こつがたあるかりほすふぁたーぜ

骨型アルカリホスファターゼ

別名
BAP
血液検査
血液を採取し、その中に含まれる物質などを測定する検査です。
鑑別診断
この検査だけで病名を確定することはできませんが、異常の有無やどのような病気が考えられるかなどを知ることができるものです。検査結果に応じて、さらに検査が追加される場合があります。
フォローアップ
治療の効果や、病気の経過を知るために行われる検査です。定期的に繰り返して実施されることもあります。
スクリーニング
ある特定の病気について、その可能性があるかどうかを広く知るために行われる検査です。具体的な診断をするためにはさらなる検査を必要とします。また、健康診断などで用いられることもあります。
Icon close

基準値・基準範囲(出典元:エスアールエル詳細)

※検査機関・検査方法によって異なる場合があります。

  • 男性:3.7~20.9μg/L
  • 閉経前女性:2.9~14.5μg/L
  • 閉経後女性:3.8~22.6μg/L

骨型アルカリホスファターゼは、リン酸化合物を分解する酵素のアルカリホスファターゼの一種です。検査では血中濃度が調べられ、一般的にはBAPと表記されます。

アルカリホスファターゼは肝臓・腎臓・骨・小腸など全身のさまざまな部位に存在し、その部位に何らかのダメージを受けると組織から血液中に漏れ出るため、血中濃度が上昇します。アルカリホスファターゼは構造によって6つのタイプに分けられ、ALP3と呼ばれるタイプのものが骨型アルカリホスファターゼです。骨型アルカリホスファターゼは骨芽細胞という骨を作る細胞に多く存在するため、骨を作る力を反映します(骨形成マーカー)。骨に異常を生じる病気によって血中濃度が上昇し、逆に骨を作る力が弱くなった場合には低下します。

この性質を利用し、骨型アルカリホスファターゼは骨肉腫やがんの骨転移、骨粗しょう症などの骨の病気だけでなく、副甲状腺機能亢進症、橋本病やバセドウ病などの甲状腺機能に異常を生じる病気、ベーチェット病、糖尿病、腎不全など骨の代謝に異常を引き起こす病気の診断、スクリーニング、フォローアップなどに用いられています。また骨粗鬆症でも骨を作る能力が低下している場合はBAP値が低下します。

骨型アルカリホスファターゼは上で述べたような病気が疑われる際に行われる検査です。画像検査上、明らかな病変が発見できない初期の段階でも異常値を検出することができるため、上記の病気の有無をスクリーニングするために調べられます。

また、それぞれの病気の治療効果や病状(病気の状態)を確認する目的で定期的に検査が行われることも多く、特に骨粗しょう症では骨代謝の状態を確認する骨形成マーカーとして使用されています。

骨型アルカリホスファターゼは血液検査によって測定されます。検査数値は食事内容や運動などによる影響は受けませんが、躁病(そうびょう)などの治療で用いられるリチウム製剤を服用していると検査値に影響を生じる場合があるため、検査を行う前には医師に服薬内容を申し出るようにしましょう。

検査前に心がけるとよいこと

骨型アルカリホスファターゼ値の測定には、採血を行う必要があります。検査当日は前腕部を露出しやすく、腕の締めつけが少ない服装を心がけるようにしましょう。

骨型アルカリホスファターゼ値を調べるには、静脈血採血を行う必要があります。一般的に行われる手法と同様に行われるため、採血操作さえ滞りなく終了すれば検査自体は採血部の圧迫止血を行う時間も含めて5分程度で終えることができます。

また、痛みも採血の際に針を刺す痛みのみで行えると考えられます。

骨型アルカリホスファターゼの基準値は、男性:3.7~20.9 閉経前女性:2.9~14.5 閉経後女性:3.8~22.6 (μg/L)です。女性の場合は閉経前後で基準値が異なります。

ただし、基準値の範囲は検査を実施した医療機関や医師の見解によって異なるため、検査結果の判定は自己判断せず、担当医の判断に委ねるようにしましょう。そのうえで、精密検査や治療の必要性についてよく説明を聞くことが大切です。

骨型アルカリホスファターゼの異常は、骨の吸収や破壊などの骨代謝に何らかの異常が生じていることを示唆します。骨の代謝には副甲状腺ホルモンやエストロゲンなど種々のホルモン、ビタミンDなどの栄養素が関与しており、骨型アルカリホスファターゼが異常値であるときは、これらを司る臓器のいずれかに何らかの病気が潜んでいる可能性が考えられます。また骨粗鬆症ではBAPなど骨形成マーカーと一緒に骨吸収マーカーを測定する場合が多いです。骨は形成と吸収のバランスが狂うと減ってしまい、骨粗鬆症になります。骨形成が低下しているのか骨吸収が増強しているのかをみて、適切な薬剤を検討することになります。

しかし、骨型アルカリホスファターゼの検査値のみでは、どの部位にどのような病気があるのか確定することは困難であり、ホルモン値などの血液検査、CTやMRI検査、骨シンチグラフィーなどの精密検査で病気を確定させる必要があります。

また、治療効果や病状を確認する目的で定期的に検査を行う場合、前回の検査値と比較して明らかな異常が見つかった場合には、治療方法の変更や治療の開始・再開などを検討する必要があります。

骨型アルカリホスファターゼ値に異常が見られる人は、骨の脆弱(ぜいじゃく)化によって骨に些細な外力がかかっただけで骨折することがあります。

医師の指示通りに治療や定期検査を続けていくのはもちろんのこと、日常生活のなかでは、カルシウムやビタミンDなど骨をつくるのに必要な栄養素を積極的に摂取し、適度な運動を心がけましょう。また、家庭内などの環境を整えて転倒を予防することも大切です。

本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。