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日本介護医療院協会設立記念シンポジウム 新たなモデル『介護医療院』の創設と展望(前編)

日本介護医療院協会設立記念シンポジウム 新たなモデル『介護医療院』の創設と展望(前編)
武久 洋三 先生

平成医療福祉グループ 代表

武久 洋三 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年05月10日です。

2018年4月2日、パレスホテル東京にて、日本介護医療院協会 設立記念シンポジウムが開催されました。本シンポジウムでは、「新たなモデル『介護医療院』の創設と展望」をテーマに、行政や医療界など多角的な視点からの意見が活発に交わされました。

本記事では、シンポジウム前半の様子をレポートします。

後編では、武久洋三先生の講演を中心に、シンポジウム後半の様子をレポートします。

2005年に「介護療養型医療施設」の廃止が決定され、2018年4月1日に、要介護者の新たな受け皿として「介護医療院」が創設されました。それに伴い、日本慢性期医療協会の会内組織として「日本介護医療院協会」を設立する運びとなりました。

「介護医療院」は素晴らしいアイディアです。介護医療院への転換は、療養病床の有効的な活用、また、特別養護老人ホームの新設の抑制にもつながるでしょう。

今後は、空いている病床と介護医療院をうまく併用し、医療と介護が融合した施設にしていくことが必要です。そこでは患者さんを看取る機会も増えますが、病院内には医師や看護師などが常駐しているため、迅速な対応が可能となるでしょう。

「介護医療院」を成功させるもさせないも、今日ここにいるみなさまのご協力次第です。今後とも、よろしくお願いいたします。

本日は、このような場をいただき感謝しています。介護医療院は「医療が住まいと生活を下支えするニューモデル」です。2018年4月1日に、介護医療院が設立されました。これから介護医療院は増えていくでしょう。そのなかで、介護療養型医療施設や医療型老人ホームなどが介護医療院へ転換するとき、何らかの変化が必要になるはずです。

現場に「賽は投げられた」のです。介護医療院の成功は、私たち事業者側がどのように答えを出していくかにかかっているといっても過言ではありません。日本介護医療院協会の役割は、さまざまな研修会を企画し、好事例モデルを世に示し、互いに切磋琢磨できる環境をつくることです。

これから一段と気持ちを引き締め、みなさまの叱咤激励をいただきながら当協会を運営していきたいと考えます。

厚生労働省医務技監の鈴木康裕先生より、行政の視点から「介護医療院」の創設と展望についての講演が行われました。

1990年から2010年までに、日本の高齢者(65歳以上)は急増しました。1)一方、国立社会保険・人口問題研究所によると、2060年までに労働人口(15〜64歳)は激減すると推測されています。2)

統計でみた平均的なライフサイクルでは、子どもの数は減少する一方で、平均寿命が延びることで引退後(おもに60〜65歳以降)の期間が長くなっています。

また、高齢者のひとり暮らし世帯が増加傾向にあります。

2006年の死亡者数は108万人で、うち65歳以上は90万人でした。3)高齢化とともに死亡者数は増加していくと推測される一方で、2030年を仮定した将来推計4)では医療機関の病床数は変化なしとされており、このまま何もしなければ、多くの人が「最期を迎える場所がない」という事態に陥ることが予想されます。

最期を迎える場所

終末期の療養場所に関する希望として、自宅で最期を迎えたい方の割合は6割以上おり、そのニーズの高さが伺えます。5)また、自宅または子どもや親族の家で療養したいと考える方は4割以上います。6)

しかし、在宅療養を推進するためには、以下の課題があります。

  • 介護する家族に負担がかかる
  • 症状が急変した際に迅速な対応が可能か
  • 症状が急変した際にすぐに入院できる病院があるか

高齢者が増加し、家庭の介護力が減っていくなかで、「独居の高齢者をどこで療養・介護するのか」という視点は、日本の医療における大きな課題です。

そして、今後増加が見込まれる「慢性期の医療・介護ニーズ」に対応するため、介護医療院が創設されました。介護医療院の機能とは、要介護者に対し「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供することです。

厚生労働省では、介護医療院の創設に向けて設置根拠などについて法整備を行いました。また、2017年度末で設置期限を迎える予定であった介護療養型医療施設については、その経過措置期間を6年間延長することとしました。2018年からの6年間で、介護療養型医療施設は順次、介護医療院へと転換していく見込みです。

介護医療院に関するスケジュール

日本医師会常任理事の鈴木邦彦(すずき くにひこ)先生より、日本の医療の課題や地域包括ケアシステムの構築についての講演が行われました。

高齢化の進展によって、必要とされる医療の内容は「病院完結型」から、患者さんを地域全体で治療し支える「地域完結型」に移行せざるを得ないでしょう。

そのような流れのなかで、医療システムについては変化が必要であり、医療・介護サービスの提供体制改革の実現が課題となっています。

2025年には、団魂の世代(1947〜1949年の第一次ベビーブームで生まれた世代)がすべて75歳以上になります。私たちは2025年に向けて、医療と介護の総合的な確保を行う必要があるのです。そのためには、効率的で効果的な医療提供体制と、地域包括ケアシステムを進めていかねばなりません。

2025年に向けて、高齢化の進展や地域医療構想による病床の機能分化・連携によって、在宅医療の需要は大きく増加すると予想されます。需要の増大に確実に対応するためには、都道府県・市区町村、関係団体が一体となって提供体制を構築していくことが必要です。

2014年の診療報酬改定では、「地域包括ケア病棟」が新設されました。

【地域包括ケア病棟の機能】

  • 急性期病院からの急性期後の受け入れ
  • 在宅療養・介護施設などからの急性憎悪の受け入れ
  • 在宅・生活復帰の支援

しかし、実のところ、地域包括ケア病棟では②在宅療養・介護施設などからの急性憎悪の受け入れは極めて少なく、リハビリテーションに代表される①急性期後の医療が主体となっています。

今後の超高齢化を踏まえれば、地域包括ケアのなかで患者さんの情報を共有し、急変時に24時間365日二次救急に対応する機能を持つ病院が必要です。また、退院後に安心して療養するために支援を行うような「地域の医療・介護連携を支援する病院」を地域ごとに整備することが不可欠となるでしょう。

日本医師会では「地域密着型中小病院・有床診療所」の役割が重要であると考えます。

地域密着型中小病院・有床診療所は、外来(かかりつけ医機能)と入院の機能を備え、在宅支援を行う病院を指します。

さらに、急性期大病院との連携や在宅支援のみならず、医師会への人材派遣、行政との連携、まちづくりなど、地域に人材を提供し連携をとっている病院については、診療報酬において評価すべきであると考えます。

地域密着型中小病院・有床診療所の役割

超高齢社会に対応するために、中小病院、有床診療所などの既存資源を有効的に活用し、時代に即した医療システムを構築していく必要があります。

そして、急性期病院から回復期病院、かかりつけ医への垂直連携ではなく、地域を包括したネットワークのなかで、訪問看護師やケアマネジャー、介護保険施設などを含めた水平連携を進めていくべきです。

医療の垂直連携から、水平連携へ

後編では、武久洋三先生の講演を中心に、シンポジウム後半の様子をレポートします。

 

出典)

1)総務省「国勢調査」および「人口推計」1990年〜2010年隔年10月1日人口
2)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計):出生中位推計」
3)厚生労働省「人口動態統計」
4)国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料(2006年版)」
5)厚生労働省「終末期医療に関する調査」1998年、2003年、2008年データ
6)内閣府「高齢者の健康に関する意識調査」2007年

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