肺がん
多くの併存疾患を抱えたステージIIの患者さん
順天堂大学医学部附属順天堂医院で、呼吸器外科教授を務める鈴木健司先生に、肺がんの症例について伺いました。
多くの併存疾患を抱えた患者さん
この患者さんは70歳代後半の患者さんでステージはII、肺がんが発見された時にはすでに狭心症や脳梗塞を既往歴として持っており、かつ透析もされている状態でした。放射線治療の選択が取られる場合もあるなかで、この患者さんの場合には放射線肺臓炎の可能性があったため手術治療となりました。
透析をされている方の場合、時間が勝負です。手術中に体の老廃物がたまり続けるため、長時間の手術には耐えられません。通常4~5時間かかる手術を1時間ほどで済ませなければならないのです。
この患者さんに対しても手術治療を行い、結果は無事に終了。いくつかの病気を抱えていたために合併症などの可能性も懸念されていましたが、手術後の経過もよく合併症なく退院されました。合併症がある症例に強いというのは、総合病院ならではの特徴だと思います。
関連の症例
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50歳代男性ステージIVbの肺がん
こちらの患者さんは頭痛や吐き気、性格の変化などをきっかけに近隣の脳外科を受診したところ、頭に大きな腫瘍(しゅよう)が見つかり、当院に紹介されてきました。最初は当院の脳神経外科を受診され手術を受けたのですが、その後詳しく検査を進めたところ肺がんであることが判明し、最初に見つかった頭の腫瘍は肺がんの脳転移であることが分かりました。手術後も取り切れなかった頭の腫瘍は大きくなり、放射線治療や2度目の脳外科の手術を受けるなど不安定な状態が続きました。しかし採取した腫瘍を調べていくとがんの表面にPD-L1と呼ばれるタンパク質が存在していることが分かり、肺がんの免疫治療薬が効く可能性があると考えられたため、当科で免疫治療を行うことになりました。 免疫治療によって肺がん、脳転移が小さくなった こちらの患者さんの場合は免疫治療が大変よく効き、頭の腫瘍も小さくなったほか、今のところ肺のがんも大きく進行せずに経過しています。もともと肉体労働をしている方で、頭の手術を行った後は寝たきりに近い状態まで体の状態が悪化した時期もありましたが、現在では免疫治療を継続しながら、もとの肉体労働をこなせるほどお元気になられています。免疫治療が行われるようになってから、こちらの患者さんのようにがんの根治は難しくても、治療を継続しながらがんと共に生活できる方が増えてきています。
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70歳代の男性
手術の進歩は日進月歩です。がんが広がっていたり合併症があったり、あるいはご年齢や体力的な面からこれまでは手術ができなかったりした方も、いつかは肺がんの手術の適応になる日が来るかもしれません。 これから紹介するのは、今までは難しかった手術に成功した例です。 肺の血管に食い込むステージIIIのがんに対する手術 この患者さんは、心臓から左の肺へ向かう動脈の付け根に広範囲に食い込む形でがんができてしまっていました。 通常このケースでは左の肺を大量に摘出する必要がありますが、肺を多く摘出してしまうと肺・呼吸機能に影響があります。また、この患者さんの場合は体力面から次に予定している治療に耐えられなくなってしまう可能性があったため、なるべく小さな範囲で切除することを方針としました。 そこでがんができた血管を切除した後にご自身の心膜を使って血管をつなぎ直す血管形成術を行い、結果として肺の左下葉(左の肺の下半分に相当する部分)を温存することができました。その後は抗がん剤治療、免疫チェックポイント阻害剤による治療も行い、手術から3年半経過した現在も、この方は再発もなく元気に生活を送られています。 当院では今後も新たな手術方法の開発に熱心に取り組み、手術の適応を広げていきたいと考えています。
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