概要
尋常性毛瘡とは、毛の生える毛包と呼ばれる部位に生じる感染症である「毛包炎」の一種です。「カミソリ負け」という名称でも知られており、ヒゲの生える部位に生じます。
思春期以降の男性にみることが多く、炎症を起こしたあごひげの部位に一致して、赤みを伴った盛り上がりを示すようになります。治療では、抗生物質を使用します。
原因
尋常性毛瘡は、毛が生える部位に相当する「毛包」に細菌が感染することを原因として発症します。原因となる細菌としては、主に皮膚の常在菌である黄色ブドウ球菌を挙げることができます。
尋常性毛瘡は、ひげ剃りに関連して発症することから、通称カミソリ負けとしても知られています。ひげ剃りによって皮膚が傷つくと、そこに黄色ブドウ球菌などの病原体が感染を起こします。これによって皮膚に炎症が引き起こされ、徐々に毛包深くまで炎症が広がります。
症状
炎症を起こしたあごひげの部位に一致して、赤みを伴った盛り上がりを示すようになります。炎症が広がることで赤い盛り上がりが膿を持つようになったり、皮膚病変同士が融合して病変が広がったりすることがあります。痛みを伴うこともあります。
尋常性毛瘡では、皮膚のなかでも比較的深い場所に炎症が生じ、ひげ剃りによる刺激が繰り返されることで、症状がさらに悪化します。このような状況によって炎症が徐々に増悪することもあり、場合によってはヒゲが生えなくなったり、瘢痕を形成したりすることがあります。
検査・診断
尋常性毛瘡の診断は、皮膚病変の広がりを詳細に評価することでなされます。ただし、類似した病変を示す疾患として、ヘルペスによる皮膚感染症や膿痂疹、真菌感染症などがあり、これらの皮膚感染症との鑑別が必要とされることもあります。
この場合には、皮膚の一部を擦りとった検体などを用いて顕微鏡で観察したり、培養検査を行ったりすることがあります。
治療
尋常性毛瘡は、黄色ブドウ球菌を代表とする細菌感染症の一種です。そのため、抗生物質を用いた治療が中心となります。使用される抗生物質には外用薬や内服薬がありますが、何を使用するかは皮膚病変の広がり具合や炎症の程度に応じて決定されます。
ある種の抗生物質が効きにくいMRSAと呼ばれるタイプの耐性細菌が原因となることもあるため、抗生物質の効きには注意を払うことが必要です。
尋常性毛瘡は、ひげ剃りに関連した傷がきっかけになり病気が発症します。目に見えない傷であっても、尋常性毛瘡になる可能性はあります。
そのため、ひげ剃りに際しては皮膚に傷をつけないよう、皮膚を暖める、シェーバーのクリームを使用する、などの対策をすることも大切です。皮膚の炎症が強い場合には、ヒゲ剃りを一時的に控えることもあります。
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