ぼうこうちつろう

膀胱腟瘻

監修:

概要

膀胱腟瘻とは、膀胱と腟との間に瘻孔ろうこうと呼ばれる異常な通路ができてしまう状態を指します。この状態の多くは産婦人科手術後に生じ、瘻孔によって膀胱から腟に尿が漏れ出るようになります。患者は尿失禁として自覚することがあり、その症状によって精神的に大きなストレスを感じることが少なくありません。

瘻孔が極めて小さい場合には尿道バルーンカテーテルを留置することで自然に閉鎖することがありますが、一般的には外科的治療が必要です。瘻孔周囲の組織を切除し、膀胱および腟の両方の瘻孔を閉鎖する方法が行われます。

原因

膀胱腟瘻は、子宮摘出術などの産婦人科手術後に発症することが多く、放射線治療が原因の場合、治療からかなり時間が経ってから発症することもあります。そのほかの原因としては、先天性の形態の異常、炎症性疾患、感染症、がんの進行などが挙げられます。

産婦人科手術の際、医師は尿路系を損傷しないよう細心の注意を払いますが、完全な予防は困難です。手術中に損傷が判明した場合は、すぐに修復すれば瘻孔になることはあまりありません。

しかし、気付かれないような小さな損傷や熱による損傷が生じていた場合、後にその部位が栄養障害によって壊死えしすることで、瘻孔の形成につながることがあります。ただし、膀胱腟瘻の発生頻度は低いといわれています。

症状

膀胱腟瘻の主な症状は尿失禁です。膀胱と腟が瘻孔という管状の穴によってつながることで膀胱内の尿が腟内に漏れ出るようになります。

瘻孔の大きさによって尿が漏れ出る量が異なり、瘻孔が小さい場合には少なく、大きい場合には多くなります。通常は昼夜を問わず持続的に尿が出ます。また、立っているときや動いているときに漏れる尿量が多くなります。

検査・診断

子宮摘出術などの産婦人科手術後に持続的な尿失禁があれば膀胱腟瘻を疑います。診断には複数の検査方法が用いられますが、最も確実なのは内診で瘻孔の存在を直接確認することです。具体的には膀胱内に生理食塩水を注入し、腟からの生理食塩水の流出および瘻孔の存在を確認します。さらに詳しい状態を把握するため、超音波検査、膀胱造影検査、MRI検査な画像検査を実施し、瘻孔の部位や大きさおよび周囲組織との関係などを調べます。また、悪性腫瘍あくせいしゅようの存在を確認するなどの目的で、CT検査なども行われます。

治療

瘻孔が極めて小さい場合には、膀胱内に尿道バルーンカテーテル(先端に風船がついた細い管)を留置することで自然に閉鎖する可能性がありますが、多くの症例では外科的治療が必要です。従来は主に腟からの膀胱腟瘻閉鎖術が行われてきましたが、瘻孔が深部にある場合や腟が狭い場合など、瘻孔の部位や腟の状態によっては操作が困難な症例も認められていました。近年では腹腔鏡ふくくうきょうを用いた膀胱腟瘻閉鎖術の有効性が報告されています。腹腔鏡による拡大視野により膀胱と腟を確実に縫合可能で、さらにこれらの間に介在組織を置くこともできるなど、膀胱腟瘻の有効な治療法として注目されています。

最終更新日:
2025年06月27日
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2025/06/27
更新しました
2018/08/15
掲載しました。

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