【インタビュー】

クリップする
URLを入力して
記事をクリップしましょう
指定された URL のページが見つかりません
S664x430 8d682cbf e941 48d9 abca 6741c45b53dd
歩行時のふらつきなどが現れるオリーブ橋小脳萎縮症とは? 多系統萎縮症の...
多系統萎縮症(MSA)は、脊髄小脳変性症(せきずいしょうのうへんせいしょう)*と呼ばれる病気のひとつです。日本では、最初に現れる主な症状から、線条体黒質変性症(せんじょうたいこくしつへんせいしょ...
クリップに失敗しました
クリップ とは
記事にコメントをつけて保存することが出来ます。検索機能であとで検索しやすいキーワードをつけたり、読み返し用のメモを入れておくと便利です。
また、記事を読んで疑問に思ったこと、わからないことなどをコメントに書き、「医療チームのコメントを許可する」を選んで頂いた場合は、医師や看護師が解説をメールにてお送りする場合があります。
※ クリップ内容は外部に公開されません

歩行時のふらつきなどが現れるオリーブ橋小脳萎縮症とは? 多系統萎縮症の病型を解説

公開日 2018 年 08 月 06 日 | 更新日 2018 年 08 月 06 日

歩行時のふらつきなどが現れるオリーブ橋小脳萎縮症とは? 多系統萎縮症の病型を解説
髙橋 祐二 先生

国立精神・神経医療研究センター病院 脳神経内科診療部長

髙橋 祐二 先生

目次

多系統萎縮症(MSA)は、脊髄小脳変性症(せきずいしょうのうへんせいしょう)と呼ばれる病気のひとつです。日本では、最初に現れる主な症状から、線条体黒質変性症(せんじょうたいこくしつへんせいしょう)、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群の3つの病型に分類されます。

このうちオリーブ橋小脳委縮症では、最初に小脳症状が現れます。今回は、国立精神・神経医療研究センター病院 脳神経内科診療部長の髙橋 祐二先生に、多系統萎縮症のひとつであるオリーブ橋小脳委縮症の特徴や治療についてお話しいただきました。

脊髄小脳変性症:脳の一部が障害されるために歩行時のふらつきなどの症状が現れる神経の病気の総称

小脳症状:話すときに呂律が回らなくなったり起立や歩行時にふらつきが起こったりする症状

多系統萎縮症とは?

多系統萎縮症は、脊髄小脳変性症のひとつです。脊髄小脳変性症とは、脳の一部、特に小脳や脊髄と呼ばれる場所が進行性に障害されることによって、歩行時のふらつきなどさまざまな症状が現れる神経の病気の総称です。

最初に現れる主な症状から3つの病型に分類

多系統萎縮症は、最初に現れる主な症状から以下の3つの病型に分類されます。

  • 線条体黒質変性症:動作が遅くなるなどのパーキンソン症状が最初に現れる主な症状である病型
  • オリーブ橋小脳萎縮症:起立や歩行時のふらつきなどの小脳症状が最初に現れる主な症状である病型
  • シャイ・ドレーガー症候群:立ちくらみや失神、尿失禁などの自律神経障害が最初に現れる主な症状である病型

どの病型であっても、病気の進行とともに徐々に他の病型を合併していきます。そのため、発症初期の主症状は異なりますが、最終的には程度の差こそあれすべての病型の症状が現れる点が特徴です。

MSA-C・MSA-Pと分類されることも

お話しした3つの分類とは別に、多系統萎縮症では、Gilman分類と呼ばれる国際的な診断基準(その病気の診断方法や治療方法を定めた指針)が定められています。Gilman分類では、以下のように病気が分けられています。

分厚い本

  • MSA-C:診察時に小脳症状が主体であるもの
  • MSA-P:診察時にパーキンソン症状が主体であるもの

そのため、多系統萎縮症の診療では、「MSA-C」や「MSA-P」という言葉が使われることがあります。ご紹介した3つの病型にあてはめると、MSA-Cがオリーブ橋小脳萎縮症、MSA-Pが線条体黒質変性症に該当します。2018年5月現在、国際的な診断基準では、シャイ・ドレーガー症候群に該当する分類はありません。これは自律神経症状は多系統萎縮症の診断に必須の症状として、MSA-P・MSA-Cの診断基準に含まれているからです。

オリーブ橋小脳萎縮症とは?

