のうせきずいえきげんしょうしょう

脳脊髄液減少症

別名
低髄液圧症候群
最終更新日
2017年04月25日
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2017/04/25
掲載しました。

概要

脳脊髄液減少症とは、脳と脊髄(せきずい)の周りを満たす髄液が少なくなることにより、頭痛めまい・首の痛み・耳鳴り・視力低下・全身倦怠感などのさまざまな症状が現れる病気です。「低髄液圧症候群」と呼称される場合もあります。

頭蓋骨・脊柱の中におさまる脳や脊髄は、表面が髄膜(ずいまく)と呼ばれる膜によって覆われています。髄膜の一番外側には硬膜(こうまく)があり、その内側にはくも膜があります。脳・脊髄とくも膜の間はくも膜下腔と呼ばれる空間になっており、この空間は髄液(ずいえき)で満たされています。

髄液はくも膜下腔を循環しており、一定量が保たれるよう調整されています。しかし、何かしらの原因により髄液の量が減少すると、髄液の流れに変化が生じ、それと共に脳も動くようになります。脳が通常の位置よりも落ち込むようになり、頭痛が発生することを脳脊髄液減少症と呼びます。

原因

髄液が漏れ出る原因を特定できないこともありますが、軽微な外傷や交通事故などの強い外傷と関連が挙げられます。また、手術における麻酔手技のひとつとして腰椎穿刺(ようついせんし)と呼ばれるものがあります。これは、腰の骨に当たる腰椎から針を指し、脊髄周辺に麻酔薬を注入することで痛み止めの効果を期待する手技です。この手技によって髄液が漏れ出るきっかけをつくった結果、脳脊髄液減少症を発症することがあります。

症状

髄液が少なくなり脳が正常の位置からずれてしまった結果、脳の血管や硬膜が刺激され頭痛が誘発されます。特に、横になっているときよりも起立している状態のほうが、症状が強くでやすい傾向にあります。そのため、脳脊髄液減少症では、起立性頭痛が典型的な症状となります。また、頭痛以外にも、以下のようなさまざまな症状を伴うことがあります。

  • めまい
  • 首の痛み
  • 耳鳴り
  • 視力低下
  • 全身倦怠感

など

こうした症状は治療の効果が得られない場合には慢性的に持続することになり、脳脊髄液減少症のために精神的な苦痛を感じるケースもあるでしょう。

検査・診断

脳脊髄液減少症では、脊髄液の減少を観察することが重要です。脳や脊髄に対してMRI(磁気を使い、体の断面を写す検査)を実施することで、脊髄液の減少から生じる形態学的な変化を評価することが可能です。

また、髄液が漏出している像を直接的に評価するためには、RI(放射性同位元素)脳槽シンチグラフィーが有効です。漏出の原因となっている部位を同定することができると同時に、漏出を反映して髄液の量が低下していることも同時に評価することができます。そのほか、CTやMRIを応用した脊髄腔造影法(CTミエログラフィーまたはMRミエログラフィー)で髄液漏出像や硬膜外液体貯留像など陽性所見が認められることもありますが、画像診断で髄液漏出部を特定できることは比較的まれです。

治療

脳脊髄液減少症では、保存的な治療方法とブラッドパッチと呼ばれる治療方法が検討されます。脳脊髄減少症は、きっかけとなる外傷(事故や頭部打撲)などによって発症します。この際、安静を保ちつつ水分補給を十分に行うことで自然治癒を期待することがあります。保存的治療は、発症後、早期に行うと効果的です。

また、脳脊髄液減少症に対する有効な治療としてブラッドパッチと呼ばれるものがあります。正式には、硬膜外自家血注入療法(こうまくがいじかけつちゅうにゅうりょうほう)といわれます。ブラッドパッチでは、髄液が漏出している付近の硬膜外腔に針を挿入し血液を注入します。血液は固まる性質があるため、注入された血液が、髄液が漏出している部位を塞いでいくことを期待できます。

さまざまな病態を含む脳脊髄液減少症ですが、ブラッドパッチはいずれの病態に対しても、治療効果を期待することができるといわれています。ブラッドパッチは、2016年4月から保険診療として治療を受けることが可能となっています。

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