FMFという病気が起こる仕組みについて※1
FMFとは自然免疫が暴走することによって生じる病気で、自然免疫の暴走にはMEFV遺伝子が重要な役割を果たしていると考えられていますが、全容は明らかになっていません。
FMFでMEFV遺伝子が変化する(変異する)と、なぜ自然免疫が暴走するのでしょうか?まず、MEFV遺伝子の変異がなく自然免疫が通常の働きをする場合についてみていきましょう。
異物が侵入していないときの自然免疫の働き
マクロファージという自然免疫を担うプレーヤーの内部では、MEFV遺伝子からパイリンというタンパク質が作られます。
私たちの身体を作り上げている細胞に異物が侵入していない場合、パイリンは、パイリンの動きを封じ込める制御タンパク質と結合して、活動できない状態(不活性型パイリン)となっています。
異物が侵入したときの自然免疫の働き
細胞に異物が侵入すると、パイリンと制御タンパク質の結合がほどけて、パイリンは活発に動き出します(活性型パイリン)。活性型パイリンは、同じくマクロファージの中にあるインフラマソームというタンパク質複合体と結合し、パイリンインフラマソームとなります。インフラマソームも普段は活動できない状態(不活性型)ですが、パイリンと結合してパイリンインフラマソームになると活発に動き出します。活性型パイリンインフラマソームはインターロイキン(IL)-1βやIL-18などの炎症を誘導するタンパク質(炎症性サイトカイン)を放出したり、細胞を自殺(細胞死)に追い込んだりします。つまり、パイリンは、炎症や細胞死を開始するスイッチとして働いているわけです。
FMF患者さんの身体で起こっていること
次に、FMF患者さん(MEFV遺伝子が変異している場合)についてみていきましょう。通常、変異のない遺伝子からは正常な機能をもつタンパク質が作られ、変異のある遺伝子からは正常な機能を失ったいびつなタンパク質が作られます。MEFV遺伝子の場合、変異のない遺伝子からは「制御タンパク質と結合する」という機能をもつ不活性型パイリンが作られますが、変異のある遺伝子からはその機能を失ったいびつなパイリンが作られることがあります。制御タンパク質と結合していないパイリンは活発に動き出すので、インフラマソームと結合し、活性型パイリンインフラマソームが作られます。
つまり、MEFV遺伝子が変異していると、細胞に異物が侵入していないにもかかわらず、まるで侵入しているかのように活性型パイリンが作られることから、自然免疫のスイッチが入って炎症や細胞死が導かれます。このような状態は、自然免疫の暴走と呼んでも差し支えないでしょう。
MEFV遺伝子のエクソン10という部分に多い疾患関連性のある変異を有する患者さんでは、FMFの典型的症状を示す典型例であることが多いです。一方、FMFの典型的症状と似ていますが、発熱期間が異なる、発作の程度が軽い、発作の頻度が多い/少ないなどの症状を認める患者さんは非典型例と呼ばれています。これらの患者さんには、MEFV遺伝子に変異を認めない、もしくは認めてもエクソン10以外の疾患関連性のはっきりしていない変異を認める場合があります。日本では非典型例の患者さんが多く、診断までの期間が長くなる原因のひとつとなっています。
なお、MEFV遺伝子の疾患関連性については、専門医へのご相談をおすすめします。