概要
ショイエルマン病とは、背骨が強く曲がってしまう病気で、思春期後弯症と呼ばれます。1920年代にデンマークのHolger Scheuermann医師によって初めて報告されたことから、この病名がつけられました。日本人ではまれな病気であると考えられています。
ショイエルマン病は、10歳前後の思春期において発症することが多く、背骨が徐々に曲がるようになります。無治療のまま放置すると過度に背骨が曲がり、背中の痛みが生じたり日常動作が制限されたりします。
理学療法に加えて装具の着用、外科的な治療などが検討されます。早期に治療を行うことでより高い効果を期待できる反面、すべての患者さんが満足のいく医療を受けているとはいい難い現状もあります。そのため、今後の研究発展が強く望まれています。
原因
背骨は、上から順に、頚椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎の5つの部位に大きく分けることができます。各部位を横から観察するとまっすぐではなく、滑らかな曲線を描くように一定の角度を保っています。すなわち、頸椎や腰椎は胸側に向かって凸を示すようになっていますが、胸椎は逆に背中に向かってカーブを描きます。
ショイエルマン病は、胸椎において変化をみることが多く、猫背が強調される形で背骨が変形してしまいます。背中を構成する骨は椎体と呼ばれていますが、成長過程において軟骨が均一に骨へと変化することが重要です。ショイエルマン病は、軟骨から骨への均一な変化がうまくいかなくなってしまい、部分部分がいびつな形になることで発症します。
しかし、なぜ骨の成長過程が均一に起こらなくなってしまうのかについては分かっていません。遺伝子や姿勢の悪さ、内分泌障害、栄養障害が推定されていますが、確定的なものはこれまでのところ明らかにされていません(2017年現在)。
症状
ショイエルマン病の症状は、思春期頃を境に徐々に出現するようになります。初期の段階では、姿勢の悪さや猫背などがみられます。背骨のゆがみが進行するにつれて、背中の痛みも自覚するようになります。また、背骨全体で背中のゆがみを矯正しようとして、肩や腰、足などに全体的な負担が生じるようになります。さらに、背中の運動機能も低下してうまく腰を曲げることができない、お辞儀ができない、などの症状も出現します。
これらの症状が心理面に影響を及ぼすことがあり、うつ状態となることもあります。また、ごくまれに脊髄が障害を受けることがあり、手足の動かしにくさやしびれなどの症状が出現します。
検査・診断
ショイエルマン病を診断するためには、詳細な身体診察を行うことが重要です。そのため、起立時の状態、前屈みになったときの状態など、さまざまな姿勢における背中の状態を確認します。また、レントゲン写真やCT、MRI、ミエログラフィーなどの画像検査も行われます。画像検査では、診断だけではなく重症度も含めた評価を行います。
治療
ショイエルマン病の治療としては理学療法や装具の着用、手術療法などがありますが、年齢や背中の曲がり具合、合併症の有無などを総合的に判断して治療方針が決定されます。
理学療法
背中の曲がりを矯正するために、周りの筋肉を中心として筋力の増強を図ります。特に発症初期においては、本療法を行うことで病気の進行を阻止することが期待できます。
装具の着用
背中の曲がりが強い場合には、装具でゆがみを矯正し、進行防止を図ります。ゆがみの状態を確認し矯正の具合を修正しつつ、ゆっくりと治療していきます。
手術
上記のような治療方法は、特に骨の成長期で効果を期待することができます。骨の成長が完成してしまった場合や、ゆがみの程度が強い場合には手術を行います。手術にはさまざまな方法があり、どのタイミングでどの手術を行うかは、患者さんの症状に合わせて適切に決定されます。
ショイエルマン病では、慢性的な痛みや見た目の変化から心理的な影響が生じることもあります。そのため鎮痛薬の使用や心理面のサポートを行うことも大切です。
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