概要
上腕骨骨幹部骨折とは、上腕を構成する上腕骨の中央部分に相当する骨幹部が骨折を起こした状態を指します。
交通事故や転落などが原因となることがありますが、分娩時に赤ちゃんに生じるようなケースもあります。
骨折が生じると痛みや腫れなどの症状が現れ、外見からみて変形がわかる場合もあります。場合によっては手術による治療となることもあるため、早期に医療機関の受診を検討することが大切です。
原因
上腕骨骨幹部骨折は、上腕骨に対して直接的な外力が加わったり、上腕骨がねじれるような力が加わったりした際に発症します。
具体的な状況としては、交通事故・転落によって上腕骨を強打する、腕相撲などの際に上腕が強くひねられる、などを挙げることができます。
また、上腕骨骨幹部骨折は、分娩時に赤ちゃんに生じることもあります。特に、赤ちゃんが大きくてなかなか出産にいたらない場合、骨盤位のままで経膣分娩に至った場合など、難産に関連して上腕骨骨幹部骨折が生じることがあります。
症状
骨折により骨の位置関係が大きくずれてしまうと、外部から見てわかるような変形がみられることがあります。また、骨折が生じた部位に圧痛、腫れ、出血斑などの症状が現れ、腕の中央部位に負荷が掛かると痛みが増強します。
上腕骨骨幹部骨折に伴って、橈骨神経や動脈が同時に損傷を受けることもあります。橈骨神経は腕を通る他の神経(正中神経・尺骨神経)と異なり、上腕骨中央部後ろ側を骨に巻き付くように直接接触して通過しているため、骨折に巻き込まれると、障害を生じる可能性があります。
橈骨神経が傷害されると、親指(または親指と人差指の間あたり)のしびれを自覚する、手首や指が持ち上がらずに垂れ下がるなどの症状につながることがあります。
また、上腕骨骨幹部骨折によって動脈が損傷されると、損傷を受けた部位よりも末梢の皮膚が白く冷たくなります。
検査・診断
上腕骨骨幹部骨折では、神経や動脈の損傷がないかを評価することが大切です。具体的には、しびれや動脈拍動の有無、手の冷感などの確認を受けることが大切です。
また、上腕骨骨幹部骨折では、レントゲン写真、CT検査、MRI検査などといった画像検査も重要です。これら検査を通して、骨折の状況のみならず周囲組織の損傷具合も含めて総合的に評価します。
治療
上腕骨骨幹部骨折では、動脈損傷や骨折片のずれがないか、皮膚を突き破った骨折ではないかなどの状況を総合的に判断して治療方針を決定します。治療方法としては、保存的な治療方法と手術が挙げられます。
保存的療法
骨のずれがないように正しい位置で骨折部位を保ち、ギブスやバンドなどを使用して局所を固定します。
手術
骨折片が皮膚を突き破ってしまう、動脈の損傷が疑われる、骨折片の位置のずれが著しいなどでは、手術的な治療介入が選択されます。どのような手術療法が選択されるかは、骨折の状況を詳細に評価することで決定されます。
上腕骨骨幹部骨折では、肩関節や肘の関節を動かすためのリハビリテーションを行うことも大切です。
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