
DOCTOR’S
STORIES
医師として、起業家として、できることを懸命に──鏡原裕一先生のストーリー
スマホ1つで、医療をもっと身近に。オンライン診療に早くから取り組んできたプライベートクリニック高田馬場が目指すべき姿として掲げるのは、「待たせない医療」。医師としての理想と、起業家としての現実。その両方に挑み続ける
私が医師を志したのは、医師である父の影響が大きかったと思います。祖父母を含め、周囲からの「同じ道に進んでほしい」という期待を子どものころからなんとなく感じて育ち、大学は医学部を選択しました。
しかし当時の私が目指していた医師というのは、今のような開業医ではなく、「国境なき医師団」です。学校の社会科の授業から国際問題に興味を持ち、漠然と「世界を救いたい、勉強を頑張って医師になったらそれができる」と考えていました。
医学部に進学後は、子どものころから続けてきた野球部に入部しました。しかし肩を壊してしまった私は、2年生の途中でやむなく退部することに。大好きだった野球をやめて勉強に専念するようになりました。
勉強に励んだおかげで、成績に問題はありませんでした。ですが、勉強している内容に意味が見いだせず、立ち止まって考えることが多くなりました。
「この勉強をしていて世界が救えるのか」「世界を救うなら医師ではなくてもよいのではないか」「自分は本当に医師になりたいのだろうか」「そもそもなぜ世界を救いたいのか」「自分は一体何がしたいのだろうか」。
今考えると、完全に迷路に迷い込んでいました。勉強のギアを少し緩め、悩みを打ち払うかのように小説や哲学書を読み漁ったり、企業や行政のインターンに参加したり、自分探しの旅に出て海外でバックパッカーも経験しました。一とおりいろいろなことをやってみましたが、「これだ」という答えを見つけられないまま、医学部を卒業しました。
医学部を卒業した後は、2年間の初期研修が始まりました。私が研修先として選択したのは、東京の目黒区にある国立病院機構東京医療センターです。忙しく大変な毎日でしたが、尊敬できる先生方や同期に恵まれ、とても充実した日々を送ることができました。
しかし一方で、研修を続けるなかで目の前で行われている医療に対する疑問も抱きました。救命救急センターには緊急度の高い患者さんも運ばれてきます。時には終末期の患者さんの
もちろん、こうした医療行為も現在の救急医療の大事な役割の1つですし、医療は患者さんやご家族の悩みや苦悩を解消できる素晴らしいものだと理解しています。しかし、高齢化が進み、膨らむ社会保険負担によって若年層が生きにくくなる日本社会で、「命の長さ」という観点が判断基準になりやすい病院医療への違和感が自分の中に芽生えたことも事実です。
そんな疑問を胸の中におりのように残したまま、2年間の研修生活を終えました。
研修を終えた医師は、「小児科」「産婦人科」「心臓外科」など、自分の専門分野を選択し、さらに修行を続けます。私は迷いに迷った末、チェーン展開している美容外科クリニックに入職することにしました。
判断基準や枠組みが比較的決まっている「病院の中の公的医療」よりも、多様的な価値提供ができて自由度が高いビジネスライクな「社会保険を使用しない自由診療」の分野のほうが、学生のときからそれまで漠然と感じていた医療に対する理想、自分の考え方や目指す方向性に合っているのではないかと判断したためです。
ただ、研修先で提供していた医療の側面しか知らなかった私にとって、美容医療は驚きの連続でした。医療だけではなく、売り上げやビジネスに対する考え方も必要とされる世界だったのです。いただいた対価に値するだけの満足や幸せを患者さんに提供できなければ、私自身が満たされない。そう感じ、当時は随分と悩みました。
さいわい、売上目標など医師に対する「ノルマ」はなかったので、できるだけよいサービス・施術を提供することに専念しました。手技や手術を親切に教えてくださる先生にもお会いすることができ、私なりに医師として精進する期間を過ごせたとも思います。医療技術だけでなく、ビジネスとして医療を提供するバランス感覚の難しさを学ぶことができたのは大きな収穫だったと思います。
美容クリニックで仕事をすることで、施術に関する技術や知識はある程度身につきましたが、自分の理想はまだ実現できていないという思いを抱えていました。医師の道に進むことを決めた「国境なき医師団になりたい」という思いの根本には、「医療を通じて人々を幸せにしたい、満足していただける医療を提供したい」という私なりの理想がありました。漠然とした理想ではありますが、ここに近づけるよう、次のステップに踏み出すことを決意しました。
クリニックを開業するという選択肢もありましたが、当時自分で事業を起こしてみたい、院長よりも起業家になりたいと考えていた私は、美容クリニックを退職し、株式会社を設立して代表取締役になりました。しかし、当時の私は何も後ろ盾がない新米起業家で、特にこれといった事業内容もありません。思いつく限りいろいろな事業にチャレンジしましたが、もちろん上手くいきませんでした。
