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企業に対する治療と仕事の両立支援とは? 石川産業保健総合支援センターの取り組み

企業に対する治療と仕事の両立支援とは? 石川産業保健総合支援センターの取り組み
小山 善子 先生

石川産業保健総合支援センター 所長

小山 善子 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年07月01日です。

石川産業保健総合支援センターは、働く人たちの健康を確保するために産業保健に関する研修の実施や相談の対応など、さまざまな取り組みを行っています。同センターが注力する活動のひとつが「治療と仕事の両立支援」です。

同センターは、両立を目指す患者さん(労働者)のみならず、患者さんが属する企業に対しても支援を行っています。今回は、石川産業保健総合支援センター 所長である小山 善子先生に、同センターの企業に対する両立支援の取り組みについてお話しいただきました。

当センターが位置する石川県は、従業員50人未満の中小企業が多数を占めます。一般的に、規模の小さな企業であるほど、労働力の不足が課題となるでしょう。たとえば、患者さん(労働者)が治療のために休業する場合、労働力を補う人材の採用がスムーズに進まずに、困ることもあるかもしれません。

しかし、私が知る限り、このような中小企業の中には、従業員を家族同然に思うような会社もあれば、「病気になったときはお互いさま」という思いのもと従業員を支援する会社もあります。

企業にとって、働き盛りの世代は大切な労働力だと思います。失うことは大きなデメリットになるのではないでしょうか。病気の治療のためにお休みすることがあったとしても、治療が終わればできる限り仕事に復帰していただきたいですし、企業側もできる限り、患者さん(労働者)を受け入れていただきたいと思っています。企業を補助する制度などを上手に活用しながら、患者さんをサポートしてください。

患者さん(労働者)を受け入れる気持ちはあっても、「具体的にどのように対応したらよいのか分からない」という企業もあると思います。たとえば、化学療法を受けているがんの患者さんであれば、副作用が現れるケースもあります。出社時は元気で問題がなかったとしても、途中で体調が悪くなってしまうことがあれば、企業としてもどのように対応したらよいのか分からなくなってしまう場合もあるでしょう。

このように対応に困る場合にも、当センターで相談に応じることが可能です。たとえば、企業側が労働者の主治医に直接状態を尋ねることは難しいでしょう。このような場合にも、当センターでは、両立支援促進員や両立支援コーディネーターを介して、対応の相談に応じています。

当センターが位置する石川県では、金沢市を中心とした都市部と周辺の地方に、医療や福祉の充実度、仕事内容などに関して地域差があります。たとえば、過疎化が進行している地方では、都市部と比べて企業が少ないため仕事の選択肢が少ないのです。

また、企業と一言でいっても、規模や内容、考え方、雰囲気などはそれぞれ異なります。それぞれの企業に対して適切な対応、相談支援ができることが私たちセンターの役割であると考えています。今後もひとつひとつの企業と向き合い、その企業に適した丁寧な支援を行っていきたいと考えています。

記事1『チームで総合的な支援を-治療と仕事の両立を支援する石川産業保健総合支援センターの取り組み』でお話ししたように、当センターはメンタルヘルス対策に注力しており、メンタルヘルス不調によって休業される患者さん(労働者)の治療と仕事の両立支援も行っています。

たとえば、当センターでは、各企業に対して「心の健康づくり計画」を作成するよう指導しています。また、休業された患者さんの復職を目的として作成される復職プログラムの作成支援についても行っています。企業を訪問し、メンタル不調によって休業された患者さん(労働者)の復職計画を一緒に作成するのです。メンタル不調が改善したとしても、復職がスムーズにいかず、復職後に再発してしまい会社を休んでしまうケースもあるからです。

当センターでは、復職プログラムを各企業に作成していただいてメンタルヘルス対策を進めていただきたいと考えています。メンタルヘルス対策に取り組む企業は増えてはいますが、今後はよりいっそう、取り組む企業を増やしていくことを目指しています。

復職プログラムではどんなことをするの? うつ病の患者さんを例に

うつ病を発症した方の中には、病気を理由に仕事を辞められる方も少なくないといわれています。そのため、きちんと治療を受けていただき、円滑に職場復帰ができるように職場復帰支援プログラムの策定をすすめています。

仕事をする労働者

職場復帰にあたっては、職場復帰支援プログラムに基づき、その方に合わせた柔軟な対応、具体的な職場復帰プラン作成を支援します。たとえば、仕事に復帰した直後は、すぐに休業前と同じように働くことができるわけではありません。はじめは時間を短縮して働いたり、負担の少ない仕事内容に調整したりといったことを行い、徐々に復帰前の仕事に戻していきます。

段階的なプログラムによって徐々に仕事に慣らしていき、2〜3か月程度をかけて元の通常勤務に戻すようなやり方がスムーズな復職につながると考えています。

小山 善子先生

「治療と仕事の両立支援」は、現状ではがんの患者さんが多いですが、今後は、高血圧糖尿病の患者さんなど、支援の対象を広げていきたいと考えています。患者さん(労働者)が属する企業には、きちんと病気や治療について理解していただきたいと思っています。そのうえで、病気を抱えていたとしても、その人なりの能力を発揮できるような職場づくりに取り組んでいただきたいのです。

私は、人が何よりの財産であると信じています。企業にも、人を大切にする職場づくりを行ってほしいと思っています。当センターは、治療と仕事の両立に取り組む労働者が属する企業に対しても、さまざまな支援を行っています。両立に関して困ったことがあれば、どんなことであっても気軽に相談してください。

  • 石川産業保健総合支援センター 所長

    日本精神神経学会 精神科専門医・精神科指導医日本老年精神医学会 老年精神医学専門医・指導医日本認知症学会 認知症専門医・指導医日本医師会 認定産業医

    小山 善子 先生

    精神科の医師として、主に神経精神医学や老年精神医学を専門としている。2007年より独立行政法人労働者健康安全機構 石川産業保健総合支援センター所長として、労働者のメンタルヘルス不調や、治療と仕事の両立の問題などに取り組んでいる。

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