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病院における医療と経営の質向上を目指して-日本病院会の取り組み

病院における医療と経営の質向上を目指して-日本病院会の取り組み
堺 常雄 先生

株式会社日本病院共済会 代表取締役、日本病院会 前会長 、聖隷浜松病院 元総長

堺 常雄 先生

この記事の最終更新は2017年03月01日です。

堺常雄先生は、日本病院会会長と聖隷浜松病院総長という2つの立場から日本の医療と向かい合っておられます。

本記事では日本病院会の会長としての立場に焦点をあてて、日本病院会が持つ使命や医療に対する役割について伺いました。

 

※聖隷浜松病院における取り組みについて伺った記事はこちら

『聖隷浜松病院とやらまいか精神-堺常雄先生が取り組まれてきたこと』

堺常雄先生

日本病院会は1951年の創立以降、60年以上にわたり「日本のすべての病院の一致協力によって、病院の向上発展とその使命遂行とを図り、社会の福祉増進に寄与すること」を目的として活動してきました。

国民皆保険制度をはじめとする日本の医療は、世界的にも高く評価されています。しかし、団塊の世代が後期高齢者になり医療に対するニーズの激変が見込まれる2025年までに、時代に即した医療提供体制の変化が求められているため、日本の医療は大きく生まれ変わろうとしている時期といえるでしょう。

厚生労働省が発表する医療施設動態調査(平成28年1月末概算数)によると、2017年1月の時点で日本には8,471施設の病院があります。日本病院会の正会員はそのうち2,465施設、賛助会員は259施設にのぼるため、全国にある病院の30%近くが会員ということになります。

そして、会員として集う病院の性質も、急性期・慢性期、大規模・中規模・小規模、私立・公立など、実にさまざまです。そうした意味では、日本病院会に登録している病院の性格や関係性は、日本の病院の縮図に相当するといえるのかもしれません。

病院は病院ごとに異なる使命や機能があり、病院は医療の力で地域に貢献しています。公立病院には公立病院の、私立病院には私立病院ならではの機能や使命があります。これから先、日本の病院はそれぞれの違いを再認識して、共存共栄の道を探す必要があると考えています。

そして日本では、医師をはじめとする医療従事者と一般生活者の間に意識のギャップがあると言われて久しいです。比較的緊急性の低い方が大病院を受診することがあるなど、残念ながら病院機能も正しく理解されているとはいい難い状態です。

私は日本病院会の会長として、医療従事者と一般生活者の間にある意識のギャップを解消していきたいと考えています。

日本病院会ホームページ
日本病院会ホームページより

日本病院会では、医の倫理の確立と医療の質の向上を実現するため11の事業を行っています。

今後の病院の在り方を考えたとき、医師をはじめとする人材育成や病院経営に対する支援が重要になると考えています。

日本には総合診療の視点を持った医師が少ない

人材育成に力を入れる理由のひとつに、日本における総合診療の視点を持った医師の不足があります。総合診療とは特定の診療分野にとらわれることなく、全身やこころをトータルで診療することをいいます。

日本では、脳は脳外科といったように部位別、臓器別の知識を持っている医師は多いものの、患者さんの全身を診る総合診療の力が十分でないことから、医師の能力は片手落ちともいわれています。そのため、特定の分野に関する知識にとどまらず、患者さんをトータルで診る総合診療スキルの向上は、初期研修医制度が開始した現在でも大きな課題なのです。まず、各病院管理者が総合診療部門の必要性を認識し、育成する気概が必要です。

ベテラン医師の力を借りた総合診療スキル取得体制づくり

初期研修医制度や現状の総合診療医育成制度のみに限定せず、日本病院会でも総合診療スキルを持った医師の育成を考えています。

第一線で活躍されている医師は、長年の経験から総合診療的な視点を持ちあわせている方が多いです。そのため日本病院会では、ベテラン医師の力をお借りして独自の研修コースを構築し、専門分野と総合診療双方の知識を備えた医師の育成に貢献できればと考えています。

QIプロジェクトの実施

病院でおこなわれている診療の質把握と向上のため、患者満足度をはじめとする各種調査の実施と、結果のフィードバックを行っています。この調査結果に基づき、各病院が自分達のウィークポイントを客観的に認識し改善をはかることで、病院全体で医療の質向上をねらいます。

また、QIプロジェクト参加病院を対象にした勉強会を定期的に開催しており、ノウハウや成功事例の共有など積極的な交流も行っています。

参加病院数は回を重ねることに増加し、平成28年度では350病院が参加しています。

中小規模病院でも現行のDPC(包括医療費支払い制度)制度に対応できるよう、日本病院会では病院経営に対し、ITを駆使してマーケティングと経営分析のサポートをしています。

病院データの「見える化」事業

平成25年度からスタートした、全国の病院情報やアンケート等各種調査結果のクラウド化および運用や、中小規模病医院に対する経営支援システムがあります。独自のプロトコルによる病院経営指標を加えることで、病院経営や情報発信に対してエビデンスに基づいたサポートを行います。

また、レセプトデータを使用した病院の経営分析事業にも力を入れています。出来高算定の中小病院からレセプトデータを提出していただき日本病院会が分析し、結果を専用ページでフィードバックしています。またレセプトデータの分析以外にも、病院周辺地域における人口動態や患者数、医療資源の動向など病院運営に欠かせない情報も提供しているので、より実状に即した病院経営戦略を構築しやすくなります。

堺常雄先生

医療と経営の質は、車の両輪のような関係です。良質な医療を提供するためには、医療そのものと病院経営の質の向上が欠かせません。お預かりしたデータの分析結果をフィードバックするということは、各病院に対して「あなた達はここを改善したらもっとよくなりますよ」という、目標設定のようなものでもあります。

病院経営は院長だけの仕事と思われがちですが、決してそうではありません。医師や看護師をはじめ多くのスタッフが問題を共有し、目標を達成しようと同じ方向を向くことが欠かせません。

そして目標が達成されれば、現場のモチベーションアップにもつながります。努力して結果が出ればスタッフ達の自信になり、新たな目標に向かって進もうとする原動力になるのです。

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