多系統萎縮症の病型のひとつ

オリーブ橋小脳萎縮症は、お話ししたように多系統萎縮症の病型のひとつです。日本では、多系統萎縮症の約60〜70%を占めるといわれています。

小脳症状が特徴

オリーブ橋小脳萎縮症は、最初に小脳症状が現れる点が特徴です。小脳症状では、会話をするときに呂律が回らなくなったり、起立歩行時にふらついてしまい、まっすぐに歩くことができなくなったりします。

発症年齢・男女比

オリーブ橋小脳萎縮症は、40歳代以降の発症が多いです。特に、50歳代で発症しやすいと考えられます。発症のしやすさに男女の違いは認められていません。

オリーブ橋小脳萎縮症の症状

初期の主な症状:起立歩行時のふらつきなどの小脳症状

オリーブ橋小脳萎縮症の発症初期の主な症状は、小脳症状と呼ばれるものです。小脳症状では、会話をするときに呂律が回らなくなったり、起立や歩行時にふらついてしまい、まっすぐに歩くことができなくなったりします。また、文字を書いたときに乱れてしまうこともあります。

進行時の症状:パーキンソン症状や自律神経障害を合併

お話しした小脳症状に加えて、病気の進行とともに徐々に他の病型の症状が現れるようになります。

パーキンソン症状を合併すると、表情が乏しくなったり、筋肉が硬くなり歩行や動作が遅くなったりなどの症状が現れるようになります。自律神経障害を合併すると、起立性低血圧による立ちくらみや失神、尿失禁や残尿などを生じるようになります。

他の病型の症状を合併するようになると、小脳症状は目立たなくなってくることもあります。しかし、それは小脳症状がなくなるわけではなく、パーキンソン症状や自律神経障害など他の症状が目立ってくるからに過ぎません。

どの症状をいつ合併するかは、患者さんによって異なります。特に自律神経障害の症状が強く現れるようになると、重症化しやすいと考えられています。

起立性低血圧:立ち上がったり起き上がったりしたときに、過度に血圧の低下が起こる症状

オリーブ橋小脳萎縮症の診断

主に小脳症状を確認

多系統萎縮症の診断のための診療では、症状を確認していきます。オリーブ橋小脳萎縮症の場合、呂律が回らなかったり、起立や歩行時にふらついてしまったりなどの症状があれば、診断のための重要な情報になります。

さらに、他の病型の症状がみられるようであれば、この病気を疑います。たとえば、小脳症状に加えて、起立性低血圧による立ちくらみや尿失禁など自律神経障害による症状が現れるようであれば、多系統萎縮症の可能性があります。

MRIなどの検査を実施

また、頭部MRI(磁気を使い、体の断面を写す検査)を行い、オリーブ橋小脳萎縮症に特徴的な画像所見が現れるかを確認します。オリーブ橋小脳萎縮症の特徴的な画像所見は、脳幹・小脳の萎縮と、橋の十字サイン(Hot cross bun sign)であり、画像所見が診断の有効な手がかりになるケースが多いです。しかし、発症して間もない段階では、必ずしも特徴的な所見がすべてそろっているわけではありません。

MRI

また、自律神経機能を測る検査や残尿を測る検査、脳SPECTなどを行い、診断の参考にすることもあります。

診断には時間がかかることも

お話ししたように、オリーブ橋小脳萎縮症に特徴的な画像所見は、発症初期にはすべてそろっているわけではありません。そのため、発症して間もない段階では診断がつけられないこともあります。経過を観察し、最初の診療から数年後に診断されるケースもあります。

