“困っている人のために何ができるか”を考え、実行することが医師の使命

DOCTOR’S
STORIES

“困っている人のために何ができるか”を考え、実行することが医師の使命

地域医療に貢献し、患者さんと職員のために奔走する亀山 周二先生のストーリー

東京医療保健大学 学長
亀山 周二 先生

“人様のお役に立てる人間になりなさい”という祖父の思い

10歳の頃、祖父が胃がんにより67歳で他界しました。亡くなる直前の病床で、「人様のお役に立てる人間になりなさい」という内容の話を言い渡されたことを覚えています。今思えば、あの瞬間に初めて医療を意識したのかもしれません。運命というと大げさですが、そのような遠い昔の出来事がきっかけとなり、なるべくして医師になったという心持ちです。

病気やけがで困っている人のために最大限何ができるかを考える

東京大学泌尿器科の医局時代にはたくさんの方々にお世話になりました。特に阿曽 佳郎(あそ よしお)教授(東京大学名誉教授)は私の恩師であり、偉大な存在です。阿曽先生は、当時はまだスタンダードでなく難しい手技が必要な開創手術や内視鏡治療などに先進的に取り組まれており、大いに刺激を受けました。そのような日々を通じて、目の前の病気を治すべく困難に打ち勝つ姿勢や、患者さんへの接し方、現状にとどまらず革新を続けることの大切さを学んだのです。

泌尿器科に進み、医師として実際に多くの患者さんの診療にあたる中で、自分たちが行う治療の結果が患者さんの生活・人生までをも一変させてしまう可能性があることを実感しました。当然ながら治療可能なケースと難しいケースが存在しますが、医師という仕事には常に大きな責任が伴うことを、身をもって痛感したのです。それと同時に、医師にとって大切なことは、病気やけがで困っている人のために最大限役に立つにはどうしたらよいかを考え、実行することなのだと確信しました。

NTT東日本関東病院 病院長としての思い

NTT東日本関東病院の泌尿器科に部長として就任したのは1999年、44歳のときです。それからレジデント(初期研修医)の研修管理委員会 委員長として、教育や新しい研修医制度のプログラム策定などに携わり、2000年からは当院の地域医療担当医として地区医師会との連携体制強化にも力を注ぎました。2013年に副院長になり、院長の役を仰せつかったのは2014年です。

病院の管理者として、運営・企画・人事・総務、施設面の管理はもちろんのこと、医療安全、院内感染対策、患者さんからのご意見・ご要望への対応など、さまざまな業務に携わってきました。院長という立場は、当然ながら楽な仕事ではありません。ポジティブな報告ばかりではないですし、すぐには調整不能に思える事態もしばしば起こります。それでも皆さんが協力してくださるおかげで、大変な場面を乗り越えることができています。

人は、時間と場所を選んで病気になったりけがをしたりするわけではありません。私たちは医療者として、病気やけがで困っている人たちの求めに応えるという役目があります。その積み重ねが、地域の方々の安全と安心を守ることにつながるのです。最前線で闘うスタッフ、管理職のスタッフなど、それぞれ役割はあります。しかしその根底は同じなのです。“困っている人のために最大限役に立つにはどうしたらよいか”という思いを持って行動すること、それを忘れてはならないと思います。

病院の質向上への取り組みが結果的に患者さんや病院を守ることにつながる

地域医療の中核を担う病院としてがん診療に力を入れるなかで、2018年には“がんゲノム医療連携病院”に、2019年には“地域がん診療連携拠点病院(高度型)”に指定されました。また、病院のクオリティーコントロールを目的として、国際基準に基づくJCI(国際医療機能評価)やISO15189(臨床検査室の評価)の認定を受けました。

2019年4月には感染症内科を新設し、院内感染対策に努める体制を再構築しました。結果として、2020年1月に新型コロナの問題が浮上した際、感染症内科の医師たちが司令塔となり院内の感染防止策などをいち早く整えることができました。新型コロナの流行を予見していたわけではないのですが、病院の質向上への取り組みが患者さんや病院を守ることにつながった1つの例だと思います。

患者さんだけでなく職員の満足度向上にも尽力する

亀山先生

私の院長としてのポリシーは、トップダウンで物事を決めるのではなく、職員の自立性・自発性を尊重することです。病院をよりよくするため、患者さんのために何をしたらよいのかという共通の目標を持ったうえで、それぞれの視点から積極的に意見を出していただき、それをできるだけ実現したいと考えています。また、悪いところを見つけるよりもよいところを伸ばしたいですね。

患者さんの満足度はもちろん、職員の満足度を向上させることも非常に重要と考えています。「この病院で働きたい」と思う人が多ければ、その分よい人材が集まる可能性がありますし、職員の満足度が高ければ病院の全体的な雰囲気もよくなるでしょう。このような視点で院内の体制づくりに腐心してきました。その1つが、医療職の働き方改革を念頭においた新たな勤務体制のスキーム構築や、医師をはじめとした職員への取材記事を通じた広報活動です。職員の協力による地道な努力が実を結び、現在、職員募集の際には多くの応募が寄せられています。このような成果を感じるとき、院長としての喜びはひとしおです。

忙しい日々の合間に一息つく瞬間

日々いろいろなことがありますが、休暇には時代小説を読みます。作家の佐伯 泰英(さえき やすひで)さんや今村 翔吾(いまむら しょうご)さんが描く江戸時代の剣豪や庶民、火消などの昔の世界にのめり込み、没頭できる時間は、私にとって大切なものです。旅行も好きで以前は毎年夏に家族で海外へ出掛けていましたが、院長に就任してからは病院では何が起こるか分からないので、長期で不在にすることはなくなりました。いつかは世界一周などもしてみたいですね。あと、93歳の母が四国で一人暮らしをしているので、時間ができたら半分は四国で暮らすのもよいなと思っています。高松まで母の介護に出掛けてうどんを食べる、そんなぜいたくな日々を思い描いています。

これからの展望——変わりゆく社会を見据えて

新型コロナウイルスは世界中で猛威を振るい、日本においては今にも第2波を迎えようとしています。東京では連日多くの新規感染者数が報告されています。ワクチンや治療薬の実用化にはまだまだ時間がかかるでしょうし、今秋〜冬にかけてさらに毒性の強い新型コロナウイルスがまん延する可能性もあります。

新型コロナの影響によって、医療だけでなく社会全体が大きく変わろうとしています。このような中で私たちはいかにして病院運営を継続していくか、引き続き質の高い医療を提供できるのかという課題に直面しているのです。仮に新型コロナが収束したとしても、そう遠くない将来に異なる感染症が流行したり大規模災害が起こったりする可能性はあります。ですから今は、そのような事態が起こったとき即座に対応できる施設整備、マニュアル作成などを進める準備期間とも捉えられます。変わらず根底にあるのは、病気やけがで困っている人のために最大限何ができるかを考え、実行すること。その基本を忘れずに、地域医療の中核を担う病院としての使命を全うするべく、あらゆる手だてを講じて進んでいこうと思います。

 

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  • 東京医療保健大学 学長

    1981年より泌尿器科医師としてキャリアをはじめる。東京大学泌尿器科医局の関連施設や東京大学医学部附属病院で勤務ののち、1999年にNTT東日本関東病院 泌尿器科部...

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