日本における患者さんの数や発症する年齢について

病名の由来とは?

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FMFとは、家族性地中海熱という病気の英語表記(Familial Mediterranean Fever)を略したものです。地中海民族に多く、家族(血縁者)に似たような症状を示す人がいる病気であることから、このように名付けられました。 FMFは自己免疫疾患と思われがちですが、本当は自己炎症性疾患という別の種類の病気です。

患者さんはどれくらいいる?

日本における患者さんの数は500人程度と推測されていますが※1、実際には、まだ発症していない患者さんや発症していても症状が軽い患者さんが多数いると考えられています。

近年、FMFが起こる仕組みの解明が進んだことにより、診断される患者さんが増えてきました。なお、日本では患者さんが5万人未満の病気を希少疾患と呼ぶことから※2、FMFは希少疾患のひとつとなっています。

何歳ぐらいで発症する?

地中海地域では、9割の患者さんが20歳以下で発症し、低年齢での発症患者もまれではありません※1。一方、日本では、5歳以下で発症する患者さんはほとんどおらず、成人で発症する患者さんが比較的多い傾向がみられます※3。2009年に実施された全国調査によると、日本人におけるFMFの平均発症年齢は18.2歳でした※4

知っておきたい追加情報

自己炎症性疾患ってどんな病気?

FMFに代表される自己炎症性疾患では、細菌やウイルスなどの病原体や異物が体内に侵入していないにもかかわらず、異物から身体を守るためのシステムである免疫の一種として知られる自然免疫が過剰に働き、「熱・痛み・腫れ・赤み」といった炎症に伴う症状が全身に認められます。こういった自然免疫の異常には特定の遺伝子の変化(変異)が関与しており、FMFではMEFVという遺伝子の変異によって、自然免疫が暴走すると考えられています(MEFV遺伝子は、1997年に国際家族性地中海熱研究会によって同定されました※3)。
ただ、FMF患者さんみなさんのMEFV遺伝子が変異しているわけではありません。FMF患者さんの中には、MEFV遺伝子が変異していないにもかかわらず、変異している患者さんと同じ症状をきたし、同じお薬が効く患者さんがいます。

身体の中の免疫のお仕事

自然免疫と獲得免疫の役割の違い
医療情報科学研究所: 病気がみえる vol.6 免疫・膠原病・感染症(第1版7刷), メディックメディア, 2009 年より引用改変

免疫は、「疫(病気)」を「免れる」という意味に由来した言葉です。病原体などの異物が侵入してくると、私たちの身体はさまざまな手段を用いて異物を排除し、身体を安全に保とうとします。この異物を排除するシステムが免疫で、自然免疫と獲得免疫があります。

自然免疫は生まれつき備わっている免疫で、異物に対して1次攻撃を仕掛けます。獲得免疫は生まれた後に新たに獲得する免疫で、1次攻撃をすり抜けてきた異物に対して2次攻撃を仕掛けます。自然免疫と獲得免疫は攻撃のタイミングやパターンなどが違い、そのシステムを担っている細胞(プレーヤー)も異なります。

よく「免疫がつく」といいますが、これは獲得免疫を指しています。「はしかは二度かからない」というのも、獲得免疫のなせるわざです。ちなみに自己免疫疾患は、獲得免疫の暴走(自分の正常な細胞を異物とみなし攻撃を開始する)によって起こります。

家族性地中海熱を疑った時

自分の症状が家族性地中海熱かもと思ったら、まずは受診前に症状をチェックしてみましょう。チェック項目に多く該当する場合は、かかりつけ医もしくは専門施設へのご相談をおすすめします。

家族性地中海熱と診断されたら

家族性地中海熱と付き合いながらより良い人生を送るためには、信頼できる主治医とのコミュニケーションに基づく適切な治療によって、発作をコントロールすることが大切です。
一人ひとりの症状や環境に合わせたライフプランニングや、主治医に自分自身の症状を伝えるために工夫できることなど、治療を継続し発作をコントロールするポイントをご紹介します。

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インタビュー
家族性地中海熱の女性患者さんが豊かな人生を送るために――月経、妊娠・出産などに応じた症状コントロールのポイント
信州大学医学部附属病院 リウマチ・膠原病内科 講師/外来医長
岸田 大 先生
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インタビュー
家族性地中海熱との付き合い方――症状に振り回されない毎日を過ごすためにできる工夫
福島県立医科大学医学部 リウマチ膠原病内科学講座 主任教授
右田 清志 先生
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医師への症状の上手な伝え方
長崎大学病院 リウマチ・膠原病内科 講師
古賀 智裕 先生
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