えいちあいぶいかんせんしょう

HIV感染症

最終更新日:
2024年03月29日
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2024/03/29
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概要

HIV感染症とは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染している状態を指します。HIVに感染すると免疫力が徐々に低下し、さまざまな病気にかかりやすくなります。

HIVと進行性HIV疾患(AIDS<エイズ>:後天性免疫不全症候群*は同語として扱われることがありますが、これらは異なるものです。進行性HIV疾患は、HIVに感染して免疫力が低下した結果、日和見感染(ひよりみかんせんしょう)悪性腫瘍(あくせいしゅよう:がん)**を1つ以上合併した状態のことを示します。

現在、日本におけるHIV感染症の新規患者数は毎年およそ600~1,000人で推移していると報告されています。感染の多くは性行為によるものと推測され、特に肛門性交(こうもんせいこう)の感染リスクが高いといわれています。

*進行性HIV疾患:近年、世界的にはAIDSという言葉が偏見を助長するとの意見があり使用しないことを推奨しており、advanced HIV diseaseすなわち進行性HIV疾患という表現を使うようになっている。

**日和見感染症や悪性腫瘍:カンジダ症やトキソプラズマ脳症、サイトメガロウイルス感染症カポジ肉腫、原発性脳リンパ腫など厚生労働省が指定する23疾患。疾患によっては、発症年齢や罹患部位などが詳細に定義されていることもある。

原因

HIVは体液中に存在し、精液や腟分泌液、血液、母乳などに含まれるHIVが粘膜や傷口から体内に侵入することで、ヒトからヒトへの感染が成立します。そのため、感染原因としてHIVの治療を行っていない陽性者との性行為による感染が多いとされるほか、血液感染や母子感染などが挙げられます。

ただし、HIV陽性者であっても、抗HIV薬を服用して血中のHIVウイルス量が検出感度以下の状態を6ヶ月以上維持している場合には、ほかの人にHIVが感染することはありません。

一方で、HIVの治療を行っていなくても汗、涙、唾液、尿、便といった体液に含まれるウイルス量はごく少量で、HIVは感染力が弱く体外に出ると感染力を失うといわれています。そのため、これらの体液の接触によって感染することはありません。キスやハグ、握手などの身体的接触や物品の接触、飲食物の共有などの接触によって感染することもないとされています。

性行為などの接触によって体内に入ったHIVはCD4陽性細胞にくっつき、この細胞の中を利用して増殖します。CD4陽性細胞は、免疫細胞の中でも司令塔のような役割を持っています。そのため、HIVが増殖してCD4陽性細胞が壊されると、司令塔を失った免疫系は正常にはたらかなくなり、結果として免疫力が低下していきます。

また、感染してから無治療のまま経過すると、数年のうちに日和見感染症や悪性腫瘍、神経障害など、さまざまな病気を合併する“進行性HIV疾患(AIDS)”と呼ばれる状態になります。

症状

HIV感染症は、発症時期に応じて急性期(感染後2週間~3か月)、無症状期(感染後数年~10数年)、進行性HIV疾患(AIDS)発症期の3つがあり、それぞれで症状が異なります。

急性期

感染後2週間~3か月くらいの時には、発熱や喉の痛み、体のだるさ、筋肉痛などの風邪やインフルエンザのような症状が数週間にわたってみられる場合があります。感染初期には免疫力がある状態のため、免疫機能によってウイルスが減少すると、これらの症状は自然に治まります。

無症状期

HIV感染症は症状から判断しづらい病気で、急性期を過ぎると5~10年ほど症状がない期間が続きます。ただし、無症状期の期間は人によって異なり、5年以内に進行性HIV疾患発症期に移行する場合もあれば、長期間発症しない場合もあります。

いずれにしてもHIVが免疫の司令塔であるCD4陽性細胞を壊し続けているため、この期間も免疫力は徐々に低下していきます。

進行性HIV疾患発症期

免疫力の低下に伴って、寝汗、下痢、急激な体重減少などの症状が現れることがあります。

また、日和見感染症や悪性腫瘍、神経障害を合併し、さまざまな症状が出てくるようになります。

HIVに感染してから10年の間に約半数の人が進行性HIV疾患を発症するといわれ、治療を行わなければ最終的にほとんどの人が進行性HIV疾患を発症します。

検査・診断

HIVに感染しているか調べるために、まず血液検査で血液中にHIVに対する抗体*があるかを確認します。この簡易的な検査は保健所にて無料で受けられます。

しかし、感染初期には検出に十分な量のHIV抗体ができていません。個人差がありますが、血液中にHIV抗体が検出されるまでには感染後4~8週間程度かかります。

また、簡易的な検査のため、実際には感染していても陰性と判定される場合もあります。陰性でもHIV感染症が疑われる場合には通常3か月以上たってから再検査が必要です。

反対に、感染していないのに陽性と判定される場合もあります。そのため、陽性や判定保留となった場合には精密な検査(確認検査)*を受ける必要があります。

*抗体:特定の異物が体内に侵入したときに作られるタンパク質    

*確認検査:一般的に、検査ではまず採血を行い、血液中のウイルスの存在の有無を調べるNAT検査、抗原検査、抗原抗体同時検査などを行う。

治療

HIV感染症に対する治療は、2種類以上の抗HIV薬を組み合わせて服用する抗レトロウイルス療法が基本です。現在ではさまざまな抗HIV薬が開発されており、生活の質(QOL)に極力影響が出ないよう考慮しつつ、状況に応じて治療薬を決定・変更します。

抗HIV薬によってウイルスを完全に排除することはできませんが、早期に治療を始め生涯にわたって抗HIV薬による治療を続けることで、免疫健常者と同じように生活を送ることが可能です。

一方で、進行性HIV疾患(AIDS)の発症により日和見感染症、悪性腫瘍、神経障害などの病気を合併している場合には、それらの合併症に対する治療も含めて治療方針を決定します。

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