はんちんとんびょう

ハンチントン病

脳

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概要

ハンチントン病は遺伝性に発病し、運動機能や認知機能に影響を及ぼす進行性の神経変性疾患です。かつては症状のひとつである「舞踏運動」により、「ハンチントン舞踏病」と呼ばれていました。しかし、舞踏運動はあくまでも症状のひとつであり臨床像全体をあらわしていないことから、1980年代より「ハンチントン病」という名称で統一されています。

ハンチントン病は、欧米人に多くみられることで知られており、欧米では人口10万人あたり4~8人の有病率であると報告されています。一方、日本においては人口10万人あたり約1人の有病率で、非常にまれな病気です。発症において男女差はありません。好発年齢は35~50歳の中年期ですが、小児期から老齢期にわたり、いずれの年齢でも発症する可能性があります。成人前に発症する例は全体の10%程度で若年型ハンチントン病と呼ばれます。

原因

ハンチントン病は、第4番染色体短腕に位置する「HTT」という遺伝子の異常により引き起こされると考えられています。HTT遺伝子上には3つの塩基配列(CAG)が繰り返し連なっている部分が存在します。通常では26回以下の繰り返しであるところが、ハンチントン病の患者さんでは36回以上、多いときでは120回を超える繰り返し配列が認められると報告されています。

繰り返しが36~39回の場合、不完全浸透といって生涯にわたって症状が認められないこともあります。しかし、ハンチントン病は下の世代であるほど発症しやすいために、親が発症しない場合にも子が発症してしまうことがあります。

繰り返しが40回以上の場合は完全浸透と呼ばれ、ほぼ100パーセントの確率でハンチントン病を発症します。繰り返し数が多く、配列が長くなるほど症状が強く、発症が早くなる傾向があります。

また、下の世代へいくにしたがって繰り返し数が増えるといわれています。これらの知見に加え、父親から疾患遺伝子を受け継ぐ場合に配列が長くなりやすいことがわかっています。遺伝形式としては、常染色体優性遺伝形式をとります。この形式では、両親のどちらかがハンチントン病患者である場合に、50パーセントの確率で子がハンチントン病となる可能性があります。

症状

ハンチントン病に共通する症状としては、不随意運動などの運動機能障害、精神症状、行動異常、認知機能障害が挙げられます。その初期症状は患者さんによってさまざまで、「最近落ち着きがない、行儀が悪くなった、動きが鈍くなった」などといわれることもあります。

外見上気づかれやすく、特徴的な症状として「舞踏運動」が知られています。舞踏運動は自分の意思にかかわらず、身体が動いてしまう不随意運動の一種です。まばたきを頻繁に行う・顔が歪んでしかめ面になる・腕や脚が無意識に踊るように動くなどの症状が現れます。症状が進行すると、これらに加えて、動作の緩慢・筋強剛(固縮)・ジストニアなどの運動症状もみられるようになります。

若年発症例では、パーキソニズム (仮面様顔貌、筋強剛、無動など) の症状がみられることがあります。長期にわたって症状が進行し、歩行が困難となるだけでなく、末期になると嚥下障害も起こります。主な精神症状としては、性格の変化と行動の変化がみられます。またうつ症状も認められるため、注意が必要です。

この他、認知機能障害も認められますが、アルツハイマー病や認知症などと違い、記憶障害は軽度であることがほとんどです。しかし、思考判断が遅くなり、柔軟な思考をすることが難しくなります。注意力や集中力が損なわれてしまうことが多く、物事を進める能力などが徐々になくなっていきます。

検査・診断

ハンチントン病の確定診断には遺伝子検査が行われます。ハンチントン病では、第4番染色体短腕に位置するHTT遺伝子において、3つの塩基配列(CAG)の繰り返し(反復配列)が異常に伸長することが発症原因となることがわかっています。そのため、患者さんの血液からDNAを抽出し、PCR法を用いてHTT遺伝子の反復配列領域を増幅することでCAGの繰り返し数を調べます。健常な方では26回以下ですが、ハンチントン病の方では36回以上の反復配列が認められます。

また、ハンチントン病の患者さんでは、脳の大脳基底核や大脳皮質などの萎縮が認められます。そのため、遺伝子検査のほかにも、病状を確認するためにCTやMRIを用いた脳の画像検査が実施されることもあります。

治療

2017年現在、ハンチントン病の根本的な治療法は見つかっていません。そのため、各症状を和らげるための対症療法を中心として治療が行われます。不随意運動に対してはモノアミン枯渇薬のテトラベナジンが使用されます。

また、精神症状に対しては、オランザピン(ジプレキサ)などの非定型抗精神病薬をはじめ、ベンゾジアゼピン系薬剤、抗てんかん薬が投与されます。このような薬物治療に加えて、運動機能低下や精神症状の改善を目指し、リハビリテーションも取り入れられています。
 

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