そのような折、別件で業務提携の打診をしていた歯科医師から「遠隔診療」なるものについて教えてもらう機会がありました。オンラインで診察をして薬を処方できる制度がある……。コロナ禍で浸透したオンライン診療ですが、実はもっと前から一部の条件付きで対面ではない診療ができる「遠隔診療」という制度があり、まだあまり知られていない当初から運よくその仕組みについて情報を入手することができたのです。
病院やクリニックで長時間待たされたり、なかなか休みが取れずにクリニックを受診できなかったりした経験は、誰にでもあるはずです。待つことが大嫌いな私にとって「待たなくていい」「便利」という付加価値は非常に大きく、やりがいも感じられ、大きなチャンスだと感じました。
始めはそのことを教えてくれた歯科医師のクリニックの中にオンラインの診療部門を設立し、その運用サポートを私の会社で行うという計画でした。しかし、歯科の公式サイトの改修など実務上の障壁があり、結局、歯科医師の了承を得たうえで、私自身がプロトタイプとなるクリニックを開業し、オンラインでの診療を始めることになりました。
こうして開院したのが、「プライベートクリニック高田馬場」です。クリニックといっても、開院当時はオンラインでの診療ができるスペースとパソコン1台、薬剤が保管できるスペースがあるだけの小さなものでした。雑居ビルの1室で、ひっそりと開業しました。自分でホームページを作り、見よう見まねで広告を出稿したところ、1件・2件と問い合わせをいただくことができ、とても嬉しかったことを今でも覚えています。
試行錯誤を重ね、毎月の通院に手間とコストがかかるピル処方*やED薬処方**をオンライン診療***と掛け合わせて始めたところ、徐々にお問い合わせをいただく機会が増えていきました。
問い合わせが1日数件だった創成期は、「口頭で問診・説明」「お支払いの案内」「送り状伝票の作成と発送」と、全ての対応を私自身が行っていました。しかし、件数が増えてくるにつれ、お待たせする時間が長くなるようになってきました。私は当時から今に至るまで、当クリニックをご利用される患者さんには「便利でスピーディー、しかも安心して利用できる」と感じていただきたいと思っています。そのため、できる部分はITの力で効率化を図り、事務作業についてはスタッフに任せるなど、工夫を重ねて改善していきました。
今日まで紆余曲折ありましたが、ハード・ソフト共にブラッシュアップを重ね、多くの方にご利用いただけるようクリニックの拡張移転を複数回行い、現在に至ります。
オンライン診療の環境はコロナ禍前後で随分と様変わりし、オンライン診療を提供するクリニックやサービスの数も増加しました。
手術や手技と異なり、医師によって大きな差が出るものではないという事情から、オンライン診療は今後も「ビジネス」的な要素を含んで拡大を続けるのではないかと個人的には感じています。私自身も、便利でスピーディーという利点を追求し、さらに多くの方にご利用いただけるよう、改善を重ねていくつもりです。
いろいろな経験を重ね、クリニック自体も変化を続けてきましたが、常に胸の中には「医療を通じて人々を幸せにしたい、満足していただける医療を提供したい」という思いがありました。プライベートクリニック高田馬場を利用していただいた患者さんに満足していただき、皆さまのお役に立てるよう、今後も日々、精進していきたいと思っています。
*ピル処方:生理痛でお悩みの方に、女性ホルモンを低用量含む低用量ピルを処方しています。対面診療、オンライン診療とも保険適用外の自由診療で、費用は医師初診料が3,300円(再診料は無料)、低用量ピル1シート1,089〜2,750円です。オンライン診療の場合は、オンライン診療手数料として送料を含めてプラス1,000円かかります(いずれも2025年7月時点の税込価格)。
**ED薬処方:対面診療、オンライン診療とも保険適用外の自由診療です。診察料は無料で、ED薬(ジェネリック)25~100mgが605~1,155円、シルデナフィルクエン酸塩(先発品)25~50mgが1,430~1,650円、バルデナフィル塩酸塩水和物(先発品)5~20mgが1,430~2,200円。タダラフィル(先発品)5~20mgが1,650~2,200円です。オンライン診療の場合は、オンライン診療手数料として送料を含めてプラス1,000円かかります(いずれも2025年7月時点の税込価格)。
***オンライン診療:オンライン診療では、オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤については、初診では処方できない場合があります。
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