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安心できる診療所を目指して――地域における診療所の役割

安心できる診療所を目指して――地域における診療所の役割
安崎 弘晃 先生

小谷医院 院長

安崎 弘晃 先生

この記事の最終更新は2017年03月16日です。

並木小磯診療所は、外来診療・訪問診療の両方を行っています。また、並木小磯診療所の近隣には横浜市立大学附属病院があり、お互いに連携をしながら患者さんの治療にあたっています。今回は、並木小磯診療所院長(取材当時)の安崎弘晃先生に、地域の診療所と大学病院のそれぞれの役割、訪問診療がこれから目指すべき姿を中心に、お話を伺いました。

地域の診療所と大学病院では、それぞれ特徴と役割が異なっています。

診療所では病気かどうか分からない状態や気になる症状があるなど、どんな不安でも気軽に相談していただくことが可能です。たとえば、なんとなく頭が痛いときや眠れないなどの不定愁訴(原因がはっきりしない体調不良が続く状態)が見られる患者さんでも診療してくれます。

診療所は患者さんと医師との距離が近く、些細なことでも相談しやすいため、医師との信頼関係が築きやすい環境でもあります。

また、地域の診療所は、患者さんのプライマリ・ケア(初期段階の診療)を行う場所でもあります。診療所で診られる病気の範囲には制限があるため、診療所で対応可能な病気なのか、大学病院等の総合病院での検査・治療が必要な重症の患者さんなのかを判断します。そして、必要に応じて大学病院への紹介状を作成し、患者さんと大学病院の橋渡しをする役割も担っています。

また地域の診療所は、さまざまな病気や高齢化に伴い通院できない患者さんの在宅医療の役割を担っています。在宅医療は医師が患者さん宅に伺い診療をすることで、おおまかに訪問診療と往診とに分かれています。

訪問診療と往診はしばしば混同されることがありますが、意味合いが異なります。訪問診療とは、あらかじめ立てた診療計画を基に、同意を得て定期的に居宅で診察や検査、投薬、療養上の指導などを行います。対して往診は患者さんの急な体調不良や病状変化の際に、患者さんやご家族からの要請に応じて、臨時的に行われる不定期な在宅医療のことを指します。

日本では高度成長期以降、病院で亡くなることが多くなっています。しかし、そのなかで、人生の最期を住み慣れた自宅で迎えたいという方が増えてきたことや、少子高齢化の進行に伴い医療費が増大してきたことから、医療費抑制のために国も在宅医療を推進しています。

訪問診療は、病院の入院生活ではなく自宅で療養をしたい方、末期がんなどで人生の最期を住み慣れた自宅で過ごしたい方に適しています。もちろん容体が悪化し、病院での療養が必要な場合は連携している総合病院や大学病院に速やかに連絡をし、治療を行ってもらいます。また、自宅で療養を続けたい方は最期まで自宅で診療を続けていきます。

訪問診療や往診を行っている診療所は年々増加傾向にありますが、まだまだ在宅医療を行っている医療機関は不足しています。

大学病院は診療において先進医療を提供するという役割を担っています。充実した最新の設備と豊富な数の専門医が在籍しているため、稀有な病気や重症度の高い患者さんを中心に診ることが、その役割となります。基本的に、受診するには診療所や一般の病院からの紹介状が必要です。

そして、大学病院では診療だけではなく、医学生・研修医の教育や研究も行っています。大学病院の医師は、その役割を担うため非常に忙しい生活を送っています。診療の合間に学生の講義やその準備に追われ、医師としての経験の浅い研修医や学生実習の指導も行っています。

さらに大学病院は研究機関でもあるので、今後の日本の医療を支えるために、診療が終わった後の夜間や休日なども利用し、日々研究に励んでいます。

また患者さんの人数も多いため、待ち時間が長くても診療時間は短いことが多く、患者さん一人ひとりと触れ合う時間が少ないぶん、関係性が希薄になってしまう場合もあります。

