疾患啓発(スポンサード)

転移性脳腫瘍に対する定位放射線治療(ガンマナイフ、ノバリス)の具体的な流れ

転移性脳腫瘍に対する定位放射線治療(ガンマナイフ、ノバリス)の具体的な流れ
光田 幸彦 先生

医療法人社団浅ノ川 浅ノ川総合病院 脳神経外科部長、定位放射線外科センター長

光田 幸彦 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

転移性脳腫瘍にピンポイントで放射線を照射する定位放射線照射は、ガンマナイフを用いる方法とノバリスを用いる方法に大きく分けられます。それぞれの治療効果に大きな差はありませんが、適応される腫瘍の大きさや形、事前準備の方法などが少しずつ異なってきます。記事1『転移性脳腫瘍を治療するガンマナイフやノバリスの適応基準とは?』に引き続き、本記事ではガンマナイフとノバリスの実際の治療の流れについてご紹介します。双方の特徴を生かして幅広く転移性脳腫瘍の治療を行う浅ノ川総合病院脳神経外科部長の光田幸彦先生にお話しいただきました。

浅ノ川総合病院におけるガンマナイフ治療の流れ

かかりつけ医や地域連携部からの連絡~受診

当院のガンマナイフ治療は予約制です。通常、お住まいの地域医療機関または当院の地域連携部から患者さんに関する情報提供を受けてから、2週間以内の治療実施を目標に予定を立てていきます(緊急性が高い場合はそれ以前に治療を行うこともあります)。

情報提供書を確認し、紹介された患者さんの病気に対するガンマナイフの有効性、適切な治療時期などを検討し、ガンマナイフが適応されると判断できる場合には治療日程を決定します。記事1『転移性脳腫瘍を治療する定位放射線照射(ガンマナイフ、ノバリス)の適応基準とは?』でもご紹介した通り、ガンマナイフは基本的に2泊3日の入院期間を設けています。

1日目 治療内容の説明~入院、MRI検査

初日は原則、午前中に外来にお越しいただき、担当医が動画をお見せしながらガンマナイフ治療の流れをご説明します。その後、現時点での腫瘍の大きさ・位置・数の変動や出血の有無を確認するためにMRI検査を実施します。

2日目 ガンマナイフ治療の実施

放射線照射のための準備として、局所麻酔下で額(おでこ)2か所、後頭部2か所にピンを刺し、患者さんの頭部にフレームを装着します。フレーム装着が完了したら、再びMRI検査などを行い、脳の状態を最終確認します。

ガンマナイフに用いるフレーム
ガンマナイフに用いるフレーム

検査終了後、患者さんにはいったん病室で待機していただき、その間に専任の放射線技師と医師が線量計画(放射線を照射する量・位置)を作成します。計画作成後、治療台に患者さんの頭部を固定して照射を開始します。全自動で作動するため、患者さんは安静にしているだけで照射が終了します。

治療にかかる時間は平均約3時間で、痛みを感じることはありません。

3日目 退院~経過観察

退院後は通常通り生活していただけます。また、3~6か月ごとに外来で経過観察を行い、再発や転移が起こっていないか入念に確認します。

専任の放射線技師による定位放射線治療計画の作成

当院におけるガンマナイフの治療計画は、医学物理士という専門的な資格を持つ放射線技師が専任で対応しています。医学物理士とは、放射線治療や放射線診断の先導的役割を担う存在であると、一般財団法人日本医学物理士認定機構が承認した者を指します。当院には2019年2月現在、放射線治療を正しく安全に行うために数名の医学物理士が在籍し、脳神経外科医と連携しながら綿密な治療計画を立てています。

浅ノ川総合病院におけるガンマナイフの特徴

浅ノ川総合病院で使用しているガンマナイフ
浅ノ川総合病院で使用しているガンマナイフ

当院では1997年7月よりガンマナイフを導入していますが、2018年10月にはバージョンアップしたガンマナイフとの入れ替えを行いました。今回設置したガンマナイフの最大の特徴は、治療時間の短縮と患者さんの負担の軽減です。

これまでのガンマナイフでは、複数の腫瘍を治療する場合、1つ照射が終わるごとに患者さんに体位を変えていただきながら頭部の位置調整をしなければなりませんでした。今回導入したガンマナイフの場合、全自動で照射が行われるため、患者さんが何度も体を動かす必要がありません。位置調整の時間がないぶん、治療時間も削減されました。

【そのほかの特徴】

  • 位置精度の向上による正常組織への被ばくの低減
  • 複雑な形状の腫瘍にも対応

浅ノ川総合病院におけるノバリス治療の流れ

外来受診~マスクシステムの作製

ガンマナイフと同様、紹介を受けた患者さんに外来を受診していただき、動画を用いてノバリス治療の流れをご説明します。オリエンテーション終了後、20分ほどかけて患者さんの頭部を固定するためのマスクシステム(固定具)を作製します。

CT・MRI検査、PET検査

固定具が完成したら、患者さんにマスクシステムを装着していただいた状態で、CT検査・MRI検査の両方を実施します。CT検査の結果にMRI検査の結果を融合させて二重の確認を取ることで、より誤差が生じないようにするためです。また、骨や血管が複雑に入り組んでいる頭蓋底への転移性脳腫瘍など、腫瘍の輪郭の境界線が不明瞭な場合は、追加でPET検査を行うこともあります。

治療計画の作成と検証

CTやMRIでの撮影画像をもとに、数日かけて脳神経外科医が治療計画を作成します。ガンマナイフに比べて治療計画の作成時間が長い理由は、ノバリスが3cmを超える巨大な転移性脳腫瘍への分割照射に適応される治療法であることから、複雑な形をした腫瘍に放射線をあてることが多いためです。脳内でも特に放射線に弱い視神経や聴神経、脳幹などには、できる限り放射線を照射しないように工夫しなければなりませんが、複雑な形の腫瘍に照射する場合、境界線の見極めが非常に難しくなります。このため、当院では医学物理士が丁寧に治療計画の精度検証を行い、複雑な腫瘍に対しても正しい位置・量で放射線を照射できるように取り組んでいます。

治療計画が完成したら、実際の治療を開始します。

ノバリス治療~経過観察

浅ノ川総合病院で使用しているノバリス
浅ノ川総合病院で使用しているノバリス

1日15分程度の照射を、決められた治療期間毎日実施します。期間は照射回数によって異なり、たとえば腫瘍が小さく1回照射であれば5日、分割照射が必要な場合は7日~14日かかることもあります。また、ご希望に応じて外来での治療も可能です。実際に当院の患者さんの中には、朝早い時間に来院して治療を受けてから仕事に向かわれる方や、退社後病院に立ち寄って治療を受け、そのまま帰宅される方もおられます。

治療終了後はガンマナイフと同様、定期外来受診をしながら経過をみていきます。

これからの定位放射線照射―光田幸彦先生からのメッセージ

光田先生

これまでご紹介してきたガンマナイフやノバリスのように、現在は、体の負担が少ない放射線治療法が主流になってきています。昨今の放射線治療機器の進歩は目覚ましく、今後も定位放射線照射は進歩を遂げていくと予測します。照射精度が向上し、正常組織への照射をさらに回避できるようになれば、より多くの患者さんを救うことができるでしょう。

放射線治療における「ほかに治療法のない病気への最終手段」「被ばくのダメージが大きくつらい治療」など、かつてのイメージは払しょくされつつあります。手術で物理的に手の届かない部分にも、放射線であれば容易に到達できますし、定位放射線照射には髪が抜け落ちたり、嘔吐を繰り返したりするよう副作用もほとんどありません。定位放射線照射は安全で侵襲性の低い治療法であるということを、多くの方に知っていただきたいと考えます。

最後になりますが、がんが脳に転移してしまっても、どうかあきらめないでください。ガンマナイフやノバリスのように、患者さんに負担をかけずに転移性脳腫瘍を治療できる方法があります。少しでも不安なことがある場合、地域の医療機関や当院の地域連携部までご相談ください。