インタビュー

先天異常と小児外科医(1)―先天異常はとても幅が広い

先天異常と小児外科医(1)―先天異常はとても幅が広い
岩中 督 先生

埼玉県病院事業 管理者、東京大学 前小児外科学教授、日本小児外科学会 元理事長/元監事/元会長

岩中 督 先生

この記事の最終更新は2015年07月17日です。

「先天異常」という言葉を聞いたことがある方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。妊娠中のお母さんやこれから子どもを作ろうとしている方であれば、一度は調べたことがある言葉かもしれません。

先天異常とはどのようなものなのであり、これに対して小児外科医はどのように取り組んでいるのでしょうか? 東京大学で小児外科学の教授を務めた後、現在は埼玉県立小児医療センターで病院長を務めながら、日本の小児医療と外科医療双方の向上を目指して日々尽力されている岩中督先生にお話をうかがいました。

まず、先天異常とは何かについて説明します。
先天異常が起きるのは受精卵が赤ちゃんに育つとき、つまり妊娠初期(5~8週くらい)であるといわれています。発生学的には、いろいろな臓器ができはじめるときです。この時期は、お母さんが妊娠していることに気づく時期であるとも考えられます。

そのような時期に何らかの理由で正常な発育を阻害する要因があると、先天異常が起きるといわれています。要因は遺伝子・薬物・感染症……さまざまですが、すべてが科学的に証明できているわけではありません。そのうえ、先天異常の原因が不明なこともあります。

先天異常の形態も、目に見えるもの、目に見えないもの、さまざまなものがあります。本当に多彩で、さまざまな病気が含まれています。

具体的には、本来ならきれいに4つの部屋にわかれているはずの心臓に穴があいていること、上から下までつながっているはずの消化管のどこかが途切れていること、手の指が6本あること……このように多種多様な異常が含まれます。

現在では、赤ちゃんが生まれる前に検査を行うことでさまざまな病気が分かるようになってきました。

生まれつきの異常を調べるためには、胎児診断があります。胎児診断はこれまで、主に超音波検査により行われてきました。心臓の血液の流れがおかしい、お腹の外に腸が飛び出ている……超音波検査をすることで、さまざまな異常が診断できます。それにより、胎児が生まれたあとの治療の準備もある程度できるようになってきました。

また、今日では血液検査だけでできる新しい出生前診断もあります。超音波検査による操作をしなくても、染色体の13番、18番、21番の異常であればお母さんの採血をするだけで分かるようになってきました。

前述のように、先天異常は非常に幅が広い疾患です。肺・気道・消化管・肝臓・胆嚢・膵臓・性器(男性器・女性器)・さらに心臓まで、すべての器官において起こります。
成人患者の外科医は、臓器に応じて担当が分かれています。しかし一方で、小児外科医が扱う臓器の幅は非常に広くなり、心臓以外のすべての治療を担当します。
このように生まれつきの病気である「先天異常」を幅広く担当し、治していくのが小児外科医です。

 

  • 埼玉県病院事業 管理者、日本小児外科学会 元理事長/元監事/元会長、東京大学 前小児外科学教授

    日本小児外科学会 小児外科指導医・小児外科専門医日本外科学会 外科認定医・外科専門医・指導医

    岩中 督 先生

    東京大学小児外科学教授、東京大学附属病院副院長を経て埼玉県立小児医療センターで病院長を務める。全外科系学会を束ねた「ナショナルクリニカルデータベース」においては代表理事を務めており、ビッグデータを用いて小児外科だけではなく外科分野、さらには全体的に日本の医療レベルを上げるために精力的な活動をしている。現在は埼玉県病院事業管理者として病院経営に深く携わる。

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