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妊娠から分娩に向けた流れ——妊娠中に注意すべきこととは

妊娠から分娩に向けた流れ——妊娠中に注意すべきこととは
三原 卓志 先生

戸塚共立レディースクリニック 副院長

三原 卓志 先生

目次
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妊娠していることが判明した場合、無事に出産を迎えるための準備を行う必要があります。そのため、どのような目的で妊婦健診を行い、日常生活でどのようなことに気をつけるべきかを理解しておくことは大切です。

今回は、戸塚共立レディースクリニック産婦人科部長の三原(みはら) 卓志(たかし)先生に妊娠から分娩に至るまでに行う検査や生活上の注意点についてお話を伺います。

妊娠を疑う代表的な兆候は、無月経(予定どおり月経が来ないこと)です。月経予定日から1~2週間以上経過しても月経が来ない場合には、市販の妊娠検査薬を使用してみてください。市販の妊娠検査薬も病院で使用する検査薬も基本的にはほぼ同じものです。妊娠検査薬で陽性反応が出たら、速やかに産婦人科を受診しましょう。

妊娠が判明したら、出産までの間、定期的な妊婦健診(妊婦健康診査)を受けます。妊婦健診は無事に出産を迎えるために、お母さんや赤ちゃんの健康状態を確認するものです。

妊婦健診の内容は病院によって多少異なりますが、当院の妊婦健診で毎回実施している検査は、主に以下のとおりです。

  • 超音波検査
  • 尿検査
  • 血圧測定
  • 体重測定

など

超音波検査(エコー検査)では、腹部に超音波を当ててお腹の中にいる赤ちゃんの発育状態や、出産時のリスク(前置胎盤切迫早産の兆候)などを確認します。具体的には、赤ちゃんの身長や推定体重の測定、胎盤(たいばん)*の位置、羊水(ようすい)**の量などが分かります。

*胎盤:へその緒を通して赤ちゃんに酸素や栄養を届けるための臓器。
**羊水:赤ちゃんを保護するための液体。

尿検査は、“妊娠高血圧症候群”や“妊娠糖尿病”など妊娠中に起こり得る病気を調べる目的で行います。

妊娠高血圧症候群とは妊娠中に高血圧を発症することで、血圧の上昇とともに尿中のタンパク質が増加する兆候がみられます。

妊娠高血圧症候群を発症すると、お母さんと赤ちゃん共に命に関わる状態に陥る危険性があるため、兆候がみられた場合には早めに対処する必要があります。

妊娠糖尿病は妊娠をきっかけに発症する糖尿病のことです。妊娠中は、胎盤から分泌されるホルモンが、血糖値を下げるはたらきをもつ“インスリン”の作用を打ち消してしまうため、血糖値が上がりやすくなってしまいます。

妊娠糖尿病を発症すると、赤ちゃんの発育に悪影響を及ぼし、先天性な異常が生じたり、巨大児となったりする場合があります。そのため、妊娠糖尿病がみられないかどうかを確認し、異常がある場合には食事療法やインスリン注射による血糖管理を行います。

当院では、以下のような頻度で妊婦健診を行っています。

妊娠10週〜12週くらい……2週間に1回

妊娠13週〜24週くらい……4週間に1回

妊娠25週〜34週くらい……2週間に1回

妊娠35週以降……1週間に1回

妊婦健診は、お母さんと赤ちゃんの健康状態を把握し、問題があった場合には早期に対応するために実施しています。また、妊娠や出産、育児に関する疑問や不安を医師や助産師に相談できる場でもあります。定期的な健診の場を活用しながら心身共に万全の状態で出産に臨めるように準備を進めていくことが重要です。

妊娠中は胎児の成長とともに徐々にお腹が大きくなりますが、それ以外にもお母さんの体にはさまざまな変化が起こります。そのうち、よくみられる変化は以下のとおりです。

  • 味覚(好みの変化)
  • 唾液の分泌量(分泌量が減る/増える)
  • むくみ(妊娠後期にむくみやすくなる)

