かんさいぼうがん

肝細胞がん

最終更新日:
2020年08月14日
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2020/08/14
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概要

肝細胞がんとは、肝細胞(肝臓の細胞)から発生するがんのことです。

肝細胞は肝臓の70~80%を占め、たんぱく質やコレステロールなどの合成、胆汁の産生を担い、アルコールなど人体に不要な物質を解毒・分解するはたらきがあります。肝臓にできるがんにはいくつかの種類がありますが、他部位のがんが肝臓に転移してできる“転移性肝がん”や肝臓の中を走行する胆管から発生する“肝内胆管がん”は肝細胞がんとは別の病気です。

肝臓は生命を維持するうえで非常に重要な臓器であり、肝細胞がんが進行すると肝臓の機能が低下するため非常に重篤な状態となるケースが多々あります。その一方で、肝細胞がんは早期の段階では症状が現れにくいのが特徴であり、進行してから発見されることも少なくありません。

原因

多くの肝細胞がんは、慢性肝炎肝硬変といった慢性肝疾患を背景に発生することが知られています。

これまで日本ではC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎/肝硬変が肝細胞がんの最大の原因となっていました(全体の60~70%)が、近年C型肝炎治療が大きく進歩し、1~3か月の飲み薬の内服だけでウイルスが排除できるようになり、C型肝炎ウイルスが原因となっている肝細胞がんの発生は少しずつ減少傾向になってきています。

同様に、B型肝炎ウイルスも日本では肝細胞がんの大きな原因になっています(全体の10%程度)が、飲み薬により感染したウイルス量を少なく維持することができるようになり、慢性肝疾患の進展や肝細胞がんの発生予防が期待できるようになってきました。

一方、過度なアルコール摂取から肝細胞がんを発症するケースや、近年では非アルコール性脂肪性肝炎NASH)による肝細胞がんの発症が増加してきています。現在の日本では、肝炎ウイルス以外の原因で生じる慢性肝疾患による肝細胞がんの割合が約20%を占めており、その多くは非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が進行したNASHである可能性が指摘されています。

NAFLDを発症する方には、高血圧脂質異常症糖尿病メタボリックシンドローム、肥満といった生活習慣病を合併している方が多いため、その診断と予防が今後の大きな課題となってきています。

症状

肝臓は“沈黙の臓器”とも呼ばれており、その名のとおり早期段階ではほとんど症状は現れません。しかし、進行してがんが大きくなると右上腹部にしこりを触れるようになったり、倦怠感、おなかの張りや痛みなどが生じたりします。

また、がんが胆汁の通り道である胆管を圧迫して閉塞(へいそく)を引き起こすと、黄疸(おうだん)による皮膚・目の黄染、皮膚のかゆみなどの症状が見られることも少なくありません。

さらに進行すると肝臓の機能が著しく低下するため、たんぱく質の合成や有害物質の解毒・分解などができなくなり、おなかに水がたまる(腹水)、むくみ、意識障害、出血しやすくなる(血小板の合成不足)などさまざまな症状が現れ、非常に重篤な状態となります。

検査・診断

肝細胞がんに対しては次のような検査が行われます。

血液検査

肝臓の機能を調べるための検査です。

単に肝臓で産生される酵素などの状態を調べるだけでなく、肝臓の機能が低下することによって産生量が減少するアルブミンや血小板、凝固因子などの状態も調べられます。

また、肝細胞がんの腫瘍(しゅよう)マーカーである“AFP”や“PIVKA-Ⅱ”および“AFP-L3分画(AFPレクチン分画)”を調べるのも一般的です。

画像検査

がんの大きさや位置、ほかの部位への転移の有無を調べるための検査です。

CT検査、MRI検査などが行われますが、特に肝細胞がんでは血管を描出しやすくする造影剤を注射しながら撮影を行う“造影CT検査”で特徴的な画像が描出されるため、広く実施されています。

超音波検査

初診時や治療後の病状を経過観察する際に行われることが多い検査です。

放射線を使用しないため人体に影響がなく、外来でも簡便にがんの大きさや個数、がんと血管の位置、がんの拡がり、肝臓の形や状態、腹水の有無などを調べることができます。ただし、がんの場所によっては検査が困難な場合や、皮下脂肪が厚いために十分な検査ができない場合があります。

患者さんの状態(腎機能が悪い場合など)やがんの存在する部位によっては、血管から造影剤を注射して検査を行うこともあります(造影超音波検査)。

病理検査

画像検査や血液検査のみでははっきりと肝細胞がんであることが分からない場合、“肝生検”(主として超音波検査を用いて、皮膚から肝臓の病変部に針を刺して組織の一部を採取する)を行い、顕微鏡で詳しく調べる“病理検査”を行うことがあります。体への負担が大きな検査ですが、確定診断を下すには必須の検査となります。

治療

肝細胞がんの治療法の主たるものは肝切除、ラジオ波焼灼療法(RFA)、肝動脈塞栓(そくせん)療法(TACE)、分子標的治療薬を用いた化学療法の4つであり、病状によっては放射線治療や肝移植が考慮される場合もあります。

肝細胞がんの多くは慢性の肝疾患、特に肝硬変を背景に発生することから、治療法の選択には患者の肝臓の機能がどれくらいあるか(肝予備能)と、がんの進行度(腫瘍の大きさ、個数など)によって決定されます。

たとえば、肝予備能が保たれている場合、肝細胞がんが1個の場合には大きさにかかわらず肝切除が選択され、肝細胞がんの大きさが3cm以下で個数が3個以下の場合にはラジオ波焼灼療法(RFA)が選択されます。

一方、肝細胞がんの個数が4個以上の場合には肝動脈塞栓療法(TACE)が推奨されますが、最近、肝細胞がんに対する新しい分子標的治療薬が保険適用となり、化学療法の単独使用や他の治療との併用治療を選択することも増えてきました。さらに、がん細胞に対する免疫を活性化する治療薬である免疫チェックポイント阻害剤が肝細胞がんにも有効であることが明らかになってきましたので、今後は免疫チェックポイント阻害剤を含めた化学療法が治療の中心となってくるものと期待されます。

しかし、肝予備能が著しく低下している場合にはこれらの治療を行っても十分な効果が得られないため、肝移植が必要となります。

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