脳SPECT:脳の血流の状態を調べる検査

オリーブ橋小脳萎縮症の治療

2018年5月現在、病気を根本から治す治療方法はみつかっていません。現状では、以下のように、症状を和らげる治療を行います。

小脳症状を和らげる薬による治療

オリーブ橋小脳萎縮症の治療では、主に小脳症状に対する薬による治療を行います。

病気が進行し、小脳症状に加えてパーキンソン症状や自律神経障害による症状が現れてきた場合にも、それぞれの症状に効果が期待できる薬によって治療していきます。たとえば、起立性低血圧や排尿障害などは効果のある薬がすでにあるため、これらの薬によって症状を和らげます。

小脳症状に効果が期待されるリハビリテーション

お話しした薬物治療に加えて、近年ではリハビリテーションにも力を入れています。多系統萎縮症のなかでも小脳症状が強く現れるオリーブ橋小脳萎縮症の患者さんには、リハビリテーションの効果が期待できることがわかってきたからです。

リハビリテーションでは、主にバランス訓練や、筋力をつけるための運動を行います。お話ししたように、小脳症状では、歩行時のふらつきが起こります。なるべくふらつきを防ぐためには、左右にふんばることができる筋力や、まっすぐに立っていられるバランス感覚が大切です。

このリハビリテーションは、発症から早い段階であるほど効果が期待できると考えられています。一方、病気の進行とともに自律神経障害が強く現れるようになると、起立性低血圧によって立っていることが難しくなるケースが多く、リハビリテーションを行うことができなくなっていきます。

そのため、なるべく早期にリハビリテーションに取り組むことが、症状を和らげることにつながるでしょう。

リハビリ

嚥下食や胃ろうの導入

病気が進行すると、食物や水分を飲み込むことが難しくなる嚥下障害(えんげしょうがい)を起こすことが多いです。嚥下障害のために食事をとることが難しくなると、飲み込みやすい嚥下食を取り入れることがあります。また、胃ろう(胃に穴をあけチューブから栄養をとりいれること)を導入することもあります。

嚥下障害が起こると、誤嚥性肺炎(食べものや唾液などと一緒に、誤って細菌が気管に吸引されることで生じる肺炎)を生じるリスクが高くなります。誤嚥性肺炎を予防するためには、口腔内の清潔が保たれていることが大切です。口腔内のケアを行うことが予防につながるでしょう。

多系統委縮症の新たな治療法の可能性

2018年5月現在、多系統萎縮症の新たな治療法確立に向けた臨床試験(新しい薬や治療法を開発するために、人で効果や安全性を調べる試験)が始まっています。今後は、病気を根本から治す治療が確立される可能性もあります。

診療ガイドラインの刊行

また、2018年5月には「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」が刊行されました。病気の説明から症状・検査・診断・治療・リハビリまで網羅された充実した内容になっています。

オリーブ橋小脳萎縮症の経過

発症から約9年で亡くなることが多い

多系統萎縮症のうちオリーブ橋小脳萎縮症の患者さんは、発症から5〜8年程度で歩くことができなくなることが多いです。ただ、進行の速度は患者さんごとに異なります。

さらに進行すると、発症から約9年で嚥下障害による窒息や、気道閉塞による無呼吸で亡くなることが多いといわれています。このような場合に、気管切開・人工呼吸器によって呼吸管理を行うケースもあります。

しかし、これらの原因とは別に、原因がわからず突然亡くなることもあります。多系統萎縮症には、このような原因不明の突然死のリスクがあることが報告されています。

患者さんへのメッセージ

早期からリハビリテーションに取り組んでほしい

高橋先生

多系統萎縮症のなかでもオリーブ橋小脳萎縮症は、起立や歩行したときのふらつきで病気に気づくことが多いです。そのため、ふらつきが頻繁に起こるようであれば、この病気の可能性を考えてほしいと思います。

お話ししたように、オリーブ橋小脳萎縮症に特徴的な小脳症状には、リハビリテーションの効果が期待できることがわかっています。なるべく早期にリハビリテーションに取り組むことが症状を和らげることにつながると思います。

多系統萎縮症(髙橋 祐二先生)の連載記事

東京大学医学部を卒業後、東京大学医学部附属病院神経内科助教を経て、国立精神・神経医療研究センター病院に所属する。現在は、神経内科診療部長として、臨床・研究共に、日々精進している。

関連記事