2018年4月2日、パレスホテル東京にて、日本介護医療院協会 設立記念シンポジウムが開催されました。本シンポジウムでは、「新たなモデル『介護医療院』の創設と展望」をテーマに、行政や医療界など多角的な視点からの意見が活発に交わされました。
本記事では、日本慢性期医療協会会長の武久洋三(たけひさ ようぞう)先生の講演を中心に、シンポジウム後半の様子をレポートします。
前編では、シンポジウム前半の様子をレポートしています。
日本慢性期医療協会会長の武久洋三先生より、介護医療院の創設と展望について講演が行われました。
現在、日本では数多くの病院病床が空いている一方で、入院している方の多くが後期高齢者であるといわれています。まさしく、日本の医療に異常な事態が起こっているのです。
「介護医療院」というアイディアは素晴らしいと思います。なぜなら、空床の有効活用と、特別養護老人ホームの新設の抑制に寄与する可能性があるからです。これからの医療で、介護医療院は重要な役割を担っていくでしょう。
私自身の役割は、日本介護医療院協会をサポートすることです。そこで今日は淡路島を例にあげ、介護・医療の現状と介護医療院の可能性についてお伝えします。
淡路島は、瀬戸内海の東部に位置する、瀬戸内海最大の島です。兵庫県に属し、北から淡路市、洲本市、南あわじ市の3市で区分されます。
淡路島の高齢化率は34.0%(2015年データ)で、全国の高齢化率26.6%(同年データ)に比べて圧倒的に高い水準を示しています。1)
高齢化率が高い状態が続くとしても、高齢者の数が増えるとは限りません。淡路島の人口は2000年に16万人でしたが、2015年には13.6万人に減少しました。1)全体的に人口が減少していくなかで、高齢者の数も減っていくと考えられます。
このような傾向は、地方の特徴でもあります。
淡路島では、高齢者のほとんどは自宅に住んでいます。高齢者のみで構成されたいわゆる「老・老介護世帯」や、独居世帯が急増しています。
淡路島には鉄道が通っておらず、バスの本数が少ないため、患者さんの「足」がない状況が多数生まれています。また、認知症と診断された場合には車を運転することが困難になり、平野部がほとんどない淡路島を自転車で移動することも難しく、病気になってもなかなか病院に行けないというケースがみられます。
訪問サービスなどを活用して、自宅で療養できることが理想的ではあります。しかし、都市部と異なり、在宅療養を支える診療所の医師が高齢化している現状があります。
介護医療院には以下の利点があります。介護医療院を活用・展開することで、淡路島の現状を打開できる可能性があると考えます。
<介護医療院の利点>
医療法人社団淡路平成会 東浦平成病院の実例をご紹介します。
東浦平成病院は、1999年に開院し、回復期リハビリテーション病棟、障害者施設等一般病棟、医療療養病棟を含む239床を備えた病院です。非常勤を含め、合計422名の職員が働いています。(2018年現在)将来的には、40床を介護医療院に転換する予定です。
これからの慢性期病院は、療養病床だけでは生き残れません。目指すべき姿は、外来、デイケア、訪問診療など幅広い機能を備えた「慢性期多機能型病院」です。
慢性期病院は、自ら入院患者さんを確保していく必要があります。他力本願は通用しないフェーズに差し掛かっているのです。これは、今回の診療報酬改定における重要なメッセージであると考えます。
今後、病院での治療の必要がない患者さんは早期退院し、施設入所者・在宅療養患者さんはある程度の医療ケアが必要となるでしょう。そして、施設入所者や在宅療養患者さんの急変時には、地域包括ケアを有する「地域多機能病院」で受け入れることになります。よって、慢性期病院も地域包括ケア病棟を持つ必要があると考えます。逆に、本当の急性期病院は、地域包括ケア病棟を持つべきではないともいえます。
医療の後に介護があり、介護の後に医療が必要であるように、医療と介護は密接にかかわっています。「地域の医療系でない介護施設(福祉施設)といかに協力するのか」が、今後の課題です。地域内の医療と介護の連携が非常に重要であると考えます。
老健(介護老人保健施設)*はベッドの回転率が徐々に悪化すると予想されており、厳しい状況にあります。老健は、基本的に在宅復帰を目的としており、在宅復帰率やベッド回転率、重介護者の利用割合などの要件によって「従来型」と「在宅強化型」にわかれます。
老健(介護老人保健施設):介護を必要とする高齢者の自立を支援し、家庭へ復帰をさせることを目標として、医師による医学的管理のもと、看護・介護といったケア、作業療法士や理学療法士等によるリハビリテーション、栄養管理・食事・入浴などの日常サービスを併せて提供する施設
老健の算定区分(事業所規模を図る区分)にかかるチェック項目には、以下の通りです。
老健はこれらのチェック項目をクリアし、診療報酬改定後も減算にならないよう対策することが必要です。よって、老健の将来としては、以下の点が求められると考えられます。
今回は淡路島を例に、現状や介護医療院の展望をご紹介しました。全国にある同条件の病院が今後どのように展開していくかの参考になれば幸いです。
病院を運営するときには、まず利用者を第一に考えること。これが、医療・介護産業はサービス業たる所以です。これから、介護医療院がよい施設となるよう、みなで一丸となって頑張っていきましょう。
日本慢性期医療協会副会長/衆議院議員の安藤高夫先生の講演が行われました。
私が政治家になろうと思ったきっかけは「療養病床問題」でした。東京都の療養病床に関する責任者を務めていた頃に介護療養の廃止が決定され、非常に驚きました。
それから苦節10年、周囲に応援していただきながらついに立候補、2017年に衆議院議員に当選することができました。
「選挙区はどこ?」と聞かれたら「療養”病党”です」と答えています。
2017年11月24日、衆議院・厚生労働委員会にて質問の機会をいただき、以下の項目についてお話ししました。
介護医療院は、医療と介護をつなぐ今の時代だからこそ、強く求められています。この仕組みが地域にとってよりよく活用されるためには、病院など各事業者の意識が重要です。
<介護医療院について検討していきたい事項>
日本介護医療院協会会長の江澤和彦先生の講演が行われました。
介護医療院は、住まいと生活を医療が支える新たなモデルとして創設されました。介護保険上の介護保険施設(生活機能)と医療法上の医療提供施設(長期療養)という2つの機能を備えます。また、以下の通りⅠ型とⅡ型に分類します。
介護医療院は、以下のサービスを提供する役割を持ちます。
介護医療院では、以下の通り生活施設の役割を持ちます。
好き好んで病気や障害をきたしている方はいるはずもありません。誰もが、その方にとって本来の「普通の生活」を望んでいます。その生活の実現はすなわち「尊厳の保障」であり、それは私たちの役割だと考えています。
シンポジウムの最後には、質疑応答の時間が設けられ、活発な議論が交わされました。
シンポジウムの後には、日本介護医療院協会の設立記念祝賀会が開催されました。
祝賀会には、関係団体の代表者らが多数出席し、加藤勝信厚生労働相や日本医師会会長の横倉義武氏、羽生田俊参議院議員、自見はなこ参議院議員、全日本病院協会会長の猪口雄二氏らより祝辞が述べられました。
出典)
1)日本医師会「JMAP地域医療情報システム」
平成医療福祉グループ 代表
本ページにおける情報は、医師本人の申告に基づいて掲載しております。内容については弊社においても可能な限り配慮しておりますが、最新の情報については公開情報等をご確認いただき、またご自身でお問い合わせいただきますようお願いします。
なお、弊社はいかなる場合にも、掲載された情報の誤り、不正確等にもとづく損害に対して責任を負わないものとします。
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。