「先天異常」という言葉を聞いたことがある方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。妊娠中のお母さんやこれから子どもを作ろうとしている方であれば、もしかすると一度は調べたことがある言葉ではないかと思います。小児外科医は先天異常に対して、先天異常の子どもが成長・発達していく過程に影響を及ぼさないよう、さまざまな工夫をしてきました。
東京大学で小児外科学の教授を務めた後、現在は埼玉県立小児医療センターで病院長を務めながら、日本の小児医療と外科医療双方の向上を目指し日々尽力されている岩中督先生にお話をお聞きしました。
先天異常では生まれたばかりの赤ちゃんに手術をしなければならないことも多々あります。
成人の医療においては、胃がんになった患者さんに対して胃をとります。しかし、生まれたばかりの赤ちゃんは、臓器をとってしまうとその後の発達・成長に支障をきたすことがあります。小児外科医は何とかして成長・発達に影響を及ぼさない医療を展開していきたいと考え、さまざまな工夫をしてきました。
「先天異常と小児外科医(2)―どれくらいの頻度で起こる?」でも紹介したように、「鎖肛」は生まれつきおしりに肛門のない病気です。そのため、肛門を作ってあげなければいけません。しかし、生まれたばかりの状態で肛門を作ると、「出したいときに出せる」性能の良いしっかりとした肛門にはならないのです。「出したいときに出す、止めたいときには止める」ためには肛門括約筋をコントロールする必要があり、繊細な肛門括約筋を丁寧に温存しなければいけません。
そのため、まず一時的に人工肛門をつけます。こうすることによって、まずはミルクを飲んだりできるようになるため、当面の栄養がとれるようになります。こうして、体がふた回りくらい大きくなるのを待ちます。こういった段階を経て、肛門括約筋がきちんとある、良い肛門を作ってあげます。同時に、作った肛門のトレーニングもしていきます。そして、そのあとで人工肛門を閉じてあげます。
この方法にも難点があります。生まれた直後に肛門を作ると1回で手術が済みますが、この方法ですと、3回手術をしなくてはなりません。しかし、最初から無造作にいきなり作ってしまうより、はるかに機能の良い肛門ができます。普通の肛門から考えると、100点とまでは行かなくても80点くらいの肛門はできるようになります。そうなれば、特に日常生活においてハンディキャップなく過ごすことも可能になります。
8000人に1人程度の頻度で起こる「食道閉鎖症」という病気があります。2011年には年間約160人、食道閉鎖症の子どもが生まれました。食道が閉鎖していると、ミルクが飲めません。また、肺炎のリスクがとても高くなります。このような子どもに対しては、生まれて1~2日のうちに食道をつないであげないといけません。
今までは右側から開胸して、食道―食道吻合術という手術をしていました。しかし、生まれたばかりの赤ちゃんに開胸術をしてしまうと、肩甲骨の動きが悪くなり、将来的に肩自体の動きが悪くなるリスクがあることが知られていました。
もちろん、食道閉鎖症はすぐに手術をしなければ死んでしまう病気です。それでも、後になって運動機能に障害が出てしまうのは大きな問題です。そうならないようにするにはどうすればよいか、という工夫を、小児外科医は考え続けてきました。
私は2005年から、胸腔鏡を用いて非常に小さい穴から直径3mmの食道を吻合していく手術を実施しています。手術自体は開胸でやる手術の倍くらいの時間がかかりますし、麻酔科とも連携しながら行っていかなくてはいけません。術野(手術時の視野)を広げ、見やすくするのも大変です。しかし、将来的に機能障害を残さないためには、胸腔鏡でやる手術が有効である可能性があります。これを実施している施設は、日本には埼玉県立小児医療センターを含めて数施設しかありません。
ここまで、胸腔鏡での食道閉鎖症に対する手術を紹介しましたが、従来の方法でも工夫すれば運動障害は出ないとも言われています。しかし、これをどう検証すればよいのでしょうか? 年間160人の患者さんしかいない希少疾患をどのように検証していけば良いのでしょうか? 希少疾患ではどの治療が本当に良いのか、どの手術が本当に良いのかを検証していくことが極めて難しくなります。
このような経験をしていくなかで、私はビッグデータの必要性を感じていました。そこから、すべての小児外科医が協力して、全手術のデータを出さなければ小児外科は進歩していかないと考えました。ビッグデータを利用した将来のあるべき小児外科診療の形の提案が始まったのです。
関連の医療相談が10件あります
いびき治療について
数年前より、就寝中のいびきを指摘されることが増えていることが気になっています。いつか診断を受けたいと思っておりましたが、どのようなところへ行ったら良いのかよくわからずにおります。仕事が忙しく睡眠時間があまり長くとれないのもありますが、就寝時間に関わらず、あまり疲れがとれないのもあります。
夕方になると倒れそうになる
毎日午前中は元気なのですが、15時以降になるとめまいがして思考が働かなくなり、身体がだるく力も入らない。起きてられないぐらいしんどい時もある。首の後ろや背中などが張って痛い。 何が原因でしょうか? 何か良い薬や治療法はありますか?
バセドウ病の喉の違和感について
バセドウ病で三年ほど治療中ですが、半年ほど前から甲状腺のあたりに違和感がありツバを飲む際も違和感があります。 病院で超音波検査をしてもらいましたがら特に以前と変化ないと言われました。 寝ているときも無呼吸になってイビキもかているようで、起きると口や喉がカラカラに乾いています。 どうにかしたいのですがいつもの病院で特に問題ないと言われたのでどうしたらいいのか困っています。 違う病院に行くか、またはスリープクリニックのようなとこに行くかどうしたら良いでしょうか?
男性更年期?自律神経失調症?
パートナーの事でご相談です。 9月中頃から、目が疲れる、頭痛、肩こり、疲労感、倦怠感、やる気が出ない、眠気、胸苦しいような感じ、おならがよく出る…などの症状があります。パソコン仕事や、遠方への出張(コロナ感染を考慮し新幹線を使わず長距離車運転で行く事も多い)、等が重なり忙しい状況はあります。 目の疲れに効くという市販薬を飲めば、眼精疲労は少しマシなようですが、夜12時間寝ても昼間も眠気でウトウトしたり、疲れが取れず、やる気が全く出ません。仕事の時間になっても急ぐ気になれず、遅刻するようになってしまいました。 今は何とか、食事をしっかり食べて休める時には休みつつ、これではいかんと鼓舞しながらやっていますが、身体も精神的にもしんどそうです。 8月に第2子が産まれたので、その喜びのストレスや、それと重なって仕事の繁忙のストレス、年齢的にも50代半ばに向かうというところもあります。男性更年期や自律神経失調症、うつ病、などを疑うのですが、何か診断がつき、症状が良くなるような対処法がありますか。もしくは病院受診した方が良いでしょうか。その場合何科が推奨されますか。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「先天異常症候群」を登録すると、新着の情報をお知らせします