 

医者同士の握手

大学病院は、設備が整い多くの医師が在籍しているという安心感から、多数の患者さんが治療を望みます。当診療所を訪れる患者さんの一部にも、症状が軽く高度な医療は必要ないにもかかわらず、大学病院への紹介を希望される方がいらっしゃいます。

しかし、大学病院で治療を受けられる患者さんの数には限りがあります。そのため、それぞれの患者さんが必要に応じた場所で、適切な治療を受けられるために、紹介・逆紹介制度が重要になります。

紹介・逆紹介制度とは、大学病院と診療所で患者さんを紹介し合う制度のことです。診療所では、原則として大学病院での高度な治療が必要な患者さんにのみ紹介状を書きます。一方、大学病院は、紹介を受けて治療を行った患者さんの症状が落ち着いた段階で、地域の診療所に逆紹介という形で患者さんをお戻しします。

並木小磯診療所は横浜市立大学附属病院の近くに位置しており、私が以前勤務していた経緯もあるため、紹介や逆紹介を行うケースが多くあります。

当診療所と横浜市立大学附属病院がある横浜市金沢区では、紹介・逆紹介などの病診間の協力が日常的に行われています。

この地域は高齢化が進み、介護と医療の連携が必要不可欠となってきました。そのため、金沢区では、医療と介護の連携でもある地域包括ケアシステム(高齢者を支えるため、住まい・医療・介護・予防・生活支援を包括して提供する制度)に力を入れています。

当診療所の訪問診療でも、ケアマネジャー(介護支援専門員)とは頻繁に連絡を取り合い、患者さんについての情報交換や、もっとこうしたほうがよいといったアドバイスをするなどの連携を行っています。

 

笑顔のお年寄り

以前に比べると、訪問診療を選択される患者さんは増加しています。当診療所でも、1週間に1~2名ほど訪問診療を望む患者さんがいらっしゃいます。しかし現在でも、多くの患者さんは高度な設備と多数の医師がいるという安心感から、大学病院での入院療養を希望されます。

また、病状が回復したために病院側から訪問診療をすすめられても、その後の介護や在宅療養の不安から、療養型病院や介護施設を転々とされる患者さんも少なからずいらっしゃいます。そのため、私たちのような地域の診療所の外来や訪問診療も大学病院と同様に、患者さんが安心できる環境と医療を提供する必要があります。

安崎弘晃先生

患者さんの中には、ご本人が在宅医療を望んでいても、ご家族にかかる負担が大きいと考えて訪問診療に踏み切れない場合もあります。そのような場合、私たちが相談に乗り介護保険制度の仕組みをご説明するなど、少しでもご家族の負担を軽減させ、患者さんのご希望に添える方法を一緒になって考えます。

そのほかにも、一人ひとりの患者さんとの信頼関係を大切にするために、薬剤の効能や使用方法などをじっくりと時間をかけて説明するようにしています。病状が安定している患者さんとは、日常会話を楽しむこともあります。

また、患者さんだけではなく、そのご家族へのサポートも行っています。特に末期のがん患者さんのご家族は、がん患者さんのケアだけに集中してしまい、ご自身の心のケアをできていないケースもあります。そのため、ご家族の方々のお話を聞いたり、アドバイスをすることも私たちの仕事です。

当診療所は横浜市栄区の栄小磯診療所、横須賀市鴨居の小磯診療所と提携しており、3つの診療所が協力しながら訪問診療を行っています。そのため医師の数も多く、24時間365日いつでも患者さんのもとへ駆けつけられる体制を整えています。

“最期を迎える場所は病院”という考えは、まだまだ根強く残っています。しかし、訪問診療がご家族をサポートし、患者さんが安心して治療を受けられるとなれば、患者さんの選択肢の幅が広がり、もっと多くの方々に訪問診療を選択していただけると感じています。

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