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ステージ4の胃がんでも手術は可能?腹腔内化学療法など最新の治療事情
記事1「リンパ節郭清と新しい胃がんの手術-内視鏡的切除・腹腔鏡下手術」では胃がん手術の種類やその歩みについてのエキスパートである名古屋大学大学院医科学系研究科消化器外科教授の小寺泰弘先生にお話を...
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ステージ4の胃がんでも手術は可能?腹腔内化学療法など最新の治療事情

公開日 2017 年 02 月 04 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

ステージ4の胃がんでも手術は可能?腹腔内化学療法など最新の治療事情
小寺 泰弘 先生

名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学教授

小寺 泰弘 先生

記事1「リンパ節郭清と新しい胃がんの手術 - 内視鏡的切除・腹腔鏡下手術」では胃がん手術の種類やその歩みについてのエキスパートである名古屋大学大学院医科学系研究科消化器外科教授の小寺泰弘先生にお話を伺いました。

手術治療が発達している一方で、ステージ4と診断され、手術ができない状態の胃がん患者さんもいます。しかし、昨今ではステージ4にも手術が有効なケースがあるという報告が出てきています。今回は「ステージ4」の患者さんに向けた最新の治療情報について、引き続き小寺先生にご説明いただきました。

ステージ4でも手術は可能なのか?

記事1「リンパ節郭清と新しい胃がんの手術 - 内視鏡的切除・腹腔鏡下手術」でも述べましたが、胃がんでステージ4と診断された場合には、根治を目的とした手術の適応にはならず、治療内容は化学療法、放射線療法、あるいはその他の症状緩和を目的とした対症療法に限られてきました。このことは日本胃癌学会が作成している2014年版の「胃癌治療ガイドライン(以下、ガイドライン)」にも記載されています。しかし近年、ステージ4の患者さんでも場合によっては手術が有効であることがわかってきました。

ステージ4といってもがんの程度はさまざまである

「ステージ4」と一言にいっても、その病状は人によってさまざまです。肝臓への転移ひとつとっても、一箇所にしか転移していない場合からあちこちに多数の転移がある場合まで、多種多様です。さらに患者さんの年齢層も若い方からご高齢の方までさまざまです。

名古屋大学附属病院をはじめ、胃がんの手術を高い専門性を持って行う施設では、時にステージ4の患者さんに手術を行うことがあります。たとえば様々な施設で胃がんの肝転移に対して肝切除術を行った患者さんのデータを集め、これらの予後を調べた論文を読むと、その後5年以上にわたってお元気で生活されている患者さんが10数%から30%程度いらっしゃることがわかってきました。肝転移の個数をはじめ、様々な点で条件がよい患者さんに限ったデータではありますが、ステージ4の患者さんにとってすべての手術が無効とはいいきれないことがわかります。

抗がん剤などによる化学療法の継続で「ダウンステージング」が見られることも

 

胃がん治療においては化学療法も進歩しています。化学療法については効果がある方とない方の差があるのは事実で、劇的に腫瘍が小さくなる患者さんもいれば、全く効果のない患者さんもいらっしゃいます。ただ、効果のある患者さんの数は少しずつ増えてきています。

また、化学療法によってがんが縮小し、ステージ4から3や2へ病状が改善する、いわゆる「ダウンステージング」が見受けられることもあります。化学療法は、元の臓器に発生したがん(今回の場合は胃のがんそのもの)には効果が低い傾向にありますが、転移した先の別の臓器のがんにはより大きな効果を示すことがあり、時には転移が消失することもあります。そのため、化学療法で転移性がんを消失させてから、原発性がんを手術除去するケースもあります。転移したがんの消失が一時的なものであることもままあり、この場合には手術の意味がなくなってしまうため、慎重に判断をして手術を行うようにしておりますが、転移先のがんが消失した状態が長く続いた場合に残っている胃のがんを手術で取り除いて、良好な成績が得られるケースも見られるようになりました。このような手術はまだ研究段階にあり、アジア全域で大規模な実態調査が行われているところです。まだまだ標準的な治療法とはいえませんが、ステージ4の患者さんに化学治療を行なう場合、このようなことが起きる可能性も一部念頭において治療を行っています。

ステージ4のための最新治療「腹腔内化学療法」

現在、ステージ4の中で腹膜転移を有する患者さんに対する最新治療として注目されているのが、お腹の中に直接抗がん剤を入れる「腹腔内化学療法」です。抗がん剤を注射するよりも直接おなかの中に入れたほうが高い濃度が得られると考えられていたので、この方法自体は以前から行われていました。しかし、従来の抗がん剤は、おなかの中に入れてもすぐに血液中に吸収されてしまい、思ったほどの効果を得ることはできませんでした。一方で、おなかの中に入れても吸収されず、高い濃度が維持される抗がん剤もあることがわかりました。このような治療で腹膜転移が消失するようなケースも見られるようになってきました。この治療方法は「先進医療」という制度で行われており、現時点ですべての病院で行うことができるわけではありませんが、ゆくゆくはその有効性が認められ、多くの患者さんに還元できるように努力を重ねているところです。

ガイドラインのステージ4治療改正に向けて

小寺先生

 

日本胃癌学会でもガイドラインの見直しを行なっています。2014年ガイドライン制定の段階でも「ステージ4の患者さんの一部に手術が有効な場合がある」ことがわかり始めてはいたのですが、まだエビデンスが低くガイドラインの本文には記載できませんでした。しかし、ステージ4 と診断された方でも「このような場合には手術を考慮してもよいのではないか」という例外的なケースがあることをQ&A方式で記載しています。今後はこのQ&Aをさらに充実され、やがてガイドラインの本文に「このようなステージ4は切除すべし」と記載できる日が来るよう、今後も努力を重ねていきたいと思っております。

 

胃がん(小寺 泰弘先生)の連載記事

名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学教授であり、胃癌外科のエキスパート。日本胃癌学会理事として長らく学会誌編集に注力し、ガイドライン作成委員として「胃癌治療ガイドライン」の作成に携わる。日本癌治療学会理事としてガイドライン作成・改定委員長も務める。

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