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第68回日本病院学会 日本病院会会長講演「社会環境の激変と医療制度改革の荒波を受ける病院の未来」

第68回日本病院学会 日本病院会会長講演「社会環境の激変と医療制度改革の荒波を受ける病院の未来」
相澤 孝夫 先生

一般社団法人 日本病院会 会長

相澤 孝夫 先生

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この記事の最終更新は2018年08月23日です。

2018年6月28日(木)〜29日(金)、石川県立音楽堂にて第68回日本病院学会が開催されました。本学会のテーマは「医療制度ルネサンス―未来を見据え、今を創新する―」と題され、今後の医療について多くの講演やシンポジウムが行われました。

本記事では、日本病院会会長を務める相澤孝夫先生による日本病院会会長講演「社会環境の激変と医療制度改革の荒波を受ける病院の未来」の内容をお伝えします。

高齢化や少子化、社会保障費の増加、技術革新など社会環境は大きく変わり、疾病構造も変化しています。そのようななか、65歳以上、特に後期高齢者と呼ばれる75歳以上の入院患者数は増えてきています。一方で、病気によって差はあるものの、65歳以下の入院患者数は毎年減っています。

高齢になればなるほど、軽症でも入院せざるを得ない人が増加することを頭に置いて、これからの設計をしなければなりません。高齢者が起こしやすい病気には、肺炎心不全、脳血管障害、骨折などがあります。これらの病気は、基本的にそれほど重症ではなく中等症から軽症の病気です。75歳以上の高齢者の在院日数は年々減少し、入院医療需要も減少している一方、介護の需要はどんどん増え続けています。

つまり、新入院患者さんが増えても在院日数が減れば、入院医療需要率は減るということです。今まさにこの現象が起こっており、今後どうなるのかを考える必要があります。

政府の社会保障を中心とした歳出改革を、頭に置いておかねばなりません。2018年5月に政府が発表した「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」によると、2040年には、現状投影で93〜95兆円の医療・介護給付費が必要になると試算されています。これまで財源は、診療報酬や薬価を減らしてなんとか確保していましたが、今後非常に厳しくなってくることも考える必要があります。

2025年は、団塊の世代が75歳になる年で医療・介護需要の最大化が見込まれます。これまで通りの医療のあり方では、体制を継続できません。

急性期から回復期、慢性期まで、患者さんの状態に見合った病床で、状態にふさわしい医療が受けられなければなりません。このような医療サービスを受けられる体制を作る必要があります。

地域医療構想には、病床機能報告制度というものがあります。病棟が担う医療機能を、高度急性期・急性期・回復期・慢性期から1つ選択して都道府県に報告するものです。しかし、実際の病棟には、さまざまな病期の患者さんが入院しています。

病床機能報告で得た医療機能別病棟ごとの病床数の和と、地域医療構想で掲げられた2025年の必要病床数をすり合わせていくのは、適切ではないと思います。

医療需要の変化は地域によって異なります。現在の医療需要の実測値と、人口構造の変化に合わせた2025年の医療需要の推計値を比べて、地域ごとに対策を講じるべきではないでしょうか。

本来「構想」とは、数値を示すことではなく、どのような姿に持っていくのかを示すことのはずです。しかし、現在はこのように、単に病棟機能と病巣数を中心に議論されています。

地域包括ケアシステムの中では、地域密着型病院こそがこれからの医療の鍵になると考えます。

75歳以上の方が多くなるにつれ、軽症急性期の方や、急性期と回復期の中間にいる方が増えます。このような方をどのように診ていけば、住民の幸せにつながるのでしょうか。

基幹型病院が急性期の中等症まで診て、地域密着型病院は急性期の中等症、軽症から回復期まで、あるいは軽症から療養まで診る。私は、このように地域の事情に応じて、柔軟な形で患者さんを診れる地域密着型病院を急いで充実させることが極めて大事だと思います。

各病院が役割分担をして、病院全体で「地域住民の健康を守っていくんだ」という思いで取り組んでいく必要があります。

病院経営とは、病院が目指す医療を明確にして、それを実現できるように組織の管理や運営を行うことです。その際には、医療・病院の質と経営の質の両立が大事です。しかし、病院経営は一般の企業と比べ、複雑性や困難性をはらむ極めて難しいものです。

現状では、マネジメント力の軽視や、明らかなヒエラルキーの存在など、変えなければならないことが多数あります。これからは社会の変化に合わせて、病院・業務中心の経営戦略から、患者・顧客中心の経営戦略に経営革新をしていかねばなりません。

病院を活性化するためには、医療・介護で働くプロフェッショナルに働き続けたいと思ってもらえる魅力をつくる必要があります。適正な処遇に加えて、使命感・成長感・貢献感が得られる組織を作れば、みんな気持ちよく、よりよい仕事ができます。その結果、労働生産性が高まるはずです。

マネジメント改革を視野に、組織と人財のマネジメントがいかに大事かもう一度見直していただきたいと思います。人事や組織の制度が変わらなければ、組織は崩壊します。経営には、変化に適応して自ら変化を創っていくことが大事です。

目指す医療を達成するためには、提供する医療の質と病院の質が高まるよう、マネジメントと病院への信頼の創造が必要です。また、生産性を高めて経営が継続できるようにしなければなりません。

繰り返しになりますが、今の病院に求められていることは、医療の質と病院の質及び経営の質をきちんとマネジメントしていくことです。この重要性を皆さまと分かち合い、これから共に勉強していきたいと思います。

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