坐骨神経痛の治療には様々な方法があります。福井康之先生は、2,000例以上の豊富な脊椎手術経験をお持ちですが、まず手術以外の保存的治療が基本であるとおっしゃいます。今回は坐骨神経痛の保存的治療についてお話をうかがいました。
坐骨神経痛は保存的治療(出血させずに治療する方法)が基本であり、手術は最終的な手段であるという認識を持つことが大事です。一般的には以下の2点に留意します。
安静:強い痛みのあるときは無理に動かさないようにします。
運動:痛みがおさまったら積極的に運動を行い、ストレッチで固くなった筋肉をほぐします。ただし、逆効果にならないよう医師の指導のもとで行なうようにします。
薬物治療では消炎鎮痛剤を中心に用い、必要に応じて筋弛緩剤や血管拡張剤を処方します。以下の薬は腰痛の薬物治療で用いられる代表的な3剤とも呼ばれます。
炎症を抑え、痛みをやわらげます。内服薬の他、湿布もよく使われます。
神経をゆるめ、筋肉の緊張をやわらげます。筋肉が緊張によって固くこわばり、痛みを引き起こしている状態を改善します。
血流改善剤ともいいます。血行を良くするために用います。
また、坐骨神経痛の治療では精神状態の把握と管理も重要です。ストレスなどで痛みに過敏に反応してしまったり、気分的に落ち込み気味で痛みがより強くなる場合には抗うつ薬の投与が効果的な場合があります。
骨盤にベルトをかけ、足先の方向に引っ張ります。狭くなった腰椎の間隔を拡げるために行いますが、腰まわりの緊張をゆるめる効果もあります。
患部を温めて血行を良くすることで痛みをやわらげます。マイクロ波などを使用する治療もあります。炎症があるときには行わないようにします。
コルセットや腰痛ベルト、サポーターの装用によって腰まわりを固定することで、腰椎が安定します。薬物治療や理学療法を併用することでより効果を高めます。
ブロック療法とは、神経や神経のまわりに局所麻酔剤を注射して痛みを取り除く方法です。痛みの伝わる経路をブロックすることを意味しています。
坐骨神経痛の治療で用いられるブロック療法には、硬膜外ブロックと神経根ブロックの2種類の方法があります。硬膜外ブロックでは、脊髄を覆っている硬膜の外側にある硬膜外腔に麻酔剤を注射し、神経の炎症を抑えます。一方、神経根ブロックには治療だけでなく、診断的側面もあります。脊椎の何番目と何番目のあいだの神経が一番痛みを発しているのか、その原因となっている神経根(責任神経根といいます)を特定し、局所麻酔剤とステロイド剤を直接注射します。
ブロック療法は鎮痛作用が高く効果的な治療ですが、効き方には個人差があり、長期間効く場合もあれば、短期間で効果が切れる場合もあります。
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