など

ただし、こうした変化はあくまで一例で、実際には個人差によるところが大きいといえます。

出生前診断とは、通常の妊婦健診とは別に希望する方に対して、赤ちゃんに生まれつきの病気がないかを確かめる検査(自由診療)です。出生前診断の検査方法はいくつかあり、それぞれの検査ごとに実施できる時期や分かる内容も異なります。また、検査にはリスクを判定するのみの“非確定的検査”と診断を確定する“確定的検査”があります。

当院の出生前診断(胎児診断外来)では、主に胎児超音波検査や血液検査(母体血清マーカー検査)、羊水検査を行っています。

通常の妊婦健診でも超音波検査を行いますが、出生前診断の超音波検査では、より時間をかけて詳細に検査を行うことで赤ちゃんに形態的・機能的な異常がないかどうかを確認します。具体的にこの検査で分かるのは口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)*心室中隔欠損症(しんしつちゅうかくけっそんしょう)()**などのリスクです。超音波検査は、非確定的検査にも確定的検査にもなり得ます。

侵襲(しんしゅう)がない検査のため、この検査が原因となって流産をする可能性はありません。当院でこの検査を行う場合、1万円(税抜き)の費用がかかります(2020年8月現在)。妊婦健診を他院で受けられている方でも、当院でこの検査のみ受けることが可能です。

*口唇口蓋裂:胎児期に口唇や口蓋(口の中の上側の壁)、上顎がくっつかず、唇が離れたままになってしまう“口唇裂”や、口蓋が分かれ口の中と鼻の中がつながった“口蓋裂”などが起こる病気。
**心室中隔欠損症:心臓の中にある左右の心室を隔てる壁(心室中隔)に穴が開いている病気。

ダウン症などの染色体異常による病気の有無は、血液検査(母体血清マーカー検査)や羊水検査で確認することができます。

ただし血液検査では、赤ちゃんが染色体異常を持っている確率を予測することしかできず、確定診断には至りません。

血液検査で赤ちゃんの染色体異常が強く疑われた際には、確定診断を得るために確定的検査である羊水検査を行うことがあります。羊水には赤ちゃんの細胞が含まれているため、羊水を採取することで染色体の異常を確認することが可能です。しかし、子宮に針を刺して羊水を採取する必要があるため、合併症や破水のリスクもゼロではなく、羊水検査後に流産をする可能性が約0.3~0.5%あるといわれています。

当院でこれらの検査を行う場合、血液検査は2万円(税抜き)、羊水検査は13万円(税抜き)*がかかります(2020年8月現在)。

*当院で妊婦健診を行っている方の金額。他院にて健診を受けており、羊水検査のみを当院で実施する場合には15万円(税抜き)。

出生前診断のメリットは、仮に赤ちゃんに病気の可能性があった場合、その対応(分娩方法や出産直後の対処など)について事前に準備ができるという点です。その一方で、いずれの検査においても出生前検査で分かる先天性の病気は、数多くある先天性疾患全体のうちの一部にしかすぎません。こうした点もふまえ、出生前診断を受けるか否かについては、検査で分かること、分からないことやメリット、デメリットについて正しく理解したうえで検討することが望ましいでしょう。

妊娠中は栄養バランスのよい食事を心がけ、体重が増えすぎないように注意しましょう。しかし、実際には妊娠中に食欲が増す方も多く、これまでの生活を全て変えることも難しいことだと思います。定期的な健診を通して、医師や助産師の指導を受けながら管理をしていきましょう。

妊娠中は無理のない範囲で、ウォーキング(散歩)やヨガなどの軽い全身運動を行いましょう。当院でも、出産に向けてオンラインでマタニティヨガ教室を実施しています(2020年8月現在)。

ただし、心臓や呼吸器の病気がある方や前置胎盤の方など、運動を控えたほうがよい方もいらっしゃいます。不安がある場合には運動実施前に必ず医師や助産師に相談をしてください。

妊娠中はお腹が大きくなり、妊娠前と体のバランスが異なるため、転倒のリスクが高まる可能性があります。そのため、できる限り転倒のリスクを避ける生活をしていただければと思います。その一例として挙げられるのが、自転車やハイヒールなど足元が不安定になる靴の使用です。それぞれを使用することそのものでお母さんや赤ちゃんに影響が出ることはありませんが、転倒のリスクを考慮した生活を心がけてください。

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