治療の性質上、退院は困難になります。つまり、最期まで入院を余儀なくされるということです。透析をしている患者さんは、その不安を常に抱えていて「自分はこれからどうなってしまうのだろう」と思っておられる。そんな姿を見るにつけ、入院以外の選択肢はないものなのかと考えていました。

その過程の中で見送ることとなった父の存在が、よりこの思いを強くしました。在宅医療で慢性腎不全を診ていく方法を構築するなら、私がやりたいと。

腹膜透析との出会い

2013年に腹膜透析を始めようと、鷲田 直輝(わしだ なおき)()先生(現・国際医療福祉大学医学部 腎臓内科主任教授)に来ていただきました。腹膜透析を始めたのは、腎臓内科としてバリエーションを増やそうというのが理由です。私自身も今ほど腹膜透析に知見がなかったので、その当時、腹膜透析を多くやっていらっしゃった鷲田先生にお声がけしたのです。しかし、実際に腹膜透析をやってみると、いろいろな気づきがありました。入院透析をせずに患者さんを診ていくのならば、在宅医療は必須なのではないか、その点において、腹膜透析が果たせることは多いのではないかと思ったのです。

また、2015年頃に石橋(いしばし) 由孝(  よしたか)先生(現・日本赤十字社医療センター 腎臓内科部長)にお声がけいただき、日本赤十字社医療センターの臨床カンファレンスに通うようになりました。以来、週に一回通い続けているこのカンファレンスで、在宅医療における腹膜透析の必要性を教えてくださったのが石橋先生です。

このような流れがありましたから、私にとって鷲田先生と石橋先生は恩師といえます。お二方のおかげで、在宅医療における腹膜透析診療というシステムを作ることができた。これらの出会いがなかったら、今の柴垣医院の方向性とは大きく異なっていたでしょう。本当に感謝していますし、今後も多くの刺激をいただきたいと思っています。

患者さんだけではなく、全方向に目を向けるということ

私は医師ではありますが、院長でもあります。そのため、クリニックとして全ての関係者の方たちのニーズに応えるという視点を大切にしています。患者さんが家にいたいと思われるなら、家にいられるようにしましょうというニーズは、その最たるところですね。

でも、関係者は患者さんだけではありません。大学病院や総合病院で腹膜透析を行う場合は、在宅でのサポートが必要になる。病院完結の医療ではなくて、地域で連携して医療にあたる。その地域での対応を担うこと、それも我々ができることのひとつだと思っています。

さらに、当院で働いてくれる先生やスタッフの労働環境を含めたニーズにも応えたい。先生やスタッフがいなければ、そもそも在宅医療は実現できませんから。

患者さん、病院、スタッフ、その関係者のニーズがどこにあるかということを考えて、その全方向を見るというのを常に心がけています。

時流の変化に、臨機応変に対応していきたい

“時流”という言葉があります。読んで字のごとく、時の流れです。私がとくに意識しているのは、時流を私なりに冷静に分析し、その時流に逆らわないということ。ですからこれはあくまでも私見ですが、腎臓内科における“時流”は、高齢化によるパラダイムシフトだと思っています。パラダイムシフトとは、今までの価値観や常識が変化していくということです。つまり、今までは入院透析で対応していた患者さんを、在宅医療で診ていくようになるというのが時流だと考えています。その一環として、地域包括ケアの構築に、透析クリニックとして参加したいですね。

そして、キュア(治す)からケア(癒す)へ至るまでをトータルで診ていく。「最期まで自宅で過ごしたい」という患者さんの思いに寄り添い、実現できるような体制を作る。それをダッシュで行いたいと思っています。在宅医療×透析クリニックの道筋を、少しでも早く作りあげていくことに、これからも挑んでいきます。

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  • 医療法人社団明洋会 柴垣医院 理事長 柴垣医院戸越・柴垣医院自由が丘・柴垣医院久が原

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    柴垣 圭吾 先生の所属医療機関

    柴垣医院戸越

      • 内科
      • 人工透析内科
    • 東京都品川区平塚1丁目7-6 2F
    • 都営浅草線「戸越駅」 A3出口すぐ 東急池上線「戸越銀座駅」 徒歩3分
    • 03-3787-0610

    柴垣医院自由が丘

      • 内科
      • 人工透析内科
    • 東京都目黒区自由が丘1丁目13-4 シャイン自由が丘ビル2F
    • 東急東横線「自由が丘駅」 北口 徒歩1分 東急大井町線「自由が丘駅」 東口 徒歩1分
    • 03-3724-0066

    柴垣医院久が原

      • 内科
      • 人工透析内科
    • 東京都大田区西嶺町15-10 ガーデンビル1F・2F
    • 東急池上線「久が原駅」 徒歩5分
    • 03-5732-2121

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