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甲状腺クリーゼ
甲状腺クリーゼとは、バセドウ病を代表として甲状腺機能が過剰になる病気を基礎に発症する病態です。基礎となる病気のコントロールが不十分になった時に、何かしらのストレスが加わることで突然様々な臓器に障...
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甲状腺クリーゼ(こうじょうせんくりーぜ)

更新日時: 2017 年 04 月 25 日【更新履歴
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2017 年 04 月 25 日
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概要

甲状腺クリーゼとは、バセドウ病を代表として甲状腺機能が過剰になる病気を基礎に発症する病態です。基礎となる病気のコントロールが不十分になった時に、何かしらのストレスが加わることで突然様々な臓器に障害が起き、生命に危機が及ぶ状態のことを甲状腺クリーゼと呼びます。本邦においては、年間250件ほどの甲状腺クリーゼが発症していると考えられています。

甲状腺クリーゼの症状は、不穏せん妄などの中枢神経障害、発熱、心不全症状、悪心嘔吐などの消化器症状です。一度甲状腺クリーゼを発症すると、死亡率は10%強と生命予後は必ずしも良好ではありません。したがって、甲状腺機能亢進症に対してのより特異的な治療に加えて、循環・呼吸のサポート、原因となったストレスの対処など、多角的な視点からの治療を行うことが必要不可欠な病態であると言えます。

原因

 甲状腺クリーゼとは、何かしらのストレスがきっかけとなり、甲状腺機能が過剰に亢進している状態を指しますが、病気の発症には甲状腺から分泌される「甲状腺ホルモン」が重要な役割を担っています。代謝とは摂取した脂肪や炭水化物などからエネルギーを作り出すことを言いますが、甲状腺ホルモンはこの代謝を促進させることで、体を活発に動かすよう働きかけます。さらに甲状腺ホルモンは交感神経を刺激します。具体的には脈を速めるなどの作用があり、常に「小走りで体が動いているような状況(活動状態)」に体を調整します。このように甲状腺ホルモンは、例えるならば「体のアクセルを踏む」「体を元気にする」などの役割を果たしています。 しかし甲状腺クリーゼでは甲状腺ホルモンによる効果が強く出すぎている状態です。身体の各臓器において、甲状腺ホルモンの作用に対応することができなくなり全身各種臓器に渡る症状が出現するようになります。

甲状腺クリーゼを引き起こしうるストレスとしては、甲状腺そのものに関連したものと、甲状腺とは関係のないものに分けることができます。甲状腺に関連した誘因としては、薬の不規則な服用や中止・甲状腺の手術・甲状腺ホルモン製剤の大量の服用などがあります。 一方、甲状腺に直接関係しない誘因としては、感染症・甲状腺以外の臓器手術・外傷・妊娠・分娩・副腎皮質機能不全・ヨウ素系造影剤投与・脳血管障害・肺血栓・塞栓症・虚血性心疾患・抜歯・強い情動ストレスや激しい運動などにより甲状腺ホルモンが過剰になって発症することもあります。

症状

甲状腺クリーゼでは、全身各種臓器に甲状腺ホルモンの作用が過剰に生じており、それに関連した症状を見るようになります。 甲状腺ホルモンは脳に対しても働きかけるため、甲状腺クリーゼになった場合は興奮、錯乱状態といった中枢神経障害の症状が出ることがあります。大声で叫ぶ・暴力をふるう・けいれん・昏睡・幻覚や錯覚を見る譫妄(せんもう)・すぐに意識が混濁する傾眠、などの症状を見ることがあります。こうした症状を示す時には患者さんからの情報収集は不明瞭になることもあり、甲状腺クリーゼの基礎疾患である「甲状腺機能亢進症」を有するかどうかが病院受診時には明らかにならないこともあります。そのため、中枢神経に関連した症状は、治療介入が遅れる危険性がある症状とも言えます。

その他、発熱・多臓器不全・心不全・呼吸器不全・不整脈・DIC(全身の血管内で無秩序に血液凝固反応が起こる「播種性血管内凝固症候群」)・消化器症状(下痢や嘔吐など)などの症状を見ることがあり死に至ることがあります。なお一命を取り留めた場合も、脳障害、脳血管障害、心房細動などの後遺症を合併することもあります。

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検査・診断

甲状腺クリーゼの診断は、特徴的な症状に加えて、血液検査にて甲状腺ホルモンが上昇していることを確認することでなされます。甲状腺クリーゼでは、「遊離T3」や「遊離T4」という甲状腺ホルモンの上昇が確認されます。 甲状腺クリーゼでは、頻脈や心房細動を始めとした不整脈を認めます。したがって、心電図による不整脈をチェックすることも大切です。その他心臓に関連した症状として、心不全を認めることもあります。胸部単純レントゲン写真や胸部単純レントゲン写真を行い、心不全に関連した所見(心臓の拡大や肺に大量の水が溜まる胸水、肺水腫など)が存在しないかどうかを検索します。

治療

甲状腺クリーゼの治療は、過剰に亢進している甲状腺ホルモン産生や分泌を抑制するための特異的な治療に加えて、全身各種臓器で出現している症状に対しての対症療法に大きく分けることができます。 甲状腺そのものに働きかける治療方法としては、甲状腺ホルモンの産生・分泌を抑えるため無機ヨウ素薬(無機ヨード)であるヨウ化カリウムや内用ルゴール液を私用します。その他甲状腺のホルモンを合成する機能を押さえる大量の抗甲状腺剤=チアマゾールやプロピルチオウラシルと無機ヨードを投与することも有効です。また、副腎皮質ホルモンであるヒドロコルチゾンが投与されることもありますが、これにより活性化作用の強い甲状腺ホルモンが産生されるのを抑制することが期待されます。ステロイドを投与することは、甲状腺クリーゼ時に合併することの多い急性副腎不全に対応する意味合いもあります。

対症療法としては、頻脈に対してはβ遮断薬が投与されます。脱水を伴うこと多いため、輸液を行うことも必要になります。甲状腺クリーゼでは黄疸を発症することもあるため、これに対応して血漿交換が行われることもあります。 甲状腺クリーゼの死亡率は10%ほどと高く、以上のような集学的な治療を行うことがとても大切になります。

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