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公開日 : 2017 年 09 月 20 日
更新日 : 2017 年 09 月 20 日

未来の日本の病院経営のあり方とは?―恵寿総合病院 神野理事長と考える

人口減少や少子高齢化に伴い、日本の医療は転換期を迎えています。恵寿総合病院 理事長の神野正博先生は、日本の病院経営はこのままではいけないと警鐘を鳴らします。神野先生は恵寿総合病院において、革新的な病院経営を実践してきました。今回は神野先生のご経験を交えながら、未来の日本の病院経営のあり方について、弊社代表 木畑宏一がお話をうかがいました。

日本の医療の課題と病院経営の課題

人口減少に伴い、医師・看護師だけでなく患者も不足している

木畑:神野先生が理事長を務められる恵寿総合病院は能登地域の一部である石川県七尾市にあり、能登地域も人口減少や少子高齢化に直面されているかと思います。これらの現状から、日本の医療の課題、病院経営の課題についてどうお考えですか。

神野:木畑さんがおっしゃられたように東京などの一部の地域以外では、どこも人口減少、少子高齢化に直面しています。医師・看護師不足は以前からいわれてきたことですが、実は地域では病床数に対し患者さんも不足しています。昔は冗談まじりで「医師・看護師不足だし患者も不足している」といっていましたが、いよいよ冗談ではなくなってきました。

私が病院を経営する七尾市でも、人口減少に伴って地域全体の患者数が減少しています。しかし、当院の患者数は減っていません。これはつまり、近隣の他の病院の患者だった方が当院へやってきているということです。少々乱暴な言い方になってしまいますが、特に人口減少が続く地域では、病院同士で患者さんの奪い合いが起こっています。

また、患者さんの意識変化も見逃せません。一昔前までは「できる限り延命を行い、最後は病院で看取られる」ことが普通であり、患者さんやご家族が望むことでした。しかし近年では特に若年の世代において、死への価値観、看取りに対する価値観が変わりつつあります。自分らしく生き、自分らしい最期を迎えるために自宅での看取りが増え、近親者の死に立ち会う機会が増えていることがその表れの一端であるといえるでしょう。

このように目まぐるしく時代が変化するなかで、果たして医療やそれを提供する病院は従来のやり方でよいのだろうか、と疑問に感じます。

木畑:確かにおっしゃるとおりです。ある地域において、人口構造がどのように変化していくのか、今後どんな疾患が増えていくのかといったところは予測可能です。ですから、5年後、10年後といった短期的な地域医療の未来は予想できます。そこに向かって「このままではいけない」と危機感を覚えている病院や病院経営者はいると思いますが、実際に動けているところは少ないように感じます。それはなぜでしょうか。

神野:私が医療界に変化がなかなか起きない理由のひとつとして考えている点が、医療界には競争原理がはたらきにくいという点だと思います。他の業界が、企業ごとにさまざまな仕組みを用いて経営を行っている点に対し、病院経営においては民間も公立も同じ仕組みで経営をしているのです。

「患者数✕単価」で売上を計算する従来の仕組みは、人口が多く、患者数も多い時代には十分に成り立つシステムでした。患者さんさえ来れば経営が成り立っていたのです。しかし、今は人口減少によって患者数が減っていますから、単に患者さんが来たからといって病院経営が成り立たなくなってきたのです。

ですから、どこも同じように病院経営を行うのではなく、もっと創意工夫をして、会社経営に近いことを考えながら病院経営を実施していく必要があります。

神野理事長が実践した病院の経営改革の第一歩

神野先生

現場の声を聞くため、500名のスタッフと1年かけてご飯を食べた

木畑:多くの病院が変革の必要性を感じながらも行動できていないなか、神野先生は5年〜10年後よりさらに先を見据えて病院経営をなさっているように感じます。恵寿総合病院に『けいじゅヘルスケアシステム』といった革新的なシステムを導入するなど、医療界に今までなかった新しいことを実践されています。どうして神野先生はそのように新しいことに果敢に挑戦できたのでしょうか。

神野:実は最初は危機感というよりも、単に負けず嫌いからでした。私は3代目として恵寿総合病院の理事長になりました。しかし理事長になった当時、病院のスタッフはほとんどが年上でしたが「自分がリーダーとしてこの病院を引っ張っていかなくては」という思いが強くありました。勝手に、若いというだけで負い目を感じていましたから、患者さんや地域住民、そしてスタッフにベネフィットがあることを行って「すごいな、いい人だな」と思われたかったのです。

しかし、大きなことをやるには人の力が必要です。そのためにはまず、スタッフ全員に私を信用してもらう必要がありました。

木畑:そのために、理事長就任後まず何をされたのでしょうか。

神野:泥くさいことですが、まずはスタッフ全員と昼食の時間を設けることにしました。当時、スタッフは500名ほどいましたから、もちろん一度では全員と昼食の機会を取れません。ですから1回あたり10名のスタッフと昼食をともにし、ほぼ1年かけてスタッフ全員と話をする機会を設けました。そこでスタッフが抱える悩みごとや不満・不安をすべて聞きました。

現場の声は、経営改革のヒントがたくさん詰まっています。スタッフの声を集めて、ひとつずつ解決するうちに、病院の雰囲気もとてもよくなりましたし、スタッフも私に協力してくれるようになりました。その結果、「けいじゅヘルスケアシステム」のような、大きなことを実践できたのだと思います。

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