ハンチントン病は遺伝性の病気であり、その原因は遺伝です。家族性の病気でもあるため、次世代へ病気が引き継がれることも少なくありません。では、具体的な遺伝のメカニズムはどのようになっているのでしょうか。国際医療福祉大学三田病院神経内科部長の後藤順先生にお話をお聞きしました。
ハンチントン病は遺伝性疾患です。その原因遺伝子は「ハンチントン病とは。遺伝子の異常によっておこる遺伝性の疾患」で紹介した通り、ハンチンチンまたはIT15と言われている第4染色体の中の遺伝子で、その遺伝子の核酸配列の一部が異常に長く繰り返されることでハンチントン病を発症します。
配列の長さが長くなるほど症状が強く、発症が早くなる傾向があり、また下の世代へ行くにしたがって長さが伸びていきます。ですから、親よりも子どものほうが重症化します。男親から病気になる遺伝子を受け継ぐ場合により長くなりやすく、子どもが発症してしまったときは父親からハンチントン病の遺伝子が来ていることがほとんどです。この場合、子どものほうが先に発症し、父親が子どもの後になって発症するというパターンをとります。
前述のとおり、ハンチントン病は遺伝子の異常による遺伝的な病気です。しかし、なぜこのような変化が遺伝子に起きてしまうのかはいまだに解明されていません。「ハンチントン病とは。遺伝子の異常によっておこる遺伝性の疾患」で紹介した通り、ハンチントン病は常染色体優性遺伝形式という遺伝形式を現す遺伝性の疾患です。常染色体優性遺伝による病気を、常染色体優性遺伝病といいます。
Aが優性遺伝子、aが劣性遺伝子だとすると、ハンチントン病を発病する人の遺伝子は、ヘテロ接合(Aa)であることが多いと言われています。両親のどちらかがハンチントン病患者であれば、その子どもは50%の確率でハンチントン病を発症する可能性があります。
ハンチントン病を発病した患者さんは自分の子どもや孫に変異のある遺伝子を伝えることとなります。しかし、同じ家系内で同じハンチントン病にかかった患者さんでも、症状の程度には個人差があるのが特徴で、子ども世代のほうが重症化する傾向があるとも言われています。
上記のように、ハンチントン病は遺伝性の疾患です。遺伝子検査によって確定診断や発症前診断などを行うことができます。
検査はハンチントン遺伝子上で3塩基CAG反復配列が36回以上伸ばされていることによって診断されます。36~39回の場合は不完全浸透といって、一生症状を現さないこともある軽度なものです。ただし、遺伝性のハンチントン病は下の世代に行くほど発症しやすいため、親が発症しなくても子供が発症してしまうということもあります。
一方40回以上の場合を完全浸透と言い、80歳程度までにほぼ100%の確率でハンチントン病を発症します。
確定診断のためのハンチントン病の遺伝子検査は、保健収載されています。また、発症前診断などハンチントン病に関連する様々な遺伝に関する問題がありますが、それらについての専門的な相談・カウンセリングは、大学病院などの専門診療部門を受診されることが勧められます(全国遺伝子医療部門連絡会議のホームページで検索できます)。
記事1:ハンチントン病とは。遺伝子の異常によっておこる遺伝性の疾患
記事2:ハンチントン病の症状。不随意運動や精神症状などが現れ心身ともに蝕まれる
記事3:ハンチントン病の原因とは。遺伝が原因となり、次世代へ病が引き継がれることも
記事4:ハンチントン病の治療と日常生活の注意点
国際医療福祉大学 医学部教授、国際医療福祉大学市川病院 脳神経内科
国際医療福祉大学 医学部教授、国際医療福祉大学市川病院 脳神経内科
日本神経学会 神経内科専門医・指導医日本内科学会 認定内科医日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会 臨床遺伝専門医・指導医
東京大学医学部を卒業後、同大学医学部付属病院神経内科・国立療養所東京病院神経内科・国家公務員共済組合連合会虎の門病院神経内科・マッギール大学留学を経て、国際医療福祉大学三田病院神経内科教授・部長。日本神経学会認定医の資格を所有し、日本神経学会の代議員も務めるなど、神経学分野において圧倒的なスペシャリティを持つ。執筆論文・執筆著書ともに数多く発表されており、神経疾患治療の発展に大きく貢献している。
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