インタビュー

脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)の検査―現状とその課題

脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)の検査―現状とその課題
高橋 浩一 先生

山王病院(東京都) 脳神経外科 部長

高橋 浩一 先生

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この記事の最終更新は2015年07月04日です。

脳脊髄液減少症低髄液圧症候群)」という病名を聞いたことはあるでしょうか? 日本ではあまり知られていない病気であり、この病気に関しては原因の解明から治療方針に至るまで、さまざまな議論がなされています。
脳脊髄液減少症にはどのような検査を行っていくのでしょうか? 長年にわたり脳脊髄液減少症の診療に携わってきた、山王病院脳神経外科副部長の高橋浩一先生にお話をお伺いしました。

髄液減少病態は、脳MRI・脊髄MRIなどにより評価可能です。具体的には以下のような所見を認めます。

  • びまん性硬膜増強効果(造影MRIによる)
  • 脳下垂
  • 高位円蓋部硬膜下腔/くも膜下腔の拡大
  • 硬膜下血腫
  • 脳室狭小化
  • 下垂体腫大
  • 頭蓋内静脈、静脈洞拡張
 
  • くも膜下腔外の液体貯留
  • 硬膜外液体貯留
  • 硬膜造影
  • 硬膜外静脈叢拡張

RI脳槽シンチグラフィーは、腰から針を刺して(腰椎穿刺)、RIを髄腔内に注入します。
経時的(経過する時間順)にガンマカメラ(放射線量の高低を色で確認できるカメラ)で全脊椎を撮影する事により、RIを介して髄液の流れをみる事ができます。この作用を利用して、脊髄硬膜からRIが漏出しているかが、確認されます。

代表的な所見は、「髄液漏出像」という直接所見です。またRI脳槽シンチグラフィーでは、RI集積量を経時的に定量できるという利点があるため、RI残存率が算出できます。脳脊髄液減少症症例ではRI残存率の低下が認められます。これは間接所見と言われる重要な所見です。

腰から針を刺して(腰椎穿刺)、髄腔内に造影剤を注入後に頚椎から腰椎までのCTを撮影します。CTミエロはRI脳槽シンチグラフィーよりも空間分解能に優れており、髄液漏出像が鋭敏に描出されます。

山王病院では、近年、RI脳槽シンチグラフィーとCTミエロを同時に施行する場合が多くなっており、髄液漏出の状態、および程度が的確に把握でき、非常に有用な検査と考えています。

MRミエログラフィーでは造影剤を用いることなく検査をすることができるため、短時間で検査を終えることができます。特に特発性低髄液圧症候群では、MRミエログラフィーにて陽性所見を明確に描出できる可能性があります。一方で、実際の漏出部位を反映しない可能性があるなど、解決すべき問題があります。今後の発展に期待がかかる検査と言えるでしょう。

髄液減少病態の診断は、びまん性の硬膜増強効果をはじめ、RI脳槽シンチグラフィーやCTミエロによる髄液漏出像、MRミエロでの硬膜外の脳脊髄液貯留など、画像所見を中心とした研究により、診断能力が確実に進歩しています。
一方で、髄液漏出像の偽陽性、偽陰性の存在や、グレーゾーンの判断などの問題が残されています。画像評価に加え、ブラッドパッチ治療の模擬的な検査である硬膜外生理食塩水注入検査などを併用する事で、診断の精度が向上する可能性があります。

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