概要
尋常性白斑とは、皮膚の色のもとであるメラニン色素を産生するメラノサイト(色素細胞)が何らかの原因で減少または消失し、皮膚の色が白く抜けてしまう病気です。尋常性白斑と似たような病気はいくつかありますが、尋常性白斑は後天的(生まれてから後に現れる)で、完成した病変部では境界線がはっきりしている(完全脱色素斑)という特徴があります。また、非分節型、分節型、未分類型の3つに分類され、それぞれのタイプに応じて白斑が現れる範囲や現れ方が異なります。
尋常性白斑は治療に抵抗性を示すことが多い難治性の病気で、症状が現れる部位によっては患者のQOL(生活の資)を低下させる要因にもなります。また、甲状腺疾患や関節リウマチなどの膠原病の合併症がみられることもあり、尋常性白斑と同時に合併症の検査・治療が必要になることもあります。
日本での尋常性白斑にかかる頻度は人口の0.5~1%程度といわれており、後天的に白斑が生じる病気の中ではもっとも頻度が高い病気です。
原因
尋常性白斑は、メラノサイト(色素細胞)が何らかの原因で減少、消失することによって起こります。メラノサイトは皮膚の色のもと(メラニン色素)を産生するはたらきがあり、これが減少することで皮膚の色が白く抜けてしまうようになります。
尋常性白斑でメラノサイトが減少する原因としては、メラノサイトに対する自己免疫異常やストレスなどの説が考えられていますが、不明な点も多いです。
症状
尋常性白斑では、皮膚の色が白く抜けてしまいます。体のいたるところで発症することがありますが、特に太ももやふくらはぎの外側、腰、お腹、皮膚と皮膚が触れ合いやすい股やお尻、そして、おでこなどの部位に発症しやすいといわれています。
尋常性白斑の特徴
完成した尋常性白斑の症状には以下のような特徴があります。
- 皮膚が白くなった場所の境界線がはっきりとしている
- 形や大きさは人それぞれで、尋常性白斑が2つくっつくこともある
- 痛みやかゆみなどの症状は出ない
- 頭に発症すると、髪の毛が白くなることもある
など
検査・診断
尋常性白斑は症状を基に診断が進められます。尋常性白斑にはさまざまな似た病気があり、白斑が生まれつきのものかどうか、白斑の境界線がはっきりしているか、白斑が全身のどこに現れているか、白斑を生じさせる他の病気があるかなどをもとに診断が進められます。
また、尋常性白斑は自己免疫性甲状腺機能異常、膠原病、シェーグレン症候群、糖尿病、円形脱毛症、悪性貧血、アジソン病、重症筋無力症などの合併症がみられることがあります。これらの合併症の有無を調べるために、血液検査などの検査が行われることもあります。
尋常性白斑は白斑の体表面積に応じて軽症から重症に分けられることがあります。
- 軽症:白斑が体表面積の10%未満である
- 中等症:白斑が体表面積の10%以上、30%未満である
- 重症:白斑が体表面積の30%以上である
ただし、白斑が顔面に生じている場合など、白斑によってQOLが著しく損なわれている場合は、面積にかかわらず重症と診断されることもあります。
治療
尋常性白斑の治療法には薬物療法、紫外線療法、植皮・外科手術、カモフラージュメイク療法などがあります。
どの治療を行うかは、発症からの年数、患者の年齢、白斑の位置によって異なります。また、合併症がある場合はそれぞれの専門医による合併症の治療が行われます。
薬物療法
ステロイド外用剤、活性型ビタミンD3外用薬、タクロリムス軟膏などの外用剤が主に用いられますが、後2剤は保険適用ではありません。進行性の尋常性白斑に対しては、ステロイド剤の全身投与が用いられることもあります。
紫外線療法
紫外線を照射する治療です。照射する紫外線の種類によっていくつかの方法がありますが、ナローバンドUVB照射療法と呼ばれる方法が第一選択とされており、ほかにPUVA療法、エキシマレーザー/ライト照射療法などがあります。
植皮・外科手術
ほかの部位の皮膚を移植する治療法です。過去1年以内に症状の悪化がみられず、かつ見た目の問題から治療の必要性が高い場合に行われることがあります。
カモフラージュメイク療法
白斑専用の化粧品を用いて白斑のカモフラージュを行う治療法です。尋常性白斑の治療を行っても効果がない場合に、患者のQOL改善を目的として行われることがありますが、保険適用ではありません。
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尋常性白斑の遺伝性について
相談者の私は中国からの留学生です。患者は私ではなく、中国にいる恋人のほうです。男性、30代。 もとより、学位を取ってから帰国して結婚する計画です。 半年前に彼は尋常性白斑にかかったので、親は大反対です。 何よりもこの病気は遺伝の可能性があるからです。 現在は、親を説得しようとし、結婚するつもりです。 親を説得するために、尋常性白斑の遺伝性についてもっと詳しく知りたいです。 また、恋人と二人とも子供が好きで、やはり子供が欲しいです。 万が一、遺伝の可能性が高ければ、試験管ベビーも考えています。 これから二人の育児の計画のためにも、遺伝性のことについては詳しく知りたいです。 中国でも日本でもいろいろと調べましたが、白斑の遺伝性については、現在分かったところ、明らかな遺伝形式が存在しないようです。また、日本の「尋常性白斑診療ガイドライン」を読みましたが、20~30%の尋常性白斑患者で家系内発症が見られると書いてあります。 それよりもっと具体的に知りたいことは下記のようです。 1、 非分節性と分節性とは、遺伝性においては差がありますか。言い換えれば、尋常性白斑の種類が違うことによって、遺伝の可能性も違うのでしょうか。 中国では、皮膚科の先生がただ見て判断するだけですが、彼は非分節性の四肢顔面型のようです。もし種類によって遺伝の可能性も違うならば、日本に来て診査を受けることも検討します。 2、 遺伝性は病気が治るかどうかと関係がありますか。 一度治ったとしても、再発する可能性があるので、その遺伝性も治るかどうかとは関係がないと考えられますか。実際、彼は5月から治療を受けています。主に、ステロイド外用薬とナローバンドUVB照射療法です。左目のあたりは、明らかに効果があります。手が難治で、あまり効果がないです。完全に治るまで、時間がかかると思います。しかし、完全に治ってもなお遺伝する可能がある、ということでしょうか。 相談したいことを整理して試みましたが、やはり混乱で、すみません。ひとまず、上の二点について伺いたいです。 最後に、保険なしで診療できる病院については、何かお勧めがあるのでしょうか。
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