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チームで総合的な支援を-治療と仕事の両立を支援する石川産業保健総合支援センターの取り組み

チームで総合的な支援を-治療と仕事の両立を支援する石川産業保健総合支援センターの取り組み
小山 善子 先生

石川産業保健総合支援センター 所長

小山 善子 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年07月01日です。

石川産業保健総合支援センターは、働く人たちの健康を確保するために、産業保健に関する研修の開催や相談の対応など、さまざまな取り組みを行っています。同センターの活動のひとつが「治療と仕事の両立支援」です。

同センターでは、病院と連携を行いながらチームを組んで両立支援を行っています。また、患者さん(労働者)のみならず、企業に対しても、総合的な支援を行っています。今回は、石川産業保健総合支援センター 所長である小山 善子先生に、同センターの両立支援の取り組みについてお話しいただきました。

私たち石川産業保健総合支援センターでは、働く人たちの健康を確保するために、さまざまな支援を行っています。たとえば、産業医、保健師、看護師、衛生管理者をはじめとする事業主、人事労務担当者などに対して、研修会を行ったり相談に応じたりしています。以下は、当センターの主な業務内容です。

【石川産業保健総合支援センターの主な活動内容】

  • 産業医、保健師、看護師、衛生管理者など産業保健関係者に対する専門的研修
  • 産業保健関係者からの専門的な相談への対応
  • メンタルヘルス対策の個別訪問の支援
  • 産業保健に関する図書・測定機器の貸出
  • 治療と仕事の両立支援
  • 産業保健に関する情報提供・広報啓発
  • 企業・労働者に対する啓発セミナーの開催

私が精神科医ということもあり、設立当初から、当センターではメンタルヘルス対策に積極的に取り組んできました。たとえば、メンタルヘルスに関する相談窓口として「働く人のこころの相談室」を設置し、メンタルヘルス不調の相談にも積極的に対応してきました。

当センターがメンタルヘルス対策に取り組み始めた頃から、職場のストレスで悩む方が増加傾向にあるといわれていました。その後、産業界が下向きになったことをきっかけに自殺者が増加した背景もあり、社会全体でメンタルヘルス不調への対策に注力するようになったのです。

たとえば、近年ではストレスチェック制度が設けられています。ストレスチェック制度では、年1回定期的に労働者のストレスチェック検査を行い、ストレスの蓄積の状態を労働者自らに把握してもらいセルフケアに努めてもらうことを目的としています。

このように社会全体でメンタルヘルス対策に注力するようになった背景もあり、当センターでは、現在でもメンタルヘルス対策に積極的に取り組んでいます。

記事2『企業に対する治療と仕事の両立支援とは? 石川産業保健総合支援センターの取り組み』で詳しくお話ししますが、メンタルヘルス不調の患者さんの治療と仕事の両立支援も行っています。

上記でご紹介したように、当センターが行っている事業のひとつが「治療と仕事の両立支援」です。電話や面談によって、がんなどの病気の治療を受けている患者さん(労働者)のさまざまな相談に応じています。たとえば、両立を行ううえでの不安についてお伺いしたり、雇用問題への疑問などにお答えしたりしています。

また、両立支援の専門家である両立支援促進員が、患者さんと企業の間に入り両立に向けた計画を立てるお手伝いをする個別調整支援を行うこともあります。なお、この個別調整支援は、患者さんからの申し出のみならず、主治医の診断書が提出されていれば職場の担当者や産業保健スタッフからの申し出によっても実施することができます。

当センターは、いわば「なんでも屋」であると思っています。自分たちで解決することができない課題があったとしても、労働局や病院と連携を行いながら、チームを組んで総合的な支援を行います。

治療と仕事の両立を支援する際にも、労働者本人だけを支援すればよいというわけではありません。労働者のみならず、ご家族や企業に対しても支援を行っていく必要があるでしょう。

治療と仕事の両立支援は、近年スタートしたばかりの取り組みであるため、両立支援があることを認識されていない方も少なくありません。当センターでは、両立支援を行っていることを皆さんに知っていただくために、まず、治療と仕事の両立支援の啓発活動を行っています。

たとえば、両立支援促進員が企業をまわり、両立を行う患者さん(労働者)を支援する必要性を伝えています。また、企業だけではなく、病院への啓発活動も行っており、病気だけではなく患者さん(労働者)の生活全体を見ることが大切であると伝えています。それは、患者さんと医師などの医療従事者が、病気や治療のみならず仕事や生活面についても話すことができるようになれば、よりよい両立につながると考えているからです。

このように、企業側、病院側、双方に対する啓発活動を行うことで、治療と仕事の両立を可能にする体制を築くことができると考えています。

当センターでは、定期的にいろいろなテーマで講演会を開催しています。両立支援に関する講演会では、たとえば、すでに両立支援を積極的に行っている企業に、両立の成功例についてお話しいただきました。

このような講演会などのイベント告知のポスターやパンフレットは、一般の企業や、病院の中で患者さんが集まるがんサロンなどにも置いていただいています。このようなはたらきかけを行ったためか、2019年2月に開催した両立支援に関するイベントには、100名以上の方にご参加いただきました。

また、地域をまわって両立支援について学ぶ研修会を開催しています。たとえば、ご参加いただく企業の関係者に、それぞれの事例を持ち寄っていただき、どうすればよいか、みなで検討するなどの取り組みを行っています。また、企業に勤める産業医の先生たちの研修も行っています。

私は、どんな病気でも、病気の治療にはご本人だけでなくご家族の協力が非常に大切だと考えています。そのため、ご家族にも病気をきちんと理解していただきたいと思っています。「病気を治療しながら仕事を継続することができる」とご家族にもご理解いただき、本人が両立を諦めることがないよう励ましていただくことも大切です。

また、がんの患者さんの中には、働き盛りの方も少なくありません。お子さんがいて、学校に通わせなくてはならないケースもあるでしょう。そのような場合にも患者さんやご家族が安心して生活することができるような対策を考えていかなければなりません。

両立を支援するためにさまざまな制度がありますが、ご本人やご家族が制度についてご存知ない場合も少なくありません。経済的な問題など、不安に思われることもあるでしょう。両立に対して疑問や不安があれば、一度当センターにご相談いただきたいと思います。

  • 石川産業保健総合支援センター 所長

    日本精神神経学会 精神科専門医・精神科指導医日本老年精神医学会 老年精神医学専門医・指導医日本認知症学会 認知症専門医・指導医日本医師会 認定産業医

    小山 善子 先生

    精神科の医師として、主に神経精神医学や老年精神医学を専門としている。2007年より独立行政法人労働者健康安全機構 石川産業保健総合支援センター所長として、労働者のメンタルヘルス不調や、治療と仕事の両立の問題などに取り組んでいる。

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