概要
急性胃拡張とは、器質的な閉塞がないにもかかわらず、胃に食べ物や胃液などの内容物が停滞して、急速かつ高度に胃が拡張している状態です。
通常、胃の中に食べ物や飲み物が入ると副交感神経がはたらき、蠕動運動*によって内容物を十二指腸(小腸の最初の部分)へ送ります。胃の壁は伸縮性に優れていますが、通常は大きく膨らむことはありません。しかし、何らかの原因で副交感神経のはたらきが低下すると、十二指腸への排出が低下し内容物がたまって拡張を招きます。
急性胃拡張が生じると、上腹部の張りや腹痛、嘔吐などの症状が引き起こされます。重症な場合は、胃に穴が開いて命に関わることもある病気です。
*蠕動運動:消化管の一部の筋肉が収縮や史観を繰り返すことで、内容物を移動させる運動。
原因
急性胃拡張は、胃の運動を促す副交感神経のはたらきが低下することで発症します。副交感神経のはたらきが低下する原因としては、糖尿病など神経障害が生じやすい病気やストレスが挙げられます。
また、急性胃拡張は空気を大量に飲み込む“空気嚥下症”があると悪化しやすいことも報告されています。
症状
急性胃拡張の代表的な症状は、腹部の張りや腹痛、嘔吐です。また、大きくなった胃が横隔膜や肺を圧迫するため、しゃっくりや呼吸困難といった症状がみられるほか、胃の拡張による圧迫で血流が低下すると胃が壊死する可能性があります。
検査・診断
検査は主に画像検査と血液検査が行われます。
画像検査
胃の大きさやほかの臓器への圧迫の程度などを確認するため、X線や超音波、CTなどを用いた画像検査を行います。まずは簡便に行えるX線検査や超音波検査を行ったのち、状態をさらに詳しく把握するためにCT検査を行います。
血液検査
血液検査では、炎症や脱水の程度、電解質などを評価できます。急性胃拡張への治療だけでなく、原因となり得る病気を探すうえでも重要な検査です。
内視鏡検査
胃の中の状態を直接カメラで観察します。しかし、内視鏡検査を行うときには胃内に空気を送り込むため、拡張を進行させてしまうことがあります。観察目的としてだけではなく、胃内の内容物を吸引するために行うこともあります。
治療
胃腸の安静と内容物を除去するため、絶食して鼻から胃内にチューブを通し、胃にたまった内容物を吸引する治療が行われます。胃に穴が開いた場合は緊急手術を行う必要があります。
大量の嘔吐によって脱水状態になっている場合は、点滴で水分補給と電解質を補います。
予防
近年では摂食障害による過食によって急性胃拡張が引き起こされるケースも報告されています。過食がある場合は適切な診察や治療を受けることも大